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第6話 黄金の眼は、静かにこちらを見ていた

 闇の最奥。


 そこに――

 黄金の眼があった。


 岩山のような巨躯。

 黒い甲殻。

 息を吐くだけで、空気が震える。


 見た瞬間に分かる。


 今までとは、

 格が違う。



【ボス来た】

【圧えぐい】

【これ勝てる?】



 胸の奥が、静かに沈んでいく。


 怖いはずなのに。

 恐怖の輪郭がぼやけていく。


 感情が、遠い。


 ――奥へ来すぎた。


 理由は分からないのに、

 それだけは理解できた。



「……レイン?」


 セリスの声が、少し遠い。


 おかしい。

 ちゃんと聞こえているのに、

 現実感が薄い。



 黄金の巨体が動く。


 一瞬だった。


 地面が爆ぜ、

 衝撃が視界を跳ね飛ばす。


 気づけば俺は、

 後方へ叩き出されていた。



【速すぎだろ】

【今の何!?】

【レイン飛んだ】



 息が浅い。


 痛みは、ない。

 代わりに――


 静かすぎる。


 このまま沈めば、

 何も感じなくて済む。


 そんな、危険な安堵。



「レイン!!」


 強く呼ばれる。


 腕を掴まれた瞬間、

 温かさが戻った。


 胸の沈みが、

 少しだけ浅くなる。



「……セリス」


 名前を呼ぶと、

 世界の輪郭が戻る。



 セリスが前に出る。


「下がって」


 剣を抜く動きに、

 一切の迷いはない。


 だが分かる。


 この相手は――

 セリス一人では勝てない。



【共闘しろ】

【レイン能力使え】

【ここ神シーン】



 胸の奥で、

 別の感覚が目を覚ます。


 壁。

 床。

 空間。


 すべてが分かる。


 ここは――

 俺の領域だ。



「……大丈夫だ」


 小さく呟く。


「ここでは、

 俺が決める」



 手を上げる。


 鼓動が、

 一拍遅れる。


 嫌な予感。


 それでも――


「――止まれ」



 空間が凍る。


 黄金の巨体が、

 完全に静止した。



【止まった!?】

【どうなってる】

【チートすぎる】



 だが次の瞬間。


 胸の奥が、

 ずるりと沈んだ。


 音が遠い。

 色が薄い。

 感情が消える。


 ――戻れない。


 そんな直感。



「レイン!」


 セリスの声。


 同時に、

 胸元へ触れられる。



 一気に戻った。


 呼吸。

 鼓動。

 感情。


 全部が現実へ引き戻される。



【触れた瞬間戻る】

【セリス何者だよ】

【ここ重要伏線】



「……分かった」


 俺は息を整える。


「俺が止める。

 セリスは――俺を戻してくれ」


 説明できないのに、

 それが正解だと分かる。



 セリスは一瞬だけ驚き、

 すぐに頷いた。


「……了解」



 黄金の巨体が、

 再び動き出す。


 今度は速い。



「――膝を折れ」



 見えない圧が落ちる。


 巨体が揺れ、

 片膝をついた。



【効いてる!】

【でもまだ立つ】

【ボス硬すぎ】



 胸の奥が、また沈みかける。


 だが次の瞬間。


 肩に触れる、

 温かい手。


 沈みが止まる。



「……いける」


 静かに確信する。



「――終わりだ。沈め」



 床が歪む。

 空間が重くなる。


 黄金の巨体が、

 ゆっくり沈み――


 完全に、動かなくなった。



【勝った……】

【共闘アツすぎ】

【神回更新】



 息を吐く。


 体は重い。

 けれど、立っていられる。



 セリスが静かに言う。


「……あなた、本当に」


 一拍。


「世界を変えるのね」



 その意味は、

 まだ分からない。



 黄金の残骸が、

 砂のように崩れていく。


 ――終わった。


 そう理解した直後。



 違和感。



 静かすぎる。


 勝利の空気じゃない。


 まるで――

 次を待っている沈黙。



 セリスが顔を上げる。


「……外が騒がしい」


「外?」



 耳を澄ます。


 規則的な足音。

 複数。

 しかも――


 強い。



【誰か来る】

【援軍か?】

【展開はやい】



 胸の奥が、

 別の意味で重くなる。


 勝利の余韻を、

 現実が踏みつぶしに来る感覚。



 セリスが静かに言った。


「……王都が動いたわね」



 その瞬間。


 ダンジョン入口の光が――

 揺れた。



(第6話・完)

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

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