表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/111

43-1・開戦

 朝、帝都の北から黒い狼煙が上がる。


「始まった!」


 北都市ノス軍が攻撃を開始した合図だ。他の3軍はノスの攻撃をキッカケにして呼応することになっている。

 数分の後、帝都の南と東、そして、我が西都市セイ軍の本陣からも黒い狼煙が上がる。


「わぁぁぁっっっっっっっっっっ!!!」


 セイの兵1万5千が、一斉に気勢を上げた。多分、本陣からは「かかれ」の号令が発せられたんだろうけど、左の端にいる藤原組までは届かない。

 伝令係の騎士が「進め」と叫びながら、整然と並ぶ兵の間を駆ける。


「出陣だぁっっ!!」


 セイの先陣が、帝都西門に向けて進撃開始。守っているのはセイを見限ってチートに与した白鎧に紫マントの兵士達。南門は赤鎧の兵、北門は黒鎧の兵、東門は青鎧の兵、帝都の4門全てにおいて、同郷同士がぶつかる構図になっている。これは、「元仲間同士での争いでは戦意が上がりにくく、戦局が膠着をする」という敵側の魂胆。おそらく、戦局を膠着させて、智人チートが直々に崩して廻る作戦だろう。


「ヤバっ!緊張してきた」

「平常心でいられる方が怖いでしょ」


 真田さんが僕の腕を掴んで落ち付かせてくれる。僕の全身の震えが真田さんに伝わって恥ずかしい・・・と言いたいんだけど、真田さんの震えも伝わってくる。


「ぼ、僕がシッカリしなきゃ・・・」

「ジェンダーレスだよ!」

「それでも・・・僕がシッカリしたいの」


 セイの先陣の4000人が動き出す。中央の3000人と、帝軍守備兵5000人のうちの前衛がぶつかった。右翼と左翼(各500人)が壁にハシゴをかけようとするんだけど、黄鎧の兵が櫓から魔法を飛ばしたり矢を射るので取り付けない。


「・・・これが戦争」


 気が逸るけど、僕等の出番はまだだ。戦争なんて初めてなので、どうなれば「膠着」なのかよく解らないんだけど、敵側が仕向けた「東西南北の全戦場で膠着させる」に引っかかったフリをするのがこちらの作戦だ。ハシゴを架けようとしているのも「本気で攻めるふり」をしているだけ。


「尊人くんっ!見てっ!」

「うん、動き出したね」


 第二陣2000人が動き出した。セイ先鋒と守備軍は正面衝突をしており、第二陣が左右から攻めかかって守備兵を挟む。これで守備兵は正面の先陣、左右の二陣、背後の門に囲まれた。だけど、これでセイ軍が有利になっているわけではない。守備隊の後衛が動き出して応戦をする。

 門の内側には、僕等が把握できない帝軍の本隊が控えており、やがて表に出てくるはずだ。


「予定通り・・・だよね」


 守備兵が囲まれて動けなくなる。これが、僕等の出撃するタイミングになっている。


「そろそろ俺達の出番じゃないのか?」


 ツカさんが同意を求めてきた。武藤さんと吉見くんが不在(南の戦場にいる)の藤原組は、バスケ部1軍のツカさんや薙刀名人の長野さんではなく、僕と真田さんが主導権を握っている。


「うん、そろそろだよね」

「ミコト殿!藤原組のご出陣をお願いしますっ!」


 ホワイさんが寄ってきて「出撃依頼」をする。この人、昨日までは上目線だったのに、「僕の檄」以降、急に敬語を使い始めた。権力に巻かれるタイプなのかな?ホワイさんに「出撃しろ」と言われると、「この人の判断力に従って大丈夫なのか?」と、ちょっと不安になってしまう。


「解ってるんだけど・・・」


 壁の内側では、どのくらいの兵が待機をしている?帝兵は全部で7万人くらいだから、1万5千人くらいはいるのだろうか?


「チートなら・・・どう采配する?」


 アクションゲームをしている時のチートは、強い敵との一騎打ちでも実力を魅せてくれたけど、弱い敵の群れに無双するのを楽しんでいた。

 一騎打ちは北の戦場でブラークさんと、無双は「僕等がいる」と思われている南の戦場で行うつもりだろう。兵数が少ない東の戦場は放置として、この戦場では何をしようと思っている?


  『モンスターが弱ると、攻撃の手を休めてフィニッシャー狙うよな』


 この世界に転移をした前日、オンラインゲームで「トモロー被害の会」に誘われてたことを思い出した。当時は気持ちが悪いと思って相手にしなかったけど、チートは強敵の疲弊を待って「ハイエナ行為」をしていたらしい。


「この戦場では、それをする?」


 北都市ノス軍の中核のブラークさん、南都市サウザン軍の中核の藤原組、そして4都市決起の中核たる西都市セイ軍。この3つを潰されたら、反チート連合軍は終わる。


「チートは、セイ軍の疲弊を待って本陣を叩くつもりだ!」


 対策は簡単。作戦通り、僕等が帝都に突入すれば、チートはセイ軍を攻撃する余裕が無くなる。だけど、チートはセイ軍を疲弊させるつもりなら、壁の内側には相応の兵が待機をしている。僕等が足止めされたら、チートに余力を与えてしまう。壁内に突入して、囲まれる前に突破しないとマズい。


「どうする?どうする?どうする?

 強制支配ルーラーを発動して・・・

 いや、僕のルーラーでは干渉領域が狭すぎる」


 ブラークさんなら強行突破をできるかもしれない。藤原くんなら臨機応変に対応できるのかもしれない。吉見くんなら事前に打開策を打てるのかもしれない。


「考えろ。考えろ。考えろ。

 今、この戦場では、僕が決定権を握っている。僕が皆の命を預かっている」


 ブラークさんなら、藤原くんなら、吉見くんならどうする?


「ホワイさん!門の攻撃を厚くしてください!」

「攻め手を増援したら、塀の内側の兵が出て来ますよ!

 もうしばらくは膠着を演出するのではなかったのですか?」

「作戦変更です!激戦を演出して、壁内の兵を引っ張り出してください!」


 攻め手が有利になれば、門に取り付かれる前に内側の兵が出てきて門を守る。壁内で兵が動き出せば、全体が「待機」から「持ち場移動」に変化する。その間隙を突いて突入をする。


「承知しました!」

「それから、ホワイさんの掌握している兵を僕等と一緒に突入させてください!」


 壁内に突入する兵を増やす。そうすれば、門の争奪戦は意味を為さなくなり、味方の疲弊は最小限で済む。必要なのは「チートが思考をする前に王手をかける短期決戦」だ。壁内に大量の兵が待機をしている状況で突入して、市街地戦になってしまうのは不本意だけど、背に腹は替えられない。


「承知しました!直ぐに本陣に戻って手配をします!」

「門が開いて帝兵が出てきたら僕等は動きます!

 ホワイさんの兵を追随させてください!お願いします!」


 権力に巻かれるタイプのYESマン・ホワイさんが急いで馬を走らせて本陣に戻っていく。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ