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些細な疑問③三神一体

「大人って凄い。

 漠然と僕等を助けてくれたわけじゃなくて、

 僕等では考えもしなかったずっと先のことまで考えていたんですね」

「いや、わしゃ時代の流れに乗って、新しい時代に舵を切るてごしをするだけ。

 全ては、オマエ等がノスとセイの同盟を成立させたおかげじゃのぉ」

「・・・いや・・・それは、多分、僕達の功績じゃない・・・です」


 複雑な心境になってしまった。確かに僕等は、シリーガルさんとバクニーさんを北都市ノスの子息達に合わせて同盟のキッカケを作った。でもそれは、荒廃の間隙を突いただけ。西都市セイのホーマン公が暗殺されたのは、智人チートを得た彼が増長したから。北都市ノスのゴククア公はチートの刺客に暗殺された。西都市セイの軍事侵攻で北都市ノスは大きく力を失った。シリーガルさんとバクニーさんはチートに捨てられて傷心だった(多分)。


「僕等はチートが踏み荒らしたものを、可能な範囲で拾い上げただけ」


 結果論になってしまうんだろうけど、新政権の土台は「チートが転圧」をしているのだ。


「旧態の『破壊』と言う意味で、チートはこの世界に選ばれた存在?」

「破壊、創造、維持・・・『三神一体』の考え方か。

 確かにそう言う意味では、武皇はこの世界の歴史に刻まれるじゃろう。

 だがな、ミナちゃんよ。

 英雄の時代は、その英雄が倒れた瞬間に求心力を失うて瞬く間に崩壊をする。

 英雄時代の末路は、現実世界での歴史の中で、様々な形で証明されとる」

「・・・そうですね」


 1人の圧倒的な英雄が時代を作る。でも、圧倒的すぎて後継が育たないので平穏は長続きせず、その英雄が力を失った瞬間に、次の権力争いの時代が始まる。


「争いに戻さんために、英雄にゃあ次の時代を作る前に退場してもらう。

 破めがれた物はおさめにゃあならん。

 破壊者の破壊と、拾い集めた物を次の担い手に託す。

 それが、ミナちゃん達の役割じゃ」

「・・・僕達の?」

「時代を作るなぁ武皇だけじゃない。

 真反対の立場で、ミナちゃん達も時代を作りよるんじゃ」


 僕は必死で藻掻いていただけ。この世界の「時代を作っている」って認識なんて全く無かった。


「深刻に受け止めるな、尊人!オマエの悪いクセだぞ!」

「・・・うん」

「もし、クーデター失敗して、現実世界に戻れなくなったら、

 私はカミフさんの愛人を希望しまーす!」


 武藤さんが軽口で爆弾発言をする。場の空気を和ませてくれたんだろうな・・・多分。


「うわぁっ!ムッキー、大人っ!パパとエッチOKなの?」

「おうっ!カミフさんなら全然ありだ!」

「アタシゎ、パパと手を繋ぐなら、今でもOKだよ!」

「私はホッペにチューまでならできるぞ!」

「がっはっはっは!可愛い娘共じゃ!お小遣いをやろう!」


 上府さんが目尻を垂らして鼻の下を伸ばし、シリアスモードからエンコーモードに変わった。


「尊人、どーせまた、余計なもん背負って、脳ミソをパンパンにしてんだろ?

 外で頭冷やしながら、真田に慰めてもらえ」

「ああ・・・う、うん・・・」


 武藤さん、読心術とかあるの?脳ミソがフリーズ状態で、真田さんにぼやきたいと思っていました。


「そ、それじゃ僕等はこれで・・・」


 聞きたいことは一通り聞けたので、お言葉に甘えて僕と真田さんは退席をする。



「あたしさぁ、無自覚に無双するキャラって大っ嫌いなんだよね」


 上府屋敷に戻る道中で、真田さんが唐突な発言をする。


「ん?急になに?」

「アニメとかでさ、そ~ゆ~主人公っているじゃん」

「そんなバカなキャラがいるの?」

「凄いことやって見せて、廻りは驚いてんのに、

 本人は凄いことやった自覚が無いってパターン。

 それまで人に会ったことが無いくらい世間知らずなら仕方ないけど、

 そうじゃなかったら、凄いことやってるのに自分で気付かないなんて

 頭が悪すぎるでしょ」


 自分の行動で凄いことが起きてるのに、凄いことしてる自覚が無いなんて、確かに「著しく非常識」「社会不適合者」「脳ミソが残念」としか思えない。


「アレってさ、普通の人は努力してもできなかったり、

 超頑張ってやっとできるようになったことを、

 『僕は努力しなくてもできるから凄さが解りませんよー』ってヤツでしょ。

 そんなイヤミなキャラ、絶対に友達いないよね」

「そんな人が現実世界にいたら、友達はいないというか、

 友達がいたら、無自覚な無双が嫌味ってことを教えるだろうね」

「あたしには、努力ができない人や努力を拒否した人が、

 努力をしている人を嘲笑うのが目的としか思えなくてさ」


 基本的に、僕は「極端な御都合主義系」を見ない。現実逃避しすぎていて、見ていると虚しくなってしまう。そ~ゆ~主人公に憧れるほど愚かではないと言うか、もう少し現実が見えているつもりだ。


「無自覚は嫌味・・・か」

「あたしが言いたいこと、解った?」

「うん、ありがと」


 僕は必死で藻掻いていただけ。この世界の「時代を作っている」って認識なんて全く無かった。でも、僕等の行動で時代が動き始めている。


「あれぇ?僕、なんにもやってないのに時代を動かしちゃいました~」

「あははっ!尊人くん、キモっ!」

「だよね。それじゃ、無責任すぎるよね」


 吉見くんみたく「自分の行動で世界がどう変化しても興味が無い」と割り切っているなら、「無自覚」というか「無関係」を通せる。でも、僕は少なからず「この世界の行く末」を心配している。それなら「この世界の転換期」に対して「無自覚」ではいられない。


「お礼は、現実世界に戻ったあとで、高級お寿司屋さんの特上セットね」

「無理っ!ファーストフードのバーガーセットで勘弁してっ!」

「シェイク付きね!」


 必要以上に背負わなくても良いんだろうし、僕等にできないことは大人に任せても良いけど、沢山の人を巻き込むんだから、キチンと「自覚」をして向き合わなければならないんだよね。

 モーソーワールドに永住をしない尊人達は、「この世界の行く末」を見ることは無い。だから、本編中ではなく番外扱いで描きました。

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