第17話 強さの代わりに、失うもの
――静寂だった。
巨大な影が消えたあとも、
遺跡の空気は張り詰めたまま。
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【余韻えぐい】
【情報量多すぎ】
【まだ手震えてる】
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背後で、
小さな音がした。
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振り向く。
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リュシアが、
その場に立ち尽くしていた。
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蒼い瞳が、
わずかに揺れている。
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「……ありえない」
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かすれた声。
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「空間固定も、
物質生成も……」
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首席の知識が、
必死に答えを探している。
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「そんな魔法……
存在しない」
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当然だった。
これは魔法じゃない。
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「……魔法じゃない」
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短く答える。
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それだけで。
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リュシアの呼吸が、
完全に止まった。
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【確信入った】
【次元が違う】
【天才の常識崩壊】
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一歩、近づく。
彼女は動けない。
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恐怖じゃない。
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常識が壊れる音を、
初めて聞いているだけだ。
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「……あなた、
本当に人間なの?」
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静かな問い。
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少しだけ、考える。
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だが――
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答えは出なかった。
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「……さあな」
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その瞬間。
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胸の奥で、
ずきりと痛みが走った。
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【今の嫌すぎる】
【フラグの音した】
【代償くる?】
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視界が、
ほんの一瞬だけ揺れる。
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色が、薄くなる。
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感覚が、
わずかに遠い。
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――すぐ戻る。
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だが。
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今のは初めてだった。
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【無双の代償説】
【これ軽くないやつ】
【怖さの質変わった】
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足元を見る。
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土の色が、
ほんの少しだけ――
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遺跡の石に似ていた。
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ありえない変化。
だが確かに、
何かが侵食している。
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気づかないふりをする。
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リュシアには、
まだ見せる必要はない。
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「……行くぞ」
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歩き出す。
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背後で、
震える声が追いかける。
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「待って……!」
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止まる。
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振り向く。
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リュシアは、
まだ理解できない顔のまま。
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それでも――
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「……私も、行く」
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【同行ルート確定】
【ヒロイン追加きた】
【パーティ始動】
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少しだけ目を細める。
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「危ないぞ」
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「知ってる」
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迷いはない。
恐怖もない。
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あるのは――
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答えを知りたい目だけ。
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小さく息を吐く。
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「……好きにしろ」
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それだけ告げて、
前を見る。
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森の奥。
さらに深い境界。
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だが。
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見えない空の向こうで――
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“何か”が、
少しだけ近づいていた。
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【距離詰めてきてる】
【上位存在ログイン中】
【スケールまた上がる】
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胸の奥の痛みが、
まだ微かに残っている。
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それでも。
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歩みは止めない。
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強さを得る代わりに、
何かを失うとしても。
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もう――
戻るつもりはなかった。
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(第17話・完)




