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44-5・切り札(ブラークさん)

尊人ミコ・・・俺をこれ以上ガッカリさせるな。

 所詮は君も、低脳共と同レベルだったんだな」

「・・・ん?」


 智人チートは、「僕の言うことには全く興味が無い」らしく、全く関係の無い誹謗で返してきた。


「なんのこと?」

「集団で1人を吊し上げる。徒党を組まなきゃ何もできない。

 いじめっ子のやり方だ。君もそっち側だったんだな」


 全部じゃないけど自覚はある。たくさんの仲間に恵まれなければ、僕はここに辿り着けなかった。そう言う意味では「徒党を組まなきゃ何もできない」は当たっている。

 だけど、智人チートを虐めたいわけではない。何よりも、チートに挑むって言うのは、重火器を持った相手に、素手で挑むようなもの。それほどの戦力差が有っても、集団で攻撃すれば「いじめ」になるんだろうか?


「孤立をした途端に皮肉?」


 チートの対応には違和感しか無い。


「安藤さん、仲間なんでしょ?

 もっと・・・脱落を怒るとか悲しむとか・・・無いの?」


 僕は、輪島さんを失って悲しい。柴田くんや櫻花おーちゃんや藤原くんの時も同じ。チートを憎み、自分の無力を悔やんだ。


「もちろんあるさ。だが、落胆の方が強い。

 俺は愛美の才能スキルシールを買っていた。

 だから、№2の地位を与え、部下もつけてやった。

 それなのに、低レベルな挑発に乗ったあげく、護衛も付けずに出て、

 下らない一騎打ちに拘って脱落したんだからな」


 チートの言葉に対して、武藤さんが露骨な不快感を示す。


「落胆?才能?それだけかよ!?

 アイミの心や存在感はどうでも良いのかよ!?

 アイツはアイツなりに、オマエに感謝してたんだぞ!」

「助けてやったんだ。感謝されて当然だろう」

「なんだよそれっ!テメーにとって、アイミはその程度の存在なのかよ!?

 すげームカ付くっ!一発殴らせろっ!!」

「待って、武藤さん」


 チートに詰め寄ろうとした武藤さんを止める。


「ここから先は、僕がやるべきこと」

「任せて良いんだな?」

「うん。今度は、僕が皆との約束を守る番だからね」


 武藤さんの前に出て、チートを見つめる。


「ねぇ、智人トモ。素直に認めなよ」


 僕は「現状を認めない」には二種類あると思う。1つは怪我をしてホントは痛いのに「痛くない」と言ったり、メッチャ疲れてるのに「まだ大丈夫」という我慢。もう一つは、あきらかに負けているのに、プライドが邪魔をして「負けてない」と言い張ったり、失敗を他人や環境のせいにして責任から逃れる往生際の悪さ。前者は周りから根性を認めてもらえたり、無理をすることで見えてくる光景がある。後者は「自分は悪くない」に逃げているから成長をしない。

 智人トモは、後者タイプの言い訳をするクセがある。そして、今の智人チートは、安藤さんの脱落に動揺する素振りを見せないクセに、孤立には不満を漏らした。


「失敗や悲しいことを素直に認めることで・・・見えるものは沢山あるんだよ」

「はぁ?なんだそれ?安藤ごときを倒した程度で有利になったつもりか?」


 現実世界で友達してた時は「僕達は同じ」だと思ってたけど違った。


「そっか・・・解った。もういい」


 僕が他人の意見を優先させるのは、情けない話だけど「自分に自信が無い」から。そのスタンスは、この世界に来ても(環境が変わっても)簡単には変えられない。

 智人トモが他人の意見に従うのは、集団の中で自分が責任を追及されたくないから。自分は何もしないのに、行動を起こした他人には文句を言う。「皆とは違う特別な自分」が「失敗をする」のは許されないし、認めたくないのだ。


「チート・・・君は特別な存在なんかじゃない。

 たまたま、皆より凄い特種能力を得ただけの、普通の人なんだよ」

「はぁ?武皇になった俺に、それ言う?」


 チートの底が見えた。「あの時」の戦況を覆したのは安藤さんだったのに解っていない。チートは安藤さんを過小評価して、自分自身に溺れている。


「平均的な能力を得ていて、工夫で上り詰めたなら凄いと思う。

 でも、皆とは違う凄い力を得た君に自慢されても、凄いとは思わない」

「おいおい、素直に認めろよ。皆とは違う力を得た俺が凄いんだよ!」

「違うよ!

 君は特別扱いをしてもらっただけなのに、自分が凄いと勘違いをしている!

 君は普通と変わらない!それを今から証明する!」


 背に先生の剣を戻し、腰布に真田さんの魔石ダガーが間違いなく有ることを確認してから、空手のままで構える。


「富醒発動!レンタル!!」


 目の前に表示された手札から3枚、チートに「何を選んだか?」を見られる前に素早く選択する。必要なのは2枚だけ。残る1枚は「最も重要な1枚」を警戒されないためのブラフ。


「俺の富醒は俺以外の全ての富醒を凌駕している!手の内は全部知っている!

 死んだ奴らからもらった能力でも、ソイツ等(仲間達)から借りた能力でも、

 君の中途半端な富醒では、何一つ満足には使えない!

 何を選んだって変わんねーんだよ!」

「中途半端は認める!でも、僕の特種能力は、君が見下すほど無力ではない!」

「あっそう・・・だったら見せてもらおうか。『無力ではない能力』とやらを」


 チートが僕に掌を向け、僕は素手のままチートに向かって駆け出す!


「富醒・イメージ!ゼウス!!」

「アジリティ発動!」


 雷が落ちてきて、僕が発した残像に着弾!その間に、チートの横に回り込む!


「菅原の特種能力で、君の手の内は確認済み!

 今の君がアジリティで生み出せる残像は2つ!

 3つの残像を作った本家以下のアジリティで何ができる!?」


 移動をしながら発した2つ目の残像も雷で掻き消された!だけど、アジリティの残像は「2体消されたら終わり」ではなく、「常に2体を作れる」なので、再び残像を発する!


「学習能力が無いのか!?

 何回やっても、2体が限界じゃ、怖くもなんともないんだよ!

 富醒・イメージ!カグツチ!!」


 床から火柱が上がって、残像が消される!だけど、再び残像を発するので、問題は無い!


「しつこいな!まだ『勝てない』と解らないのか!?

 ならば決定的な敗北をくれてやる!!」


 智人チートが両拳を左右の脇腹に添えて四股立ちをして、気合いを発する。


「ハァァッッ!富醒・イメージ!アポロン!!」


 チートを中心に眩しい半球の高エネルギー体が放出され、床を捲り上げながら全方位に向かって広がる!


「皆は退避をしてっ!!」


 仲間達に退避勧告をしてから、チート目掛けて一直線に突っ走る!


「切り札を使うのは今からだ!」

 

 正念場でアジリティを選択したのは、チートに接近をするためではなく、攻撃を分散させるため!


「ブラークさん!使わせてもらいます!」


 ブラークさんの本当の名前は、楽山来武らくやま らいぶ。僕達よりも10年くらい前に転移をした現実世界の人だった。

 ブラークさんも転移した時に、特殊能力を得ている。それが僕の特殊能力でレンタルできるかどうかは確認させてもらった。確認した目的は、興味半分と、レンタルできるならチートが予想をできない「切り札」に使えるから。


「マジックソード発動!」


 腰布に挟んでおいた真田さんの魔石ダガーを抜刀して、突進をしながら、切っ先をチートに向ける!


「魔力の壁!」


 ダガーに埋め込まれた魔石から魔力が迸り、僕が通過できる大きさの穴を灼熱半球に空けた!


「なにっ!?」


 チートが動揺の表情を浮かべる。これは、チートが蔑ろにした“縁”という力。

 何もかもが中途半端にしか使えないけど、「僕を信用してくれる仲間達によって紡がれるこの富醒」を使えることを、僕は誇りに感じる。

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