41-2・武藤さんの覚悟
宣戦布告組(僕&真田さん&吉見くん&長野さん&由井さん&輪島さん)が疲れ果てていたので、南宿場で一泊をすることになった。
・・・で、今現在、一室で椅子に踏ん反り返った武藤さんの眼前で、宣戦布告組が揃って正座をさせられている。
「王様に宣戦布告・・・先に帰ってきた津田達に聞いて焦ったぞ!
なんで、私に何の相談も無しに、そんなにオモシレーことをしてんだよ!
表向きかもしんねーけど、私は藤原組のリーダーだぞ!」
「申し訳ありませんでした」×6
武藤さん、メッチャ怒ってる。さっきは「敵なら怖いけど味方だから頼もしい」と思ったけど、味方でも怖い。
「ギリギリだったけど助かったよ。援軍要請に応じてくれてありがとう」
吉見くんのこの発言で、事前に援軍の手配がされていたことを僕は初めて知った。
「いつ援軍要請なんてしたの?」
「帝都に宣戦布告に行くって決めた時だよ。
たった6人で逃走するなんて、いくらなんでも無謀すぎるでしょ。
先にサウザンに戻る津田君達に、武藤さんへの言伝を頼んでおいたんだ。
源君がチートの思考を予測してくれて逃走距離は稼げたぶんと、
援軍が到着するタイミングが噛み合って、ギリギリセーフ・・・
かなり危険な賭けになってしまったけどね」
「尊人、吉見、それはチゲーぞ」
「・・・ん?」×2
援軍はだいぶ前に南宿場に到着しており、あと1~2時間は帝都側に接近することが可能だった。つまり僕等は、楽々と安全圏に入れる余裕があった。しかし面白イベント(チートへの宣戦布告)に参加できなくてムカ付いていた武藤さんは、「お灸を据えてやる」「絶体絶命になるまで放置だ」と言って、ギリギリまで紅甲冑隊の布陣をしなかったのだ。
「うわぁ~」 「マジか?」 「むとちゃんドエス」
「これに懲りたら、二度とオマエ等だけで勝手すぎる行動なんてするな!」
「申し訳ありませんでした」×6
「頭を垂れて、もっと大きな声でっ!」
「申し訳ありませんでしたっっ!!」×6
武藤さんが怖すぎて、理詰めが得意な吉見くんが全く反論をできない。でも、正座中の6人は、みんな解ってる。武藤さんの本心は「面白イベントから除外された不満」ではない。無謀な行動をした僕等を、本気で心配していたからキツい口調なのだ・・・多分。
「それから・・・」
足が痺れてきたんだけど、まだ話は終わってないっぽい。
「アイミとは、私がケリを付ける」
武藤さん、強気な表情のままなんだけど、一瞬だけ寂しそうに歪んだように見えた。
「・・・んぇ?ムッキーとアイちゃん、親友でしょ?」
由井さんが最初に質問をしたけど、全員が同時に同じ疑問を感じていた。
「ああ、一番のダチだ」
「それなのになんで?」
「会うまでは、『あいみがチート側』なんて信じらんなかったけどさ、
『フミヤを追い込んだ』っての、アイツ否定しなかった。
悲しいけど、事実は受け止めるしかねーだろ」
「ちょっと待ってよ!親友同士で戦うなんて、そんなの悲しすぎるっ!」
正座解除の許可は降りていないんだけど、堪えきれなくなって立ち上がって、武藤さんに詰め寄る。
「はぁ?尊人がそれ言う?
オマエは、親友のチートを倒すつもりなんだろ?」
「・・・うん」
自分に置き換えたら理解できた。「智人とは戦いたくないけどチートが許せない」という矛盾。チートは真田さんを憎んでいる。そして僕は真田さんを守りたい。
誰かがチートを倒してくれれば、「悪いことをしたんだから倒されて当然」と思いながら、「チートを倒した○○は残酷」と感じるだろう。そっちの方が気持ち的には楽だ。でも、そんな自分が狡いと感じる。どう転んでも戦わなければならないなら、他人に依存をして他人の所為にするのではなく、僕自身で背負いたい。そう思っている。
「私も背負ってやるよ。
親友討伐ってキツい役割をオマエ1人だけに背負わせるつもりは無い」
武藤さんの本当の本心。僕の立場に置き換えたことで、多分、僕だけが理解できた。援軍がギリギリセーフになったのは、武藤さんの演出ではない。追走隊の中に安藤さんがいて、武藤さんは布陣を迷っていた。僕等が追い付かれずに安全圏まで逃げられれば、「安藤さんと対峙をせずに済む」と思っていた。だけど僕等は逃げ切れず、追走隊に飲み込まれそうになったので、僕等を守るために安藤さんと敵対をする覚悟を決めて援軍を出したのだ。
「ごめん、武藤さん。ホントにありがとう」
人にだけ辛いことを押し付けるんじゃなくて、自分もその立場に立つ。いつまでも迷ったりせず、必要ならば瞬発的にその判断ができる。
これがリーダーの資質。武藤さんはカラッポのまま、承認欲求の為に威張ってるタイプではない。武藤さんがスクールカーストで不動の1軍トップを張っている理由が解った。
「なんだ、急に?気持ちわりーな」
武藤さんは悪態を付きながら少し寂しそうに笑う。多分、「僕が武藤さんの苦しい胸の内に気付いた」ことに、武藤さんは気付いた。
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