44-3・武皇チート
「うわぁぁぁっっっっっっっっ!!!」
「待ってっ!尊人くんっっ!!」
剣を振り上げて飛び掛かろうとしたら、真田さんに腕を掴まれて止められる。
「頭に血を上らせて闇雲に突っ込んでも返り討ちに合うだけっ!
皆の思い・・・輪珠ちゃんの犠牲・・・無駄にしないでっ!」
眼にいっぱいの涙を浮かべた真田さんを見て頭が冷えた。唇を噛みしめて、吐き出し駆けていた怒りを腹の中に留める。勝てば輪島さんは救える。今は、恨みをぶつけるのではなく、勝つことを優先しなければならない。
「ありがとう真田さん。もう大丈夫だから・・・」
真田さんと並んで構える。呼応した司、楠木くん、北条くん、長野さん、若林さん、龍造寺先生がチートを囲んで剣を構えた。
8人に囲まれているのに、チートに焦りの表情は無い。
「わぁぁっっ!」 「やぁぁっっ!」 「はぁぁっっ!」
僕と真田さんと長野さんが同時に突進!
「富醒・イメージ!カグツチ!!」
突進中の足元に幾つもの火柱が上がり、僕&真田さん&長野さんは慌ててバックステップや横飛びで回避する!
若林さんが手の平を翳すと同時に、チートも若林さんの頭上に掌を向けた!
「富醒・イメージ!ゼウス!!」
天井から雷が降り注いで若林さんを襲う!司がシールドを飛ばして若林さんを守るが、威力を相殺しきれずに、若林さんはシールド諸共に弾き飛ばされた!
「富醒・イメージ!パズズ!!有象無象を一掃しろっ!!」
チートの周りに竜巻が発生!楠木くんと龍造寺先生がチートを射程圏に入れるために接近をしていたけど、弾き飛ばされて壁に激突する!更に、体勢を立て直そうとしていた僕等も、竜巻の余韻によって押し戻されてしまう!
誰1人、チートに近付くことができない。
「君も戦いに参加したいか?」
チートが、離れて戦いを見守っていた平家さんを眺めながら嘲笑う。
「裸になれば水と同化できるんだろ?水を発生させてやるから脱げよ」
チートが平家さんの特殊能力を知っているわけがない。やはり、吉見くんが予想した通り、全員の特殊能力がバレている。
「真田のピークエクスペリエンスじゃ、俺に致命打は入れられない。
津田のディフェンダーで機能するシールド5枚程度、簡単に抜ける。
楠木のアースクエイク、北条のアトミックボム、試してみろよ。
俺は相殺できるから、君等の仲間だけが被害者になるぞ。
長野のトルネードスピアでは火力不足。
若林がギアンティゼーシャンを使った瞬間に、本人は無防備すぎて狙い放題。
龍造寺のチャームは発動にタイムラグがあり、その間に狙い撃ちできる。
尊人のレンタルに至っては、何もかもが中途半端で論外。
藤原や近藤の特殊能力・・・未だに満足に使い熟せてないんだろ?
さて、あと一歩どころか何万歩も遠い君達で、どう攻める?」
それぞれが立ち上がって構えるんだけど、「初手が全く届かなかった」という事実が、次の攻撃を戸惑わせてしまう。
「チートのヤツ・・・こんなに強いのかよ?」
「源や真田は、こんなヤツと戦っていたのか?」
「なんで、諦めずに戦い続けられるの?」
チートの戦闘能力を知っているのは、この場では僕と真田さんと我田さんだけ。口では「何でも有りでとんでもない攻撃」と説明したけど、実際に見て司&楠木くん&北条くん&長野さん&上杉さん&平家さん&若林さん&龍造寺先生が動揺をするのは当然だ。
「長野、上杉、平家、若林、龍造寺・・・
これで、無駄な抵抗ってことが解ったろ?
降参するなら受け入れてやるぞ。
我田も、頭を下げるなら許してやる。王者は器の広さも必要だからな」
チートからの降伏勧告。その対象に男子が入っていないところに、チートの厭らしさを感じる。その対象に真田さんが入っていない=殺害対象ってことに怒りを感じる。
「土下座されたって、アンタの家来になんてならないっ!」
真田さんが吼えた。
「グッドアンサー!俺も、君だけは土下座をしても許さない。
尊人や武藤以上に目障りだからな」
チートが真田さんに掌を向けて火炎弾を放つ。
「早璃っ!」
長野さんが真田さんの前に立って、穂先気流で受け止めるんだけど、相殺をしきれずに、後ろに立つ真田さん諸共に弾かれて尻餅を付いた。
「真田さん・・・無理をしないでっ!」
今の真田さんは、いつもほど上手に魔法を捌けない。だから、長野さんが真田さんを庇った。真田さんの魔石ダガーは、僕が預かって腰帯に挟んである。
『チートとの戦いは、真田さんではなく、自分のために戦ってほしい』
吉見くんの言葉を思い出す。今までと同じように「真田さんのため」に戦ったら、真田さんが倒された時点で僕の心は折れる。だから、この戦いだけは、真田さんがどうなったとしても、「自分のため」を前提にして戦わなければならない。輪島さんが倒れた時点で心が壊れそうになったのに、今の僕には許されない。
他人の行動や意見を優先して生きてきた僕には、とても難しい注文だ。




