表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

47/50

第47話 砂海を裂く者と、残された“同じ紋様”

 ――砂の国、深層遺構。


 静寂が、重く沈んでいた。


 先ほどまで響いていた戦闘音は消え、

 残っているのは、崩れた石と、

 砂に埋もれた魔物の残骸だけ。



 槍の男は、倒れていた。


 白銀の騎士によって砕かれた鎧。

 蒼光を失った長槍。

 それでもなお、地面を掴もうとする指。



「……なぜだ……」


 かすれた声。


「この力は……

 あの方に与えられた……完璧な……」



 最後まで、言葉にならない。


 意識が途切れ、

 男の手が静かに落ちた。



 沈黙。



 レインは、何も言わずに立っていた。


 勝利の実感はない。

 ただ――


 確信だけが残っている。



(これは……ただの支配じゃない)


(誰かが、意図して力を配っている)



 そのときだった。



 ――ズン……



 深層のさらに奥。

 砂の下で、

 巨大な何かが脈打った。



 空気が変わる。


 冷たい。

 重い。

 まるで――


 ダンジョンそのものが呼吸しているような感覚。



 崩れた石柱の陰。

 鎖に繋がれていた囚人たちが、顔を上げた。


 その瞳に浮かぶのは――

 理解ではなく、絶望。


「……来た……」


 誰かが、掠れた声で呟く。


「終わりだ……

 あれが出たら……もう……」


 震える少女が、必死に首を振る。


「だめ……逃げて……」


 その視線は、レインへ向けられていた。


「あなたでも……無理……」


「ここにいたら……

 みんな……死ぬ……」


 ――死を覚悟した声だった。



視聴者:5,284

【今の音なに】

【まだ終わってない?】

【ボス残ってる系?】



 レインは静かに目を細める。


「……来るか」



 次の瞬間。



 砂海が――割れた。



 地面ではない。

 空間ごと裂けたような歪み。


 そこから現れたのは、



 砂の竜。



 都市を呑める巨体。

 鱗ではなく、流動する砂の装甲。

 眼光は、赤ではない。


 ――無機質な白。



視聴者:5,361

【デカすぎて草】

【これ無理ゲー】

【さっきのより格上】



 竜が咆哮する。


 音ではない。

 圧力。


 遺構の壁が砕け、

 天井が崩れ、

 世界そのものが沈み込む。



 だが。



 レインは、動かない。



 静かに――

 指を下ろした。



 紋様が広がる。


 ひとつ。

 ふたつ。

 幾重にも重なる円環。


 既存の遺構を侵食し、

 構造そのものを書き替えていく。



【来た来た来た】

【主人公ターン】

【ここから本番】



 床が反転する。

 壁が再構築される。

 重力の向きすら変わる。


 深層遺構は――


 一瞬で、レインの生成ダンジョンへ組み替えられた。



 竜が突進する。


 その進路に、



 奈落が開いた。



 落下。


 数百メートル。


 だが竜は、空中を泳ぐように浮上する。



【飛ぶの反則】

【どうすんのこれ】

【詰みでは?】



 次の瞬間。



 奈落の壁面すべてが――

 牙に変わった。



 生成された無数の捕食獣。

 同時に噛みつく。


 砂装甲が砕け、

 巨体が止まる。



 そこへ。



 白銀の騎士、落下。



 重力加速。

 極限の一閃。



 ――断裂。



 竜の首が、

 静かにずれた。



 一拍遅れて。



 崩壊。



 砂の巨体は形を保てず、

 渦を巻きながら奈落へ沈む。



視聴者ה者:5,742

【勝ったあああ】

【爽快すぎる】

【今の何回見ても気持ちいい】



 静寂が戻る。



 完全な勝利。


 ――のはずだった。



 レインの視線は、

 奈落の底ではなく、


 竜が現れた裂け目へ向いている。



「……違うな」



 近づく。


 砂の奥、

 空間の歪みの中心。



 そこにあったのは――



 紋様。



 見覚えがある。

 忘れるはずがない。


 それは、



 自分の生成ダンジョンと、同系統の構造。



 だが。


 決定的に違う。



 歪んでいる。

 侵食的。

 まるで――


 奪うための生成。



視聴者:5,913

【なんか模様ある】

【ダンジョンの核?】

【嫌な予感しかしない】



 レインは触れない。


 ただ、静かに見つめる。



(……いるな)


(俺と同じ力を持つ誰かが)


(しかも――敵側に)



 砂が崩れ、

 紋様はゆっくりと消えていく。


 証拠を残さないように。


 まるで最初から、

 観測されないことを前提に作られていたかのように。



 レインは小さく息を吐いた。



「……面白くなってきた」



視聴者:6,084

【その台詞つよ】

【絶対ヤバい敵いる】

【続きはよ】



 崩れた遺構の上。


 レインは振り返らず、歩き出す。



 砂の国の夜は、まだ深い。


 だが――


 物語は確実に、

 次の段階へ進み始めていた。



(第47話・完)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ