表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/111

43-5・ウォーター

「やぁぁっっ!」


 パプールが剣を振り下ろした!真田さんは紙一重で回避してパプールの懐に飛び込む!


「フン!やはりただの小娘!素人の動きだな!」


 バックステップで距離を空けるパプール!真田さんが振るったダガーはパプールに届かない!全身を目一杯伸ばして当てようとするが、パプールの胸とダガー尖端の間が30㎝から25㎝に縮まる程度で、突き刺すにはほど遠い!

 やはり、真田さんは先読みをできていない。パプールの動きを予測していない。ピークエクスペリエンスを封じられている。


「真田さんっ!」


 僕は、反射的にパプール目掛けて突進をしていた!

 全身を伸ばしきっている真田さんに、パプールの横凪が迫る!防御無視で攻撃に専念してしまった真田さんの姿勢では、回避は不可能だ!・・・が


「ドラゴンファイヤーッッッ!!」


 ダガーの魔石から、頭の直径が10㎝くらいの燃える細長いカバが飛び出して、パプールの胸に着弾!


「なにぃ!?バカなっ!アジット親衛隊の俺が、小娘ごときにっ!」


 燃えるカバに弾かれたパプールが石橋の外側に飛び出す!


「小娘如きが、舐めるなっ!」


 パプールは、辛うじて縁を掴んで堀への落下を防ぎ、石橋の上の腕と足をかけてよじ登ろうとする!


「さっきから、小娘、小娘、うるさい!」


 足を止め、パプール側に向き直って中指を立てながら舌を出す真田さん。


「なんか、急に登場して偉そうにしてるけど、

 どーせ、ただの数合わせでしょ!?」

「バ、バカにするな!」

「あたしアンタのこと知らねーし!」

「俺はアジット親衛隊の・・・・・」


 真田さんが投擲した大きなナイフ(初期に僕がゴブリンから強奪して、真田さんにあげたナイフ)がパプールの兜にクリティカルヒット!


「うわぁぁぁっっ!」


 まだ石橋に登り上げていなかったパプールが、体勢を崩して真っ逆さまになって5m下の水堀に落ちていった。


「真田さんっ!大丈夫なの!?」


 僕が到着する前に決着が付いた。どうなってる?てっきり特殊能力を封じられたと思っていたけど、余計な心配だった?


「ん?なにが?」

「真田さんのピークエクスペリエンスは大丈夫なの?

 長野さんのトルネードは封じられたみたいだけど・・・」


 長野さんが槍を軽く振るいながら頷いて「封じられている」を肯定する。


「ありゃ?ホントだ」


 確認したら、真田さんの特殊能力も発動しない。


「特殊能力を封じられていたのに、燃えるカバの魔法を出したの?」

「カバじゃなくてドラゴンファイヤーね」

「ドラゴンファイヤーは競走馬の名前ね」


 真田さんが燃えるカバを発動したけど、手元でボンと弾けて消えた。やはり、通常時の真田さんでは燃えるカバの射程距離はゼロだ。

 つまり、先ほどの真田さんは、ピークエクスペリエンスを封じられていたのにゾーン状態に入っていた=自力のゾーンを発揮していたことになる。


「スゲーや、真田さん」

「えへへっ!」


 この世界では当たり前にある魔法を、知識と魔力の無い転移者が学んでも満足には使えない。皆がそう考えて魔法習得を拒否した状況で、真田さんだけは特殊能力だけに頼らずに自己研磨を続けた。その結果が、この世界でエリートクラスのアジット親衛隊を退ける大金星に繋がったのだ。


「おのれっ!恥を知れ!許さんぞっっ!!」

 

 下から声がしたので見下ろしたら、パプールが水面から顔を出して、橋上の真田さんを睨み付けていた。


「栄光ある騎士の戦いを、2人がかりで汚すとは卑怯なり!」

「うわぁ~・・・格好悪っ!」


 数十秒前までは「小娘2人」だの「ただの小娘」と格下扱いしてたのに、負けた途端に「負けた自分の方が正しい」みたいな感じに態度を変えやがった。あんな大人にはなりたくないな。


「超ムカ付くからさ、『小娘2人に惜敗』から『小娘3人に惨敗』に変更するね」

「なにっ!?」


 水堀にはパプールしかいないのに、パプールの周りで女性の声がする。


「富醒発動!ウォーター!!」

「ちょっと待っ・・・ぐわぁぁっっ!!」


 水堀に巨大なウォータースパウト(水上竜巻)が発生して、巻き込まれたパプールは、水に捥ぎ取れた紫の鎧を撒き散らしながら上空高く放り上げられた!


「うぎゃぁぁぁっっっっっっっっっっ!!!」


 やがて落ちてきて水堀に大きな水飛沫が上がり、白目剥いたパプールがプッカリと浮かび上がる。


「ん?どうなってるの?」

「あ~あ~・・・終盤の強敵って演出だったのに、

 余計な負け惜しみで平家へっきーを怒らせたせいで、

 異世界物の第1話で登場する噛ませ犬に格下げされちゃったね」


 それ系の第1話だけなら何作か見たことがあるので、真田さんの例え話が何となく理解できた。


「ああ・・・なるほど。主人公を小バカにして惨敗する人達ね」


 水堀から直径40~50㎝くらいの水の球体が飛び上がって、橋の上に着地する。


「今のが平家さんの特殊能力?凄いじゃん!」


 水の球体は徐々に人型に変化をして、丸み帯びて、胸の膨らみが形作ら・・・


「尊人くんのヘンタイっ!見るなっ!」


 ガン見をしていたら、後から真田さんの手が回ってきて目隠しをされた。そして、目が解放された時には、水の球体があった場所には平家さんがいて、既に服を着ていた。

 この場の男子は僕だけではないんだけど、見せてもらえなかったのは僕だけ。多分、北条くんはシッカリと見ている。


「尊人くんのヘンタイ」


 もう一回ダメ出しをされたので振り返ったら、真田さんがムスッとしていた。

 下心があったのは認めます。だから、怒られたのは「僕が悪い」と受け入れます。だけど、なんで北条くんは平家さんの裸を見てもOKなの?

 以前、北条くんが「水化をした碧流の風呂に入ったら凄かった」と自慢していたけど、どういうこと?ウォータースパウトを喰らって死にそうになったの?でも殺されかけたことなんて自慢しないよね?ちょっと意味が解らない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ