表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

37/50

第37話 王国最強と、名を持たない挑戦者

 ――闘技場。


 ざわめきが、ゆっくりと形を変えていく。


 先ほどの準決勝。

 セリスとリュシアの激突は、

 まだ観客の胸に焼き付いていた。


 だが――


 次に呼ばれる名は、

 その余韻すら塗り替える。



視聴者:3,882,441


【本命きた】

【ここが頂上】

【心臓やばい】



「準決勝第二試合――

 アルヴェルト・グランツ

 対

 レイ・クロード!!」



 空気が、沈む。


 歓声ではない。

 熱狂でもない。


 ――畏怖。



視聴者:5,441,882


【王国最強】

【負ける未来見えん】

【でも夢見たい】



 アルヴェルトが歩く。


 ただ歩くだけで、

 闘技場の中心が固定される。


 重力が、意思を持ったように。


 ――強い。


 それだけで、すべてが分かる。



 開始の旗。



 ――消失。



 次に現れたのは、

 空間を断つ剣閃。


 軌道ではない。

 速度でもない。


 存在そのものを削る一撃。



視聴者:9,884,220


【見えねぇ】

【今の何】

【終わったろ】



 ――金属音。



 白銀の騎士。


 純白の甲冑が、

 その一撃を真正面から受け止めていた。


 火花は散らない。

 衝撃も漏れない。


 すべてを内部で殺している。



視聴者:12,004,551


【止めた!?】

【硬すぎ】

【バケモン同士】



 アルヴェルトが踏み込む。


 剣が、二度、三度――

 加速ではなく“増殖”する。


 一振りが、同時に複数の軌道を持つ。


 白銀の肩口。

 首。

 心臓。


 すべてを同時に狙う

 回避不能の連撃。



 白銀が動く。


 最小動作。

 だが完璧。


 剣圧を受け流し、

 軌道を半歩ずつ殺し、

 最後の一閃だけを正面で受ける。



 ――衝撃。



 石畳が、円形に沈む。


 白銀の足元が、

 初めて半寸だけ滑った。



視聴者:15,882,770


【押した】

【アルヴェルト強すぎ】

【でも崩れない】



 後方。


 黒衣の魔術師が、

 静かに杖を傾ける。



 詠唱はない。


 ただ、空間に一線。



 その瞬間――

 闘技場全域の魔力流動が反転した。


 重力が遅れ、

 風が逆流し、

 時間の密度が歪む。



視聴者:21,882,110


【また意味不明】

【世界おかしい】

【規模やば】



 黒衣の魔術師が歪めた空間。

 流れを失った魔力。

 静止しかけた世界。


 ――だが。


 アルヴェルトは、止まらない。


 剣を、ただ構える。


 技もない。

 光もない。

 魔力すら、感じない。


 あるのは――

 極限まで研ぎ澄まされた一振りだけ。



 踏み込み。


 それだけで、空気が裂ける。


 剣が通った“線”に沿って、

 歪められていた空間そのものが――


 遅れて整列した。



 固定したのではない。

 打ち消したのでもない。


 ただ、


斬った結果、そうなっただけ。



黒衣の魔術師の瞳が、初めて揺れる。



【は?】

【今なにした】

【魔法じゃないの怖い】

【純剣で世界戻した?】



アルヴェルトが静かに言う。


「――術ではない。」


「届く場所まで、振っただけだ。」



視聴者:25,004,882


【打ち消した!?】

【意味わからん】

【三つ巴やば】



 激突。


 白銀の剣。

 アルヴェルトの剣。


 純粋な剣技だけの衝突。



 ――無音。



 遅れて、

 闘技場の外壁が崩れた。



視聴者:31,884,110


【衝撃遅れて来た】

【映画超えた】

【神回】



 互角。


 完全な、互角。



 だが次の瞬間。


 アルヴェルトの回避不能の軌道。



 そこで――


 空間が、わずかにずれた。



 剣先が、

 存在していた座標を外れる。



【よけた!?】

【紙一重】



 アルヴェルトの瞳が揺れる。



「……やはりな」



 確信。


 だが誰も気づかない。



 最後の衝突。


 剣と魔術と召喚が、

 同時に爆ぜる。



 二人の体が、

 外周へ弾き飛ぶ。



 煙。


 沈黙。



 リングに立っているのは――

 レイ。



 アルヴェルトは、

 わずかに線の外。



 リングアウト。



 審判の旗が上がる。



「勝者――

 レイ・クロード!!」



視聴者:45,004,882


【うわあああ】

【王国最強負けた】

【でも紙一重】



 歓声が爆発する。



 その中で。



 アルヴェルトだけが、

 静かにレイを見ていた。



 そして――



 一瞬だけ、視線が交わる。



「……隠す理由が、あるのだな。」



 誰にも聞こえない声。


 ただ一人へ向けた言葉。



 レイは、何も答えない。



 だが、アルヴェルトだけが、

 そこへ触れていた。



視聴者:48,882,441


【決勝きた】

【誰なんだこいつ】

【心臓やばい】



 こうして――


 最後の舞台が、

 静かに整った。



 決勝。



 セリス

 対

 レイ。



 まだ誰も知らない。



 この先で、

 世界が思い出すことを。



(第37話・完)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ