44-2・2つの対峙
主城門を抜けて中庭に突入!
道中に紫親衛隊が数人いたけど、先ほどの「巨大若林さんの力業」を見て怯えていたので、龍造寺先生のチャームで骨抜きにしてダメ押しをする。
中庭を突っ走って宮殿へと向かう!僕等の接近に合わせて扉が開き、凄んだ表情の安藤さんが出てきた!
「安藤さんっ!」 「あんちゃんっ!」
一斉に立ち止まって構えた。安藤さん、紫の鎧と紫のマントを装備して、黒い目をしている。ペイイスで一緒に生活をしていた時とは別人のようだ。
「よう、アイミっ!タイマンの覚悟を決めて出てきたか?
その格好、全然似合ってねーぞ!」
武藤さんが“下がり藤”の旗竿を肩で担いで前に出て、安藤さんと対峙をする。
「ムツキっ!」
「ダチの由身だ!テメーの息の根は私が止めてやる!」
「調子に乗ってんなっ!」
「調子に乗るに決まってんだろ!
フミヤの後継者として藤原組のリーダーをしてんだからさ!」
武藤さんが旗の紋を見せびらかしてから、尖った竿頭を安藤さんに向けて威嚇をする。
「なにが『藤原組』だ!?下らねー!」
安藤さんが剣を抜刀して構えた。
「オメー等、まさか、決着が付くまで呑気に眺めてるつもりじゃねーだろーな?」
2人の緊迫感に飲まれていた僕等は、武藤さんの催促で我に返る。
「約束通り、アイミは私が倒す!
オメー等はオメー等がやるべきことをやれ!
特に尊人っ!一番美味しいところはくれてやるんだから、腹括れよっ!」
「うんっ!」
「僕と由井さんは主塔に行って和田さん達を制圧する!
皆は源君のサポートを頼むよ!」
安藤さんの目には武藤さんしか入っていない。吉見くんと由井さんは主塔に向かって駆け、僕等12人は睨み合う武藤さんと安藤さんの脇を通過して、宮殿へと向かう。
「わっ!まだいたっ!」
突入したら紫親衛隊2人が飛び掛かってきたけど、司がディフェンダーで攻撃を弾き、長野さんがトルネードスピアで弾き飛ばす!
「階段の上かな?」
大階段を駆け上がったら紫親衛隊3人が飛び掛かってきたけど、龍造寺先生のチャームでメロメロにされ、楠木くんに力一杯ブン投げられて窓を突き破って外に放り出された。
「今の、楠木くんの攻撃、要らないよね?」
「龍造寺先生のお色気だけで充分だったと思う」
2階に上がって豪華な内装の大通路を駆け、大きな扉の前へ。この部屋の外側が、大きなバルコニーになっていた。おそらくこの先に玉座がある。扉を開けようとして、戸惑って手を止めた。
「智人は・・・この部屋に?」
チートが偉そうに玉座に座って、僕等を待っている様子を想像する。
4都市で一斉決起をしたのは、チートを遠征に出さず、帝都籠城をさせるため。
西都市軍に負担をかけて強行突破をしたのは、チートから各個攻撃の余裕を奪うため。
野戦のような広い戦場はチートの独壇場。少しでもその優位性を潰すために、狭くて遮蔽物がある戦場を選ぶ。
ここまでして、やっと勝ち筋ゼロを回避しただけ。チートが有利ってことに変わりはない。
「いや・・・違う。僕はそこに戸惑ってるわけではない」
僕の双肩に皆の命運が掛かっている。現実世界で、こんな重責を背負うことなんて無かった。それなのに、こんな生きるか死ぬかの瀬戸際で、とんでもない役割が廻ってきたことに戸惑っているんだ。
「わぁぁっっ!!」
両手で頬を叩いて気合いを入れ、勢い良く扉を開ける。
「・・・あれ?」
いきなり想定外発生。チートは玉座に座っていて、ホントは待ってなかったのに「ようやく来たな。待っていたぞ」とか「よくぞここまで辿り着いたな」なんて横柄な口調で語りかけてくると予想していたのに、部屋は無人だ。
「逃げた?」
彼は劣勢時でも、言い訳をして負けを認めない。だから、今のイキリまくっているチートが逃げ隠れするとは思えない。
なら、どこにいる?先ほど、輪島さんのコンパスで確認してもらった時は、間違いなく宮殿方向を示していた。宮殿内にいるのに玉座にいない。プライドの塊みたいなチートが、こんな王道外しをするのは予想外だ。
「奥の部屋かな?」
宮殿の構造は解らないけど、「玉座の間しか無い」なんて有り得ない。足早に室内を歩きながら扉を探す。
「尊人くんっ!危ないっ!!」
「えっ!?」
振り返った眼前に、斜め上から飛んできた剣が迫る!直後に、真田さんが飛び付いて、僕を突き飛ばした!
転倒したために飛んできた剣が視界から外れ、僕には痛みが無いのに肉が貫かれる音がして血飛沫が飛ぶ!
「真田さんっ!!」
しがみついていた真田さんを慌てて起こすけど、真田さんに外傷は無い・・・だけど
「・・・輪島・・・さん?」
バルコニーと僕の間で仁王立ちをした輪島さんに剣が突き刺さっている。更に2本の剣が飛んできて、輪島さんを貫いた。
「がはっ!!」
「輪珠ちゃんっ!」
喀血して仰向けに倒れた輪島さんを、真田さんが抱き止めて介抱する。だけど、胸のど真ん中とお腹を貫かれており、「もう助からない」のは明らかだった。
「輪珠ちゃん・・・なんで?」
「み・・・源君を・・・見てるの・・・早璃ちゃんだけじゃ・・・ないんだよ
源君が素敵なこと・・・知ってるの・・・早璃ちゃんだけじゃないんだよ」
息を荒くして顔面は蒼白。だけど輪島さんは、力強い目で真田さんを見詰める。
「南宿場で会った時は・・・隣のクラスの目立たない人
・・・くらいにしか思ってなかったけど・・・優しくて・・・一生懸命で・・・
私は気持ちが折れてたのに・・・
源君は諦めてなくて・・・たくさん勇気もらえて・・・」
「輪珠ちゃん・・・・・尊人くんのこと?」
輪島さんの目から光沢が失われていく。
「早璃ちゃんが・・・有利ってのは解ってる・・・
それなのに・・・早璃ちゃんが盾になって犠牲になっちゃったら・・・
勝ち目が無くなっちゃう・・・じゃん
だから・・・これは・・・私なりの・・・意地・・・なの」
「輪珠ちゃんっっっ!!!」
輪島さんの体が白い靄に包まれてキラキラと輝きながら、泣いている真田さんの腕から零れるようにして消滅していく。二度と見たくなかった光景。自分の無力っぷりが悔しくて仕方が無い。
「女子を盾にして生き存える・・・か。
随分とクソになったな、尊人」
声を聞いた瞬間に、全身の血が沸騰して、髪の毛が逆立つような錯覚に陥った。
「あ~あ~・・・コンパスの能力は欲しかったんだけどな。
まぁ、今から、ここに集まった全員を始末するんだから、もう必要ないかな?
探していた俺が出てきてやったんだから、君にも、もう必要の無い人材だろ?」
バルコニーにかかった大きなカーテンが風で靡き・・・
その内側に、金色の鎧と王冠で身を固め、煌びやかなマントを羽織った智人が立っている。
「チートォッッッ!!!」
チートは、黒い目で僕を見て微笑を浮かべている。僕は許さない。
尊人は派手で華が有ってモテモテのタイプではないけど、尊人の転移した世界での懸命さに惹かれる子は早璃以外にもいるはず。・・・と言うか、努力以外で得た力を才能と勘違いして酔っているとか、無自覚に力を行使している人格破綻者より周りからの評価は高いと思う。




