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42-4・檄

 真田さんと輪島さんに手を引っ張られて、作戦会議のテントから西都市セイ全軍の前に引き摺り出され、大柄な楠木くんに肩車で持ち上げられる。


「みんな聞けっ!超大将からのお言葉だっ!!」


 武藤さんが西都市セイ軍を煽って注目を集める!


「武藤さんっ!『超大将』ってなに!?」


 スピーチしなきゃならないなら、予め言ってもらわないと困る。予め言ってもらえても、満足なスピーチなんてできないだろうけど。


「ゴチャゴチャうるせー!さっさと喋れっ!」

「え~~~~~~~~~~~」


 15000人の西都市セイ兵達が僕を見つめる。この人達から僕は「チートのオマケ」と認識されているはず。そんな小者が、偉そうに演説する資格なんてあるのだろうか?ヤバい。今更退けないことくらいは解るけど、雰囲気に飲まれ、緊張して声が出ない。


「尊人くん。

 今まで頑張ってきたこと・・・今の気持ち・・・それを喋れば良いんだよ」


 所在なさげにしている僕の手を、真田さんが握ってくれる。おかげで少し落ち着いた。

 楠木くんの肩車の上で、セイ軍を見渡して深呼吸をする。


「みナSAんっ!!」


ざわざわざわざわ

 いきなり噛んだ!少し落ち着いたからって、「皆の前で話すのが苦手」という性根は変わらない。


(今まで頑張ってきたこと・・・今の気持ち)


 心の中で真田さんからのアドバイスを復唱して、小さく咳払いをしてから、もう一回深呼吸をする。


「ぼくはっ!

 ・・・いや、皆さんは僕を凄いって思ってくれるのかもしれませんが、

 僕はなんにもしてません!

 なんにもできなくて、大切な仲間をたくさん失って・・・

 直ぐに動けなくなって、素晴らしい仲間達に助けてもらって・・・

 ずっといっぱいいっぱいで、どうにかして今まで生き残ってこられました!」


 こんな演説は違うって解っている。もっと気が利いていて、格好良くて、みんなの気合いを入れることを言わなきゃならないのは解る。でも、調子の良いことを言って虚勢を張っても、どうせ直ぐにボロが出る。下手をすれば同じ演説中で矛盾発言をしてしまうかもしれない。

 だから、良い格好はしない。ありのままを喋る。僕にはそれくらいしかできない。


「こんな僕が、皆さんを戦いに駆り出してしまいました!

 痛いのは嫌だし、死ぬのは怖いって解ってるけど、皆さんを巻き込みました!

 それなのに、僕には勝ったあとのビジョンなんて、なんにもありません!

 秘境者の僕は、本来の世界に帰りたいだけなんです!

 現実世界に帰って、現実世界で大切な人達と過ごしたいんです!

 もの凄く個人的な理由で戦うんです!・・・だからっ!」


 普通なら、こんな身勝手な演説をしたら呆れられちゃうんだろうな。シリーガルさんやバクニーさん、白騎士さん達や他の幹部さん達が聞き入ってるのは、「この世界の人は単純」だからかな?ブラークさんが黙って聞いているのは、僕を特別扱いしてくれているからかな?演説が終わってから、上府さんに怒られたらどうしよう?藤原組のみんなは、僕と同じで「帰りたい」から、何も文句を言わないのかな?


「だから、皆さんは皆さんのために戦ってください!

 戦いが終わったら、僕等は本来の世界に帰ります!

 武皇討伐の名誉なんて、僕等には必要ありません!

 この世界の歴史に名を刻むのは秘境者の僕等ではありません!皆さんです!

 ここに集まってくれたセイの皆!

 呼応をしてくれたノスとサウザンとアーズマの皆!

 本当の英雄は貴方達です!

 貴方達が新しい時代を作って、歴史に名を残すんです!」

「おーーっっっ!」×たくさん


 良かった、シラケてない。僕の気持ちは、皆に届いているっぽい。セイ軍の皆が声を上げ、拳を振ってくれている。


「貴方達が、モーソーワールドを作るんです!

 それは大変な重荷かもしれません!

 この戦いで、たくさん傷付いて、たくさん死んじゃうかもしれません!

 それでも良いって思うなら・・・

 大切な人を守りたいなら・・・

 その覚悟があるのなら・・・

 故郷のためを思うなら・・・

 僕と共に戦ってください!」

「おーーーーーっっっっ!!!」×たくさん


 さっきよりも大きな歓声になった。ブラークさんは拍手をしている。上府さんはサムズアップをしてくれた。藤原組の仲間達は拍手をしたり叫んだりして、僕に呼応してくれている。


「うおぉぉぉぉっっっっっ!!!

 モーソーワールドばんざぁぁぁいっっっ!!!!」


 皆の歓声に煽られてテンションが上がり、雄叫びを上げる。


「おーーー--ーっっっっっっ!!!!!ばんざぁぁっっいっっっ!」×たくさん


 雄叫びに呼応して、皆が、地面を揺らし、帝都に轟くほどの歓声を上げる。



 ・・・で、十分後。


「『モーソーワールド万歳』は、なんか違うくね?」


 真田さんからツッコミが入った。


「アタシも思った!最後の最後でハズレたなぁ~って」

「なんか、場の勢いで強引に押し切ってたけどさ」

「何故か、ブラークさんの隣にいた私がブラークさんに謝っちゃった」

「ちょっと調子に乗りすぎちゃったな」


 由井さん、長野さん、上杉さん、ツカさんから追い撃ちをかけられる。


「35点!最後の余計な一言が無ければ85点だったんだけどな」


 武藤さんからは赤点を喰らった。


「私が源君なりに頑張って演説したと思うよ」

「途中までは源らしい。ラストは源らしすぎる。

 まぁ、根が典型的な小心者なんだから仕方無いだろ」


 輪島さんと我田さんがフォローをしてくれる。・・・我田さんのはフォローになってるのかな?


「次は気を付けます」

「次は無いでしょ。

 また、こんな大軍の前で演説しなきゃならない状況があったら困るよ」


 吉見くんから冷めたツッコミが入る。


 テンションが上がりすぎてワケが解らなくなって言っちゃったけど、確かに「モーソーワールド万歳」は余計だったかもしれない。もう少し場慣れをしておかないと、肝心なところでミスるんだな~。現実世界に帰ったら気を付けよう。



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