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41-5・僕の覚悟

 上府さんに呼ばれて武器庫に行く。そこには、カミフ私兵団用の紅い甲冑(和式の鎧)と紅マント、藤原組専用の“下がり藤”の紋が刺繍されたアームバンドが用意してあった。


「どうして、ただの商人さんが、こんなに沢山の鎧を?」

「カチコミ用じゃ。

 わし達のようなカタギの商人は、

 いつ、他の組の連中と抗争になるか解らんけぇな」

「なんかもう、『一般の商人さんではない』ってのを隠す気無いですよね?」


 僕は、動きやすさを重視して、三種類の鎧から「腹当」と呼ばれる肩当ての無い胸当てタイプを選んで、鉄板の貼ってあるハチマキを巻く。マントを着けると格好良いんだけど、魔法の火が引火したら大変なことになりそうなので迷ってしまう。


「真田さん、マント着るの?」

「あたしの場合、マントが無いと紅組を主張できないからね」

「・・・だね」


 真田さんには高性能の“銀の胸当て”があるので紅甲冑は不要。決戦を前にして、装備をランクダウンさせるバカはいない。

 楠木くんとツカさんは大鎧を、大半が大鎧より軽装で動きやすい当世具足を、吉見くんを僕と同じ肩当てタイプを選ぶ。


「あれ?龍造寺先生は装備しないんですか?」


 龍造寺先生はヘソ出し&生足全開ミニスカの服に紅マントを羽織るだけ。


「私の特殊能力を効果的に発揮するためには、ある程度の露出が必要なの」


 龍造寺先生の富醒は「チャーミング」。お色気や投げキッス&ウインクを喰らった相手は、先生の熱烈なファンになって命がけで守ってくれるらしい。「先生のクセになんちゅー不健全な特殊能力?」と思う反面、「二十代前半なんだから、まぁいいか」というか「女子高生が投げキッスやウインクで男をたぶらかすよりは健全か」と思ってしまう。



 装備の獲得後、僕だけが吉見くんに呼ばれて自室に戻った。


「ねぇ、源君。

 さっきは皆がいたから言わなかったけど、

 もう一つ『覚悟』を確認しておきたい」

「もう一つ?」


 改まった吉見くんを見て萎縮をしてしまう。「チートに対して非情になる」以外にも、まだ何かが足りないのだろうか?


「真田さんのこと、どう思ってる?」

「急になに?」


 またこの質問だ。以前「よく解らない」と答えたはず。


「今の質問に答えたくなかったら、それでも良いよ。

 君が今日まで戦い抜いてきた理由って、『自分のため』ではないよね?」


 答えは「YES」。自覚はある。


「君が生き抜けた根底は、真田さんを守りたかったから。

 どう見ても非好戦的な君が戦いを選び続けたのは、傍に真田さんがいたから。

 真田さんの存在が君を強くした・・・だよね」

「・・・うん」

「君は、『自分のため』に力を発揮するタイプではない。

 『自分のため』になった途端に欲が無くなるタイプだと思ってる。

 それを承知で、あえて言わせてもらう。

 チートとの戦いは、『真田さん』ではなく『自分のため』に戦ってほしい」

「どういうこと?何かが違うの?」

「大違いだよ。僕が同じだったから解る。

 織田さん救出のために動こうとした君は、

 織田さんを失った時点で次の行動を起こせなくなったよね?」


 僕が櫻花おーちゃんを失って戦場のど真ん中でフリーズをしたように、吉見くんは沼田さんを見殺しにしてしまった時点で気持ちが折れた。


「それでも、源君は、僕よりも先に動き出した。

 僕は君と再会しなければ、多分、起ち上がれなかった。

 僕と君の違いは何なのか?

 その答えは、君にはもう1人、守りたい人がいたから・・・でしょ?」

「・・・うん」

「真田さんの存在感は、君に勇気をくれる。

 でも裏返せば、真田さんを失った時点で君は終わる。

 君は動けなくなるか、忘我して満足な判断ができなくなるか、どっちかになる。

 僕が君の敵なら、君より先に真田さんを脱落させる。

 僕ですら君の最大の弱点に気付いているんだ。

 チートが気付いていないと思う?」


 智人チートは真田さんを憎んでいる。僕の変化を「真田さんにそそのかされた所為」にしている。


「今までなら、隣にいる真田さんをフォローしながらでも戦えたかもしれない。

 でも、チートの火力を前にして、それができる?」

「多分・・・難しい」

「真田さんに『源君の弱点だから戦場に出るな』と言って聞いてくれると思う?

 それが可能なら、一番早いけど・・・」

「多分、無理。『弱点扱い』なんてされたら、真田さんはムキになって反発する」

「なら、僕が言ってること、解るよね?」


 智人チートに会うために旅立ち、真田さんを守るためにチートから離れ、真田さんと一緒にいるために旧藤原組にしがみつき、藤原くんの指示通りに動き、櫻花おーちゃんを助けたくてチートと戦い、真田さんの涙を見て打倒チートを決めて、今は武藤さんや吉見くんの判断で動いている。

 新生藤原組のリーダー選出で、僕は皆から主体性の無さを見抜かれて、真リーダーは真田さんになった。


「うん、解った」


 返事はしたけど凄く不安だ。全ての行動目的が「他人依存」僕が、今更、自分に軸足を置いて動けるのだろうか?



「マジで?助かったじゃん!」


 ルービイ騎士の偵察隊からの情報が入る。チート軍は南都市サウザン攻略のために出陣をしたが、南宿場ミドメリデまで来て帝都に引き返したらしい。


「でも、なんで?まだ、タイミング的には、一斉決起の情報は入っていないはず」


 後に知った。僕等の宣戦布告と、チートの南征軍編成を知った北都市ノスが、一斉決起を依頼する早馬が到着する前に決起をしたため、チートは慌てて帝都に引き返したのだ。

 さすがはブラークさん。僕等は、ブラークさんに助けられて、「帝都決戦までは無傷」を維持できた。


 この日、北都市ノスから一日遅れて、南都市サウザン西都市セイ東都市アーズマが、一斉に「打倒チート」の決起をする。 


 尊人が中心になってチート討伐の戦力を整え、一斉の決起をしたところで第6部終了。

 次が最終ブロックになります。

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