静寂のプロセス
日常の中で、ふと音が途切れる瞬間がある。
ざわつきの中心から半歩だけ外れると、
世界の輪郭が少しだけ変わって見える。
陽子にとっての“静けさ”は、
逃げ場ではなく、呼吸の仕方のひとつ。
そんな一瞬の話。
1/11 12:37
棚のエナジードリンクを手に取り、最後尾へ。
列がゆっくりと進む。
イヤホンにはトランペットの音。
前の客が、指先で自分の腕を叩いていた。
そのリズムが、空気に微細なノイズを走らせる。
店員の手元がわずかにぶれる。
スキャナーの青い光が不規則に点滅し、
読み取りが一瞬だけ遅れた。
列の流れが細くなる。
陽子は列から一歩だけ離れた。
中心のざわつきから外れるように。
無人レジの光が、一定のリズムで点滅している。
静かなレーンへ流れた
店を出る頃には、
イヤホンの音はピアノに変わっていた。
人混みの中にいても、
自分だけ別のテンポで動いているように感じることがある。
陽子はその感覚を、
拒むのでもなく、受け入れるのでもなく、
ただ“観察”している。
静寂は、彼女にとってプロセスであり、
世界との距離を測るための小さな指標。
今回の短い場面も、
そんな陽子の呼吸のひとつ。




