睦姫①愛美との対峙
「約束通り、アイミは私が倒す!
オメー等はオメー等がやるべきことをやれ!
特に尊人っ!一番美味しいところはくれてやるんだから、腹括れよっ!」
アイミの前には私だけが残って、尊人達は先に行かせた。こーゆー「仲間のため」みたいなやつ、1回やってみたかった。
「オメーの、『人の邪魔』をする特殊能力、スキルシールってんだってな?
それで、私の特殊能力、封じ込めてみろよ!」
何よりも、アイミとはサシで向かい合いたかった。
「まぁ、封じられたところで、戦闘では何の意味もねーけどな!
戦闘では使えねースキル持ち同士、仲良く戦おうぜ!」
「ムツキの、そーゆー『達観ぶった感じ』、前からムカ付いていた!」
「『ぶってる』わけじゃねーよ!色々あってこうなったんだ!」
人は極限状態で、普段とは違う面を見せるらしい。頭でっかちな青瓢箪だと思っていた吉見が、徹底して非情な参謀を演じている。ただのヘタレだと思ってた尊人が誰よりも根性を見せている。フミヤが尊人を目の敵にしていた理由が何となく解った。負けてらんねー。
「アイミっ!オメーはどうなんだよ?
追い詰められて、行き着いた先がチートの駒かよ!?」
「ムツキっ!アンタに私の何が解るっ!」
「解んねーよっ!
仲間面してダチ(フミヤとコウジ)を裏切った卑怯者の気持ちなんてなっ!」
「うるさいっ!」
アイミが突進をしてきて剣を振るう!ダチから本気で剣を向けられるとは思っていなかったので一瞬戸惑ったけど、旗竿で剣を受け流して素早く横に振り、アイミを退けた!
「マジみてーだな!」
追い撃ちの竿頭突きを数発放つが、アイミは後退で回避をする!
「ダチじゃねーから、罠に填めたんだっ!」
「なんだよ、その言い訳はっ!?」
アイミが体勢を立て直して間合いを開けたまま剣を構えたので、竿頭をアイミ側に向けて一息吐く。
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人に言われて動くより、自分が動いて周りを私色にする方がやりやすい。大人から言われたことでも、「その行動に何の意味があるのか」が私なりに納得できなければやらない。だけど、頭ごなしで不満に感じても、私なりに納得できればやる。要は他人から「やらされる」のが嫌い。
小学校の頃から、学級委員長だの運動会の応援団長、部活動のキャプテンをやってきた。勉強は苦手で語彙力があるとは言えないけど、周りの連中は私の言い分を尊重してくれる。
「おい、ムツキ。○○が、2組の加藤奏太にカツアゲされたらしいぞ」
「よし!利息付で催促に行くぞ、アイミ!」
アイミとは、中学で仲良くなった。私達が連んでいると、男子共でさえ逆らうヤツはいない。気に入らないヤツがいるクラスに怒鳴り込むと、愛想笑いで言い訳をしながら私達の要求を受け入れてくれた。
「え?○○に返すのかよ?」
「元本はな。もちろん、利息分は駄賃としてもらっておく」
世間一般目線で私がやってることが正しいかどうかなんてどうでも良い。私は私なりに曲がったことが嫌い。私なりに筋は通す。
「ふじわら・・・か」
小学校~中学校時代に「男子は格下」と侮ってきた私が初めて認めた男子が、高校1年で同じクラスになった藤原史弥だった。親分肌で寄って来る連中の面倒見が良く、喧嘩を売ってきた先輩や同期を返り討ちにして、あっという間に千幸高校の最強の座についた。まぁ、喧嘩最強に関しては、ゴツくて強面で、どう見てもオッサンにしか見えない相棒・近藤浩二の存在感が影響してるんだろうけどさ。
フミヤの存在感が刺激的すぎて、クラス内では、フミヤと一緒にいることが多かった。アイミとコウジを含めた4人で行動をすることが多くなり、いつの間にか遠藤と加藤も加わっていた。
「はぁ?フミヤって、あんなガキみてーなのにホレてんの?
キャラに合わなすぎだろう?アイツ(フミヤ)、ロリコンなのか?」
私はフミヤに好意を持っていた。アイミもフミヤを好いていた。アイミが別の奴を好きなら、私はフミヤにコクってたかもしれない。だけど、フミヤとの進展より、アイミとのダチ関係維持の方が大切なので、フミヤに気持ちを伝える気は無い。
・・・無いから、フミヤが誰に好意を持っていても関係無いんだけど、真田早璃とかって中学生にしか見えないチビッコが好きってのは心底驚いた。
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「フミヤと中坊(真田)がくっついたから、
嫉妬で狂ったってわけでもねーんだろ?
アレ(真田)は誰がどう見ても、尊人に一直線だもんな」
「バカにすんな!そんな下らねー理由で見限ったわけじゃねーよ!」
「フミヤを『見限った』ねぇ。
なにが、アイミをそこまで変えたんだ?」
「説明したって、理解できねーよ!
ムツキやフミヤみてーな、望まなくてもトップに座ってる奴にはな!」
「俄然、知りたくなってきた」
「私を倒せたら教えてやるよっ!」
「そりゃ、話が早くて助かる!」
一足飛びで踏み込んで、竿頭の突きを放つ!アイミは、剣を旗竿にぶつけて弾きながら踏み込んできた!
「舐めるなっ!」
素早く旗竿をバトンのように廻して、靡いた下がり藤の旗で、アイミの視界を遮る!
「あめーよっ!
意味も無く、こんな振り回しにくいもんを武器にしてるわけねーだろ!
旗には旗の戦い方があるんだよっ!」
アイミの動きが鈍ったところで、太股に思い切りローキックを叩き込んだ!
「くっ!」
「何だ、オマエ!?鎧が重すぎて、満足に動けてねーぞ!」
アイミが体勢を崩したので、脇腹の鎧の隙間に石突きを叩き込む!
「がはっ!」
旗を翻してアイミの視界を奪いつつ、間合いを開けて旗を構え直す。
一定の手応えはあった。アイミの脇腹で血が滲んでいる。だけど、鎧の隙間に石突きを入れた程度では、致命傷には程遠い。
「アイミっ!そんな重装備してんのは、私に攻撃を当てられるのか怖いからだろ?
そんな弱腰じゃ、私には勝てねーよ!」
強がっているが、実際には余裕なんて無い。ハッタリで威嚇をしているだけ。
これは喧嘩ではない。この世界に来て、平気で発生する「人殺し」にビビって息を潜めていた私と、フミヤにトドメを刺したアイミ。「どちらが凶剣を振るえるか?」なんて、考えるまでもなく解る。




