表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/53

第17話 強さの代わりに、失うもの

 ――静寂だった。


 巨大な影が消えたあとも、

 遺跡の空気は張り詰めたまま。



視聴者:14,118,903


【余韻えぐい】

【情報量多すぎ】

【まだ手震えてる】



 背後で、

 小さな音がした。



 振り向く。



 リュシアが、

 その場に立ち尽くしていた。



 蒼い瞳が、

 わずかに揺れている。



「……ありえない」



 かすれた声。



「空間固定も、

 物質生成も……」



 首席の知識が、

 必死に答えを探している。



「そんな魔法……

 存在しない」



 当然だった。


 これは魔法じゃない。



「……魔法じゃない」



 短く答える。



 それだけで。



 リュシアの呼吸が、

 完全に止まった。



【確信入った】

【次元が違う】

【天才の常識崩壊】



 一歩、近づく。


 彼女は動けない。



 恐怖じゃない。



 常識が壊れる音を、

 初めて聞いているだけだ。



「……あなた、

 本当に人間なの?」



 静かな問い。



 少しだけ、考える。



 だが――



 答えは出なかった。



「……さあな」



 その瞬間。



 胸の奥で、

 ずきりと痛みが走った。



【今の嫌すぎる】

【フラグの音した】

【代償くる?】



 視界が、

 ほんの一瞬だけ揺れる。



 色が、薄くなる。



 感覚が、

 わずかに遠い。



 ――すぐ戻る。



 だが。



 今のは初めてだった。



視聴者:14,902,447


【無双の代償説】

【これ軽くないやつ】

【怖さの質変わった】



 足元を見る。



 土の色が、

 ほんの少しだけ――



 遺跡の石に似ていた。



 ありえない変化。


 だが確かに、

 何かが侵食している。



 気づかないふりをする。



 リュシアには、

 まだ見せる必要はない。



「……行くぞ」



 歩き出す。



 背後で、

 震える声が追いかける。



「待って……!」



 止まる。



 振り向く。



 リュシアは、

 まだ理解できない顔のまま。



 それでも――



「……私も、行く」



【同行ルート確定】

【ヒロイン追加きた】

【パーティ始動】



 少しだけ目を細める。



「危ないぞ」



「知ってる」



 迷いはない。

 恐怖もない。



 あるのは――



 答えを知りたい目だけ。



 小さく息を吐く。



「……好きにしろ」



 それだけ告げて、

 前を見る。



 森の奥。

 さらに深い境界。



 だが。



 見えない空の向こうで――



 “何か”が、

 少しだけ近づいていた。



【距離詰めてきてる】

【上位存在ログイン中】

【スケールまた上がる】



 胸の奥の痛みが、

 まだ微かに残っている。



 それでも。



 歩みは止めない。



 強さを得る代わりに、

 何かを失うとしても。



 もう――

 戻るつもりはなかった。



(第17話・完)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ