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42-5・木の上の真田さん②

 僕等が作戦会議のために西の陣に移動したのは、帝都からは丸見えになっているのだろう。「藤原組は南の戦場で戦う」のミスリードを誘う為に、武藤さん&吉見くん&我田さん&楠木くん&龍造寺先生と、紅マントを羽織った白騎士達に南都市サウザン軍に行ってもらう。

 その一方で、僕等は敵から紅色を隠すために、白いマントを羽織った。藤原組として戦いたいので、紅い甲冑とアームバンドまで脱ぐつもりは無い。


 夕食後、仲間達は、それぞれで自由時間を過ごす。当たり前なんだけど、「明日は決戦」なので、皆、落ち着きは無い。上杉さんが気を利かせて特殊能力バルドを発動させて歌う。上杉さんに合わせて、由井さんがハミングをする。おかげで、仲間達だけでなく周りにいた兵達の気持ちも和らいだみたいだ。


「あれ?真田さん・・・どこいった?」


 僕は大勢で騒ぐのは苦手だけど、真田さんだけが輪から外れているのは寂しい。真田さんを探すことにした。


「明日には、現実世界に帰るんだよなぁ」


 1人で歩いて、真田さんを探しつつ、この世界の景色や人々を見て廻る。いつまでもこんな世界にはいたくないんだけど、愛着がゼロってワケでもない。この世界のおかげで「繋がり」を学び、少なからず成長できた実感はある。

 この世界で平穏な気持ちでいられるのは、今が最後だろう。だから、思い出の1つとして、目の前にある風景を眺め、記憶に焼き付けておく。


「お~~~~いっ!」


 変な鳴き声・・・ではない。とても聞き馴染みのある声がしたので視線を向ける。大木の枝に座った真田さんが、手を振っていた。


「そんなところで何やってんの?」


 木の根元に駆け寄っていって、3mくらい上の枝に跨がってる真田さんを見上げる。


「木に登ってるの」

「なんで、木に登ってるのかな~って思ってさ」

「空と、風景と、この世界の人達を眺めてたの。これが最後って思うからさ」

「そっか」

「尊人くんは何してたの?」

「僕も一緒。見納めになる景色を見て廻ってた」


 ホントは「君を探していた」って言いたいんだけど、なんか恥ずかしくて言えない。


「木に登る?良く見えるよ」


 大木を見上げる。アーマーファンブルを発動させれば一太刀で大木を切り倒せるくらいには成長できたけど、登れる自信は無い。


「・・・・・・・いや、やめとく」


 大木の根元に腰を降ろして、幹に凭れ掛かる。


「お願いごと・・・決めた?」

「いや、まだハッキリとは決めてない」


 実は、今現在、僕の胸中では「明日の戦い」以上に戸惑っている「ミッション」がある。

 

「急に言われて困ってる。真田さんは何が良いと思う?」

「あたしに聞かれても困るよ~」


 武藤さんから強制された「檄」は、ドエス気質の悪戯と同時に、皆の前で「僕がリーダー」と明確化をするための画策だった。武藤さんが僕を「帰りたい派」の代表に決め、皆が「君なら文句は無い」と認めてくれた。

 つまり、「この世界の残りたい派」が掃討された時点で、僕は願いを1つ叶える権利を得るのだ。


「お金持ちになる?」

「いや、お金は欲しいけど急に増えて有難味が無くなるのは困るし、

 変な儲け方をしちゃったら、そのあと、普通に稼ぐのが辛くなりそう」

「権力は?」

「威張るの嫌い。偉くなんてならなくて良いよ」


 つい先ほど、皆の前で偉そうに「檄」を飛ばして、そのあと総ツッコミを喰らいました。


「なら、運動神経?バスケですっごい有名プレーヤーになるとか!」

「他力本願で凄くなれても嬉しくない」


 そんなことをしたら、事情を知ってる皆から『ズルをして凄くなった』って言われちゃう。


「頭脳明晰は?超難関の大学に行って、首席で、凄い発明したり、起業したり!」

「それ、中身が僕じゃなくなってるよ」


 急に頭が良くなって吉見くんみたいな思考をしたら、それはもう僕ではなく吉見くんだ。思考が僕じゃないのに、人格が僕のままってあるのかな?人格が僕のまんまで少しずつしか成長できないから、僕という人間が形成されている。


「僕は僕。失敗ばっかりだけど、違う人にはならなくて良いよ」

「そう言えば、転生して高スペックになった途端に、

 別人になっちゃってるとしか思えないアニメの主人公・・・いるね。

 前々から思ってたんだけど、尊人くんって異世界転生とか追放物とか

 現代ダンジョン系のアニメって見ないの?」

「なんのアニメか忘れちゃったけど、流行始めたころに少しだけ見たよ。

 死んで転生するのは他人の所為、チームから外れるのも他人の所為、

 ダンジョンができて環境が変わって、主人公を受け入れない価値観が壊れる、

 努力もせずに外的要因で強くなるのに『潜在能力覚醒』みたいなノリ、

 自分からは何もしてないのに、ものすごい過保護設定の恩恵受けるでしょ」

「うん、そんな感じ」

「最初だけ見たけど、何が面白いのか解んなくて見るのやめちゃった。

 真田さんは見てるの?」

「中学の頃は見たけど、久しぶりに見たら『なんか違うな~』って思って、 

 最近は見なくなったよ」


 そーゆーアニメをちゃんと見ておけば、この世界に転移して直ぐに馴染めたのかな?まぁ、今となっては、どうでも良いことだけどさ。


「ならさ、アイドル並の超イケメンにしてもらう?

 アニメで、転生した途端にイケメンになるのあるよ。

 顔だけじゃなくて体格も変わるパターンもある。

 それなら、中身は変わらないよ」

「それ、虚しくない?」


 そりゃ、イケメンになれば、色々と特をすることがあるだろうけど、今の自分の捨てる=自己否定じゃん。しかも、自分の努力や決断じゃなくて、他力本願で過去の自分を捨てるってセコいよね。転生して見た目が変わった人って、「自力で何とかする」が嫌い?他者にドーピングをさせてもらわないと、何にもできないのかな?


「さぁ・・・超可愛く転生したこと無いから、虚しいかどうか解んない」

「真田さんはさ、超可愛くなりたいの?」

「そりゃぁ・・・まぁ・・・櫻花おうかっちみたく超可愛く・・・」

「僕は・・・真田さんは今のままで良いと思う」

「えっ!?」

「・・・あ゛っ!」


 多分、今、僕、すっごい恥ずかしいことを言っちゃったよね?でも、嘘や誇張やチャラ男発言じゃなくて本音です。


「あたしも・・・尊人くんは、今のまんまで良いと思う」

「・・・ありがとう」

「あたしの方こそ・・・ありがと」


 真田早璃が好きです。彼女が僕の旅に付いてきて、最初の頃は「なんで?」とか「僕をコキ使いやすいのかな?」なんて思ったけど、今は、彼女から好意を持ってもらえていることが解ります。

 正直な気持ちを伝えたい。でも「死亡フラグ」になると嫌だから、今は伝えない。

 僕が一番叶えたい願いは「現実世界に戻っても、真田早璃と、今と変わらない関係を続けたい」なのかもしれない。


「尊人くんっ!飛び降りるから受け止めてねっ!」

「はぁ?」

「降り方が解んないの」

「なら、なんで登ったの?」

「全く根拠は無いんだけど、そのうち尊人くんが来るかな~って思って。

 尊人くんなら、下で受け止めるの拒否らないでしょ」

「うん・・・まぁ・・・」


 立ち上がって、「僕の胸に飛び込んでこい」みたいな感じに、真田さんに向かって両手を広げる。


「いいよぉ~!」

「いくよっ!それっ!」


 真田さんが枝から飛び降りる。前回は眼を逸らしてしまって、脳天にニードロップを喰らった。

 でも今は、彼女から眼を逸らさない自信がある。他の誰でもない。真田早璃だけはキチンと受け止めたい。

 檄の次のシーンは開戦にする予定だったけど、「前夜はヒロインとのツーショットが定番」と考えた。どうせなら、早璃との出会いシーンを伏線っぽく回収しようってことで、木のシーンにした。


 異世界転生や追放物や現代ダンジョンに対する各キャラの感想は、

 尊人は、基本的に「面白くない」と思っているので見ない。智人から「コレが面白い」「アレを見ろ」と進められたけど、最初だけ見てリタイアした。

 智人はガチで見ており、「自分もこうなりたい」と想像を膨らませている。

 早璃は中学の頃は見ていたけど、バスケでの挫折を経て早璃自身の価値観が変わり、受験勉強で一時的に離れて、高校になってから久しぶりに見たら、「面白い」と感じなくなった。

 吉見は勉強の合間の気分転換で「頭をカラッポにして見られる子供向け」として見ている。運動音痴という劣等感を抱えているので、一定の理解度はある。ただし、吉見の性格上、「アレがおかしい」「この展開は御都合主義すぎる」「この主人公はバカ」と考えたり、「自分ならこうする」などと、やや捻くれた見方をしている。

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