表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

105/105

第105話 蒼き星


 衝突。



 蒼。


 剣。


 魔術。


 観測。



 そして。


 ついに。



 最後の、


 一撃。



 アルヴェルトの剣。


 

 セリスの斬撃。



 リュシアの光。



 ミナの炎。



 レインの蒼。



 すべてが、


 上位観測へと収束する。



 大爆発。



 観測上位が、


 崩れる。



 観測者達の影が、


 消える。



 静寂。



 戦いが、


 終わった。



 そして――



 静かな蒼。



 原脈の流れは、


 安定し始めていた。



 レインは、


 長く息を吐いた。



「……分かった」



 黒が、


 静かに言う。



「決断」



 レインが、


 微かに笑う。



「守るって決めたからな」



 一拍。



「俺、人間やめるわ」



 原脈の眩い光が、


 ゆっくりと広がる。



 レインの体が、


 光へ溶けていく。



 輪郭が、


 ゆっくりと消える。



 そして。



 星の深層に、


 一つの蒼い核が灯った。



 それは、


 排出の中心。



 星の呼吸を整える、


 新しい器官。



 蒼の守護者。



 。



 それから。



 世界は、


 静かになった。



 ダンジョンの暴走は止まり、


 大地の震えも消えた。



 人々は、


 何が起きたのか知らない。



 ただ。



 世界が、


 救われたことだけを知る。


















 十年後。



 人の地図に、載らない場所があった。



 山を越え、


 谷を越え、


 深い霧の森を抜けた先。



 誰も住まない、


 秘境。



 その大地の中央に、


 一つの塔が立っていた。



 蒼い塔。



 天を貫くように、


 静かに、


 ただ静かに、


 そびえ立っている。



 外壁には、


 無数の蒼い紋様が流れている。


 脈打つように。


 呼吸するように。



 時折、


 塔の上空へ蒼い光が昇る。


 細く、


 長く、


 空へ溶けていく。



 それは、


 この星が吐き出した古い力。


 そして――


 彼が、今も流し続けている証。



 塔の足元に、


 四つの影が立っていた。



 セリス。


 リュシア。


 ミナ。


 アルヴェルト。



 十年。



 長いようで、


 あまりにも短い時間。



 セリスは、


 塔を見上げたまま、


 しばらく何も言わなかった。



 風が吹く。


 長い髪が揺れる。



 ようやく、


 彼女は、小さく息を吐いた。



「……やっぱり、来ると分かるわね」



 リュシアが静かに問う。



「何が?」



 セリスは、


 少しだけ笑った。


 でも、その目は濡れていた。



「ちゃんと、ここにいるってこと」



 ミナが、唇を噛む。



 十年経っても、


 その言葉だけは慣れない。



「ずるいよね」



 ミナが言う。



「勝手にいなくなって」


「勝手に世界なんか守って」


「なのに、文句を言いに来たら……」



 塔を見上げる。



「……まだ、守ってるんだもん」



 声が、


 少しだけ震えた。



 リュシアは、


 杖を胸の前で軽く握る。



「私も、最初は認めたくなかった」



「間違いだと思おうとしてた」



 一拍。



「でも違った」



 蒼い塔の紋様が、


 淡く明滅する。



「この流れ方……」


「この整え方……」


「これは、あの人のやり方そのもの」



 アルヴェルトは、


 少し離れた場所で立っていた。


 腕を組み、


 塔の頂を見ている。



「十年」



 低い声。



「王も変わった」


「国も変わった」


「地図も変わった」



 一拍。



「だが、世界は崩れなかった」



 それが答えだ、


 と言うように。



 セリスが、目を伏せる。



「……一度だけでよかったの」



 風に消えそうな声。



「一度だけでよかったから」


「会いたかった」



 その言葉に、


 ミナが顔を上げる。


 何か言い返そうとして――


 やめた。



 言えない。



 自分も同じだったから。



 リュシアも、


 静かに目を閉じた。



「“きっとまだどこかにいる”って、ずっと言ってきたけど」



 塔を見上げる。



「……どこか、じゃなかったのね」



「最初から、ずっとここにいた」



 蒼い光が、


 塔の側面を伝い、上へ昇る。



 まるで、


 返事みたいに。



 ミナが、拳を握る。


 けれど、昔みたいな強がりは出なかった。



「ねえ、レイン」



 塔に向かって言う。



「そっちは、寂しくない?」


「辛くない?」


「ちゃんと、笑えてる?」



 返事はない。



 けれど。



 塔を流れる蒼が、


 ほんの少しだけ、


 あたたかく光った気がした。



 セリスが、


 目を細める。



「……今の」



 リュシアが、


 小さく微笑んだ。



「聞いてる」



 アルヴェルトは、


 静かに言った。



「彼はもう、人ではない」



 一拍。



「だが」



 珍しく、


 そこで言葉を切る。



「人であったからこそ」


「これを選んだ」



 風が吹く。



 森が揺れる。



 遠くの湖面が、


 蒼くきらめく。



 世界は、美しい。



 十年前より、


 ずっと静かで、


 ずっと穏やかで、


 ずっと生きやすい。



 それは、


 彼が今もどこかで、


 流し続けているからだ。



 誰にも知られず。


 誰にも褒められず。


 ただ、


 守るためだけに。



 セリスが、


 そっと塔へ手を伸ばす。


 触れられない距離で、


 止める。



「……ありがとう」



 リュシアも、


 小さく続ける。



「本当に」



 ミナは、


 涙をこらえきれなかった。



「ばか」



 笑いながら、


 泣いた。



「ほんとに、ばか」



 アルヴェルトは、


 ただ一度だけ、


 深く頭を垂れた。



 剣士としてではない。


 王の臣下としてでもない。



 一人の男として。


 守られた側として。



 蒼い塔は、


 変わらずそこにある。



 高く。


 静かに。


 空へ届くほど高く。



 その光は、


 今も流れている。



 まるで、


 星が呼吸するように。



 人々の知らない場所で。



 この世界を、


 今日も守りながら。



(完)

読者の皆様、読んでいただき有難うございました!

この作品が少しでも皆様の生活の彩りになれたなら嬉しいです。

また、いつか、作品を通してお会いしましょう。

本当に有難うございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ