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41-1・紅い甲冑隊

 輪島さんと由井さんの乗る馬、長野さんと吉見くんの乗る馬、走る真田さんと僕の順に森を抜けて平原の道へ。正面に南宿場ミドメリデが見えるんだけど、遠くに感じる。


「ダメだ!追い付かれるっ!」


 赤&青の混合4小隊のうちの4騎が、森を抜けた途端に左右に分かれて馬を加速させて、最後尾を走る僕と真田さんを追い抜いていった。


「えっ?なんで?」

「マズいっ!逃げ込む場所が無くなる!」 


 先行する4騎は手柄を焦って単独行動をしているわけではない。先回りをして、宿場町の入口を閉じるつもりだ。

 追走隊が林道で付かず離れずの距離を保ったのは、「急げば逃げ切れる」と思わせて、森の中深くに逃げるのを防ぐ為。最初から、林道では馬の足を溜めて、平原で「袋の鼠」にするつもりだったのだ。


「長野さんっ!輪島さんっ!急いで!先に行って入口の確保を!」


 長野さんと輪島さんが馬を加速させる。だけど、馬を操る技術は騎士の方が上。しかもこちらは2人乗りなので、どんなに馬を煽っても勝てるわけがない。

 宿場町まで1㎞くらいのところで追い付かれ、追い抜かれ、先行をされてしまう。


「くっ!ダメかっ!!」


 走りながら振り返ると、紫の甲冑を着た安藤さんを中心にして、赤&青の混合の40騎が僕等を包囲するように大きく広がって近付いてきた。

 そして正面では、先行した4騎が宿場町の門に到達をした。


「僕が安藤さんを抑えるからっ!」

「尊人くんっ!?」

「残りの騎士は、真田さんと長野さんで返り討ちにできるだろうからっ!」


 ジョーカーは安藤さん。スキルシールさえクリアすれば、あとは真田さんと長野さんが頑張ればなんとかなる。安藤さんに剣を向けた時点で・・・安藤さんのスキルシールの有効範囲に踏み込んだ時点で、僕の特殊能力は封じられて、押し寄せる騎士達に抵抗できなくなるけど、命に替えても安藤さんだけは道連れにする。


「全滅をするよりはマシだよね!」


 覚悟を決め、背負っている先生の剣を抜いて、振り返ろうとしたその時・・・


「尊人くんっ!南宿場ミドメリデの入口がっ!」


 そのあとに続く言葉が「閉じられた」しか無いと思いながら視線を向けたら、紅い甲冑(和風の鎧)の人達が続々と宿場町から出て来るのが見えた。


「何であんなに沢山?・・・先回りされていた?」


 既に小隊クラスが宿場町に配置されているなら、4騎が先行をする必要なんて無いんだけど、動揺していた僕はそんな思考には至らない。


「え?どうなってるの?」


 中央で見覚えのある旗が掲げられる。


「・・・下がり藤?」


 紅甲冑隊は、先行していた4騎を打ち倒し、こちらに押し寄せてきて輪島さん&由井さんと長野さん&吉見くんの乗る馬を内側に招き入れ、僕&真田さんと擦れ違いながら、追走隊の前に出た。


「・・・味方なの?」


 その中に、紅甲冑を装備して馬を駆る楠木くんと、相乗りしたツカさん&若林さんの姿がある。下がり藤の旗を持った武藤さんが、僕の真横で馬を止めた。安堵で脱力して倒れそうになるのを堪えて、馬上の武藤さんを見上げる。


「待たせたな」

「来るって思ってなかったから『待って』はいなかった・・・かな」

「こーゆー台詞、一度、言ってみたかったんだよな」

「待ってなかったけど助かったよ!来てくれてありがとう!」

「へへっ!言いたいことは山ほどあるが、あとは任せて休んでろ!」


 紅甲冑隊と追走隊が50mくらい間を開け、足を止めて睨み合う。紅甲冑隊は、総勢で20人くらい。数では赤青混合の追走隊が勝っている。


「我はルービイ騎士団の中隊長のエンジ!

 貴公等はカミフ殿の私兵とお見受けする!」


 追走隊の中から、リーダー格の赤騎士が出てきた。


「我々は同郷の貴公等と争う気は無い!

 このたびの進軍に南都市サウザンを脅かす意図は無い!

 逃走者を引き渡してくれれば・・・・」

「おとなしく帰れっ!そうすりゃ、今回だけは見逃してやるよ!

 この挙兵は、カミフさんの独断ではなく、南都市サウザンの総意だぞ!」 


 赤騎士のエンジが喋っている途中なんだけど、武藤さんが紅甲冑隊の前に出て怒鳴り声を上げる。


「何だ、貴公は?たかが私兵の分際で正規兵の我々・・・」

「うるせー、モブ!」

「なにっ!?」

「エンジンかヘンジンか知らねーけど、オマエになんて話してねー!

 故郷への忠誠よりも自己都合を選んだお調子者は引っ込んでろ!

 私は安藤愛美に話しているんだ!」


 武藤さんが、赤青混合4小隊の後に控えていた安藤さんを睨み付ける。名指しをされた安藤さんが追走隊の前に出て、武藤さんを睨み付けた。


「・・・ムツキ」

「意地っ張りなオマエは、降参なんてしねーんだろ?」

「当然だろ!」

「選ばせてやるよ!

 『ここで終わる』と『持ち帰って考える時間をくれ』のどっちかをな!」

「なにを偉そうにっ!?」

「私は藤原組の2代目だ!『偉そう』じゃなくて『偉い』んだ!

 不満なら、下っ端共を嗾けるんじゃなくて、オマエが向かって来いや!」


 武藤さんの安藤さんは共に藤原グループ。つまり、スクールカーストの1軍チーム。藤原くんがトップで、近藤くんと武藤さんがナンバー2なので、必然的に女子のトップは武藤さんになる。


「むとちゃん・・・格好いい」

「・・・てゆーか、怖い」 


 安藤さんの表情が強ばっている。武藤さんと安藤さんは仲良しなんだけど、安藤さんでも、武藤さんのドスが利いた威嚇は怖いらしい。味方だから頼もしく感じるけど、「武藤さんが敵で、僕が怒鳴りつけられている」と考えたら、萎縮している安藤さんの気持ちが凄く解る。


「オマエの特殊能力・・・相手の特殊能力を封じるんだろ?

 それで、フミヤ(藤原くん)を追い込んだんだってな。

 次は私の特殊能力を封じてみろよ!

 非戦闘系の能力だから、封じられても何の影響も無ーけどな!」

「・・・くっ」


 安藤さんが眼を逸らした。喧嘩やガンの飛ばし合いなんてしたことの無い僕でも解る。この勝負は武藤さんの勝ちだ。


「ムツキに免じて、今日のところは退いてやる!」


 安藤さんが馬を回頭させて、赤青混合4小隊の中に引き返す。リーダー格の赤騎士が不満そうにして寄って行った。ヘンジンさんだっけ?


「参謀っ!?」

「詰みだ。退くんだよ!」

「しかし、今頃、チート様が手配した大隊が、こちらに向かっているはずです」

「遅ーんだよ!ソイツ等が来る前に、私等が全滅する!

 智人のバカめっ!あの時に、私の提案を聞いて中隊を預けてくれれば・・・」


 この場にいて、戦闘系スキルを持っているのは、僕&真田さん&長野さん&楠木くん&ツカさん&若林さんの6人。安藤さんがどの程度把握しているのかは解らないけど、スキルシールで全てを封じるのは不可能。兵の数は追走隊の方が多いけど、藤原組&紅甲冑隊の方が有利なのだ。・・・てか、交戦したら、巨大若林さんの一踏みで決着が付く。


「・・・ムツキ」


 安藤さんが馬の尾をこっちに向けたまま顔だけ振り返って武藤さんを見つめる。


「なんだよ?」

「アンタが、源と組んでるとは思わなかった」

「フミヤを裏切ってチートの舎弟になったアイミの意外性よりはマシだろ」


 安藤さんと追走隊は去って行く。僕等は助かったのだ。


「仕掛けりゃあ全滅させられるでぇ?」

「見逃すって言ったんだ。私に恥をかかすな」


 紅甲冑の1人が進言をするけど、武藤さんは取り合わない。安藤さんの背を見送る武藤さんの表情は、少し寂しそうに見えた。



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