42-1・帝都進軍
帝都と各都市の間にある4つの宿場町は、大昔には帝都が各都市を支配下に治めるための補給基地だったらしい。
いつもなら、南宿場には帝都の兵が常駐しているんだけど、今は空白地帯だ。
「チートは宿場町が重要拠点ってことを知らないのかな?」
南都市師団&紅武者は南宿場に入り、伏兵に警戒して2小隊を残し、残りは通過をして帝都に向かう。
「個人の武力のみで“いきなり武皇”だからね。
この国の成り立ちを何も学んでいない可能性は高いよね」
僕の疑問に真田さんが答えてくれる。僕は定位置の「真田さんの駆る馬」の後。
「余程のバカじゃなければ宿場町を抑えた方が有利ってことくらいは、
学んでなくても解るよ」
長野さんの駆る馬の後ろに乗る吉見くんが、会話に参加をしてきた。
「ならなんで、チートの兵がいないんだろ?
急激な権力譲渡だったから、兵をキチンと掌握できていないのかな?」
「どうなんだろ?
戴冠式の時に、帝都兵の他に、白と黒と赤と青の兵もチートに与してたよね。
『帝都まで攻め込まれても返り討ちにする自信がある』と考えた方が良いかも」
「・・・でも、それこそが、吉見くんの『理想通り』でしょ」
「うん。平原みたいな広い場所は、無差別に大技を発動させるチートが有利。
こっちは、数を把握できなくなるほどの犠牲者を出してしまうだろうからね」
野戦ではチートに近付くことすら難しい。可能な限り狭い場所、遮蔽物がある地形で戦いたい。
一都市だけが軍事行動を起こした場合、チートは迎撃のために平原に布陣をする。そして、広大な戦場では、こちらに勝ち目はない。だからこそ、4都市が一斉に決起をして、チートが籠城戦を選択するように仕向けたのだ。
紅武者(藤原組含む)中隊と師団(赤騎士連隊含む)が、サウザンから出陣をした兵力。北都市&西都市&東都市からも、同じくらいの派兵がされることになっている。
言うまでもなく、サウザン防衛や、村への駐屯もあるので、全軍が帝都に向かっているわけではない。
「オメー等、結局、馬に乗れないままかよ?
今まで、どんだけ馬に乗る練習をする時間が有ったと思ってんだ?」
我田さんから「お約束」で皮肉られる。
「申し訳ありません。なんか後回しにしちゃいました」
この軍事行動を最終決戦にしたいと思っている。だから、僕自身、馬に乗れないまま、この世界での生活が終わるとは思っていなかった。
「現実世界に戻ったら、ちゃんと練習します」
「おせーよ!」×たくさん
周囲から一斉にツッコミが入った。
藤原組15人のうち、馬に乗れないのは僕と吉見くんと由井さんと若林さん。僕は真田さん、吉見くんは長野さん、由井さんは武藤さん、若林さんは輪島さんの駆る馬の後に乗せてもらっている。平家さんは馬に乗れるんだけど、何故か北条くんと相乗りしてる。
ちなみに吉見くんは、「空き時間に何度か練習したんだけど、落馬して馬にバカにされた」らしい。
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道中では2回ほどモンスターに遭遇したけど、「兵の肩慣らし」扱いで討伐された。この世界に来たばかりの頃は「驚異の対象」だったけど、今となっては「通りすがりのヤク○に喧嘩を売られる可哀想な人」に見えてしまう。
「明日に備えてシッカリ休め」
その日は、予定通り、帝都平原に抜ける手前の森で野営をする。
森の北側出口まで来て眺めたら、帝都の南門の外側に布陣した赤一色の大軍(連隊くらいかな?)が見えた。チートに与した南都市兵だ。武藤さんにモブ扱いされた「エンジ」って人もいるんだろうな。
「正真正銘の戦争・・・」
今までは、特に気にしたことが無かったけど、防壁の内側には等間隔に高い櫓があって、壁を壊すために近付く兵を、上から狙い撃ちできるようになっている。雄大な建造物が、今は恐怖の対象にしか見えない。
「いやだな~。やっぱ、戦争になっちゃうんだね」
真田さんが隣に立って、敵軍を眺める。
「チートだけやっつけて終わりってワケにはいかないか~。
でも、あの人数なら、こっちが突撃すれば直ぐに降参してくれそうじゃね?」
真田さんは「南門の守備兵があれしかいない」と思ってるのかな?「ボケ」と解釈して「なんでやねん」「そんなわけあらへんがな」とツッコミを入れるべきかな?
「きっと防壁の内側には同じくらいか、それ以上の兵が待機してるよ」
「そっかぁ~。そりゃそうだよね」
真田さんほど甘くは考えてなかったけど、防壁と守備兵を眺めていると「僕の考えも甘かった」と感じずにはいられない。戦争なんてしたこと無いけど、僕等は帝都内に突入するために手前の守備兵を叩かなければならない。当然、防壁や門は堅固で簡単には破れないし、内側からは増援が来るだろうし、内側に入れば沢山の兵に囲まれてしまう。
勢いで同盟を成立させて、宣戦布告をして、4都市決起まで漕ぎ着けたけど、この戦いでどれほどの人が傷付き、どれくらいの人が死ぬのだろうか?この世界の人は、「脱落しても現実世界に帰れば復活できる」わけではない。
「僕達が諦めれば誰も傷付かずに済むのかな?」
自軍を平気で犠牲にするチートを酷いと思ったけど、「沢山の人を巻き込む」って意味では、僕もそれほど変わらない。
「尊人くん、また悩んでるの?」
「悩んでるってより、『ホントにこれで良かったのかな』って思ってる」
「・・・だよね」
真田さんの顔も緊張している。これはゲームや模擬戦ではなく、本当の殺し合い。僕等が行動をした結果なんだけど、平和の中で育った僕等が、「当然」と受け入れられる状況ではない。
「さりちゃん、ミナちゃん、行くよ!」
「ああ、うん」
野営と守備の布陣が整った時点で、中隊長クラスと藤原組は作戦会議のために、帝都の西で待機をしている西都市の陣営に行くことになっている。
由井さんが呼びに来たので、仲間達と合流をして馬に乗り(正確には真田さんの馬の後に乗せてもらい)、北西へと移動をする。
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