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師匠

 私は柳雪、平凡な剣士…ではなく、この世界の主人公の師匠です。


「師匠!本日もよろしくお願いします!」

「あー、うん。てか、もう教えることないんだけどね〜」

「そうおっしゃらずに!僕はまだ師匠に一撃も当てたことがないんですから!」


この元気な子が私の弟子にしてこの世界の主人公である阿野聡太。


 この世界はとある物語の舞台らしい。それを知ったのは数年前、私がまだ我流の剣術、柳流剣術を作る前だった。とある男と出会った。フードを被っていて、謎めいた男だった。その男曰くこの世界は物語の舞台で、私は主人公の師匠という存在になるらしい。他にも色々言っていたが私には分かる話ではなかった。そこで一冊の本を渡された。その本にはこの先全ての未来が書かれているらしい。その本を読めば世界を征服するのも夢ではないとのこと。ただし本の中身は主人公中心で描かれていて、登場しない人物や場所については書かれていない。男は私にその本を渡していなくなった。いまだに何者だったのかわからない。信憑性のかけらもない話だが、どこか納得してしまうような雰囲気があった。


 私はいまだにその話を何処かで信用してしまっている。そしてそれをさらに強固なものにしたのがこの子だ。この子は1年半前に弟子にした。名前を聞いた時は驚いた。男の言った主人公の名前と同じだったからだ。そこから私はこの子を鍛え続けた。主人公だから、師匠という役割だからなどは無しにして、この子の才能を見てみたくなったから。この子には才能があった。それは100人に1人や1000人に1人なんて生易しいものではない。それこそ類を見ない、類稀な、そんな言葉が似合うほどの才能だった。それが主人公だからかはわからない。でも私はそれの頂上を見てみたくなった。


 問題だったのは私の剣術、柳流剣術にあった。この剣術は私が私のために私が一番動きやすく、威力を出せる型で作っていた。故に例えどれほどの才能があろうと私以上に使いこなすことはできなかった。この子も同様だった。既に私の剣術を使うには限界が来ていた。


 悩みに悩んだ末、この子には卒業させることにした。


「ということで、卒業です」

「え!だからなんでですかって!」

「そもそも柳流剣術は人に教えるようなものじゃないんだよ。君の才能が凄かったから弟子にしたけど、もうほとんど基礎は出来てるし、これ以上教えられないよ。」

「じゃあ僕はどうしたらいいんですか!」

「…そうだなぁ」


もしあの男の言う通りならここがこの子にとっての分岐点ととなるだろう。


「王都が強者を集めているらしい。なんでも魔王討伐に向けて兵力拡大とかでね。そこに行ってみたらいい。無理強いはしない。死の危険もある。そもそも君はもう自由なんだ。縛られなくていい」

「…でも僕は師匠の弟子にはならないんですよね」

「…」


涙ぐんだ目で見てくる。だがもう私も引けない。


「君は私の弟子だ。いつまでもね。だからこれは修行だ。広い世界を見てきなさい!そして世界の凄さを知りなさい。私が全てじゃない!世界には私をも超える存在がいる!それを知り、術を磨き、剣を鍛え、友を手にし、私を超えなさい。」

「…はい!わかりました!」


私でも小っ恥ずかしいことをしたと思う。でもこうでもしないと納得しないだろう。この子に旅立たせるためにはこうするしかなかった。


数日後、彼は旅立って行った。剣を携え、私のあげたお守りを手に

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