些細な疑問①行く末
これは、宣戦布告~決起の間に起きた些細な出来事。
「あれ?」
部屋で休憩をしていたら、ちょっとした疑問が湧いた。
「どうした?」
一緒に休んでいた吉見くんに声をかけられる。
「あの・・・ふと思ったんだけどさ・・・」
チートの討伐が成功すれば、僕等は現実世界に帰る。その後、この世界ってどうなるんだろう?チートが現実世界に帰る=戴冠したばかりの皇がいなくなる。
「急にそんなことになったら、この世界の人達、パニックにならないかな?」
「うわぁ~・・・今、それを考えちゃう?」
吉見くんは呆れ顔だ。そんなに変な疑問かな?
「あのさ・・・なら聞くけどさ、
チートが武皇になって、この世界の何が変わると思う?」
指摘されて、改めて考える。チートって、この世界のトップになって何がしたいんだろ?
「彼の場合は承認欲求を得たいだけでしょ。
混乱に乗じてトップになっただけ。先皇がマヌケすぎただけ。
まぁ、クラス内の役員すらやらない彼では、
国どころか人も満足には治められないだろうけど」
メッチャ辛辣な意見だ。でも、チートに国を治めるスキルがあるとは思えない。
「『クラス役員みたいな面倒なことやってるのバカじゃね?』
彼って、それを言っちゃうタイプだよね。
それでいて、役員の失敗を笑いものにするタイプ」
「・・・うん・・・まぁ」
何度か、チートが「○○は××委員に向いてない」なんて言ってるのを聞いたことがある。
「そーゆー人って、自分が失敗して笑われたくないから逃げてるのに、
『自分がやらないこと』を頑張ってる人を格下扱いしてるでしょ」
「そうなの・・・かな?」
ちなみに、僕は役員の失敗を笑うことは無いけど、僕も学級委員みたいな統率力が必要な役員はやったことありません。「失敗して笑われるのが怖いからやりたくない」ので、聞いてて耳が痛いです。
「クラスの40人前後すら掌握できない人が、国を掌握できるわけがない。
矢面に立つことから逃げる人に、仲間を守る度胸があるとは思えない」
「だったら、チートはどうやって・・・」
「高校生が小学生の輪に入って、知識と腕力でリーダーになる。
小学生は、自分達にはできないことができる高校生を称賛する。
そんな人がいたら、源君はどう思う?」
「そりゃ・・・痛々しいと・・・」
「特別な力を得た現実世界の人間が、この世界でイキるってのは、そーゆーこと。
同じ土俵で努力するんじゃなくて、反則スキルを持つってのは、そーゆーこと。
チートがしているのは、そーゆーこと。
そんなキャラをアニメや小説で見る分には一定の爽快感があるけどさ、
この世界なら簡単に掌握できるかもしれないけどさ、
僕が『その立場になる』って考えたら、思考が負け組すぎて嫌だね」
「・・・そこは僕も同じ。
たまたま手に入れた力で『凄い人アピ』はしたくないかな」
「だから、黒騎士のブラークさんは必要以上の力の行使をしない。
上府さんは権力の行使をしてるけど、それは転移者を救うため。
僕等が知る先人の転移者は、分を弁えているよね」
なるほど、ブラークさんや上府さんなら、この世界のトップに君臨する力があるだろうに、それをしていない。ブラークさんは「北の勇者」って勇名を嫌がっている。転移者なら「ちょっとやればできる」ことを褒められても嬉しくないからだ。身近なブラークさんで例えてもらえたら腑に落ちた。
「まぁ・・・『チートがいなくなった後で、この世界がどうなるか?』は、
この世界の人が決めること。
現実世界に帰る僕等には関係が無いことだけどね」
「うわぁ・・・それ言っちゃう?」
吉見くんの言ってるのは「すっごい正論」だ。僕だって、チートが「一介の食客」だったなら、「いなくなっても大勢に影響は無い」で済ます。でも、頂点に立ったチートを取り除くからには、一定の責任があるように思えてしまう。
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「・・・と言うワケなんだけど、どう思う?」
「尊人くん、優しいなぁ~。そこまで考えてたんだ?」
「優しいわけじゃないと思うけど・・・」
部屋で寛いでいた真田さんを庭に呼び出して、隣り合わせでベンチに座ってから、同じ質問をしてみる。
「あたしは吉見くんの意見に賛成かな」
「それって、ちょっと無責任じゃないかな?」
「主人公がラスボスを倒して、あとは放置。
場合によっては、ラスボスが武力と恐怖で、それなりに支配をしてるのに、
トップと幹部を一掃して、あとは『知ったことではない』って感じ」
「え!?共産主義国で指導者と幹部だけ抹殺して、一切フォローしない的な?
下手をすれば、ボスを倒す前より国が乱れて治安が悪くなるんじゃね?」
「でも、だいたいそんな感じなの。
武力侵攻より、荒廃した国を立て直す方が大変なのに、スルーだよ。
ゲームとかアニメって、主人公は無責任なんだよね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ラスボス倒した人が王様になるってパターンもあるけど、
帝王学を学んだことがない脳筋が“いきなり王様”は無謀でしょ」
「ファンタジー世界の国って、そんな簡単に治められるの?」
無責任でOKらしい。正論ではないけど、理路整然(?)と論破されてしまった。・・・ただし、僕は「ゲームとかアニメの主人公」ではないんだけどね。




