40-5・安藤さんの追走
追ってきた白騎士数人を蹴散らして、輪島さんがいる待ち合わせ場所へ。素早く馬に飛び乗って(正確には真田さんの後ろに乗せてもらい)、急いで帝都の南に脱出する。
「中隊レベルで追って来るかと思って警戒してたんだけど・・・」
帝都の南門を通過した直後に、長野さんが駆る馬の後ろに乗っていた吉見くんが振り返る。
「追っ手はかかるだろうけど、多分、時間的な余裕はあるよ。
馬に無理をさせちゃうけど、今のうちに距離を稼ごう」
こちらの馬は2人ずつ乗っている。追っ手に対しては、どうしても足が遅くなってしまう。だから、大規模な追っ手に接近される前に、最低でも帝都と南都市の中間にある南宿場まで逃げ切りたい。
「源君、パレードの序盤に拘ってたよね?もしかして関係ある?」
「うん。チートの性格を考えればね」
智人は、突発的な想定外に対してフリーズをしやすいので、瞬発的な対応ができない。
「あの場にいた騎士や親衛隊に指示を出せば、脱出に苦労しただろうけど、
チートにはその指示は出せないって予想してた」
智人は、プライドが高いので、セレモニーを中断するような選択はしない。イライラしているんだけど平静を装い、パレードが終わってから大規模な追っ手をかける。
一定の予想はできたけど「絶対」と断言するほどの自信は無かったので、皆には説明をしなかった。
「源君、チートの行動を予測してたんだ?凄いじゃん!」
「・・・全然凄くないよ」
こんなことで褒められても嬉しくない。今回の作戦で、僕は親友だった智人の脆い部分を徹底的に突いた。
「凄いんじゃなくて、卑怯なだけだよ」
チートを倒さなきゃ前に進めないのは解ってるけど、その目的のために自分がドンドンと「嫌なヤツ」になっているような気がして、心が苦しい。
智人が変わって、僕も変わって・・・いや、現実世界にいたら発揮せずに済んだかもしれない僕の汚い部分が顕在化してきて・・・
「こんな世界、大っ嫌いだ」
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想定外が発生していた。南宿場まで、あと5㎞くらいの林道で、安藤さんに率いられた赤騎士2分隊と青騎士2分隊に追い付かれる。
「まさか、安藤さんが追走してくるなんてっ!」
赤騎士と青騎士まで、何割かはチートに与していたことに驚いたけど、それ以上に、安藤さんの存在が想定外すぎた。チートの性格は読み尽くしていたけど、安藤さんの行動力を予測できなかった。
瞬発的な対応力や危機管理能力はチートより安藤さんが上。パレードを中断してチートの面子を潰すことはせず、菅原さん達3人の誰かに前衛を任せ、まだ待機中の赤騎士と青騎士から追走隊を編成したのだろう。
「攻撃できるのが僕だけじゃどうにもならない!」
飛ばせる攻撃は、真田さんの魔法と長野さんのトルネードスピアと僕のファイヤーウインドミルなんだけど、真田さんと長野さんは馬を走らせることに専念しなければならない。
振り返りながらウインドミルを発動して火の玉を飛ばすんだけど、威力が弱すぎ&ノーコンすぎて追走隊の速度を僅かに遅らせることしかできず、それどころか容赦なく赤騎士と青騎士の放つ魔法が飛んでくる!狭い林道なので、脇に回避するほどのスペースが無い!
「まずいっ!」
一発の火の玉が、最後尾を走る僕と真田さんの乗った馬に着弾!
「きゃぁぁっ!」 「わぁぁっっ!」
馬が横転をして、僕と真田さんは地面に投げ出される!
「真田さん!」
全身が地面に打ち付けられて痛いんだけど、真田さんの手を引いて立ち上がらせて、走って逃げる!
「他の奴らはどうでも良い!ソイツ等2人を捕らえろ!
智人が望んでいるのは、ソイツ等だけだからな!」
安藤さんの指示が飛ぶ!追走隊の・・・いや、チートの狙いは僕と真田さんだけだ。
「早璃!」
「凪ちゃん、私は良いから逃げてっ!」
長野さんが救助のために馬の向きを変えようとしたけど、真田さんが先に行けと叫ぶ。騎士の4分隊だけなら、僕と真田さんと長野さんで返り討ちにできる。だけど、安藤さんのスキルシールで特殊能力を奪われたら、僕等は騎士1人にも苦戦するレベルにまで無力化をしてしまうのだ。
吉見くんは、「追走隊に追い付かれる」を前提にして、由井さんの特殊能力で逃げ切る作戦を立てていた。言うまでもなく、安藤さんに追われることは想定していない。
状況次第では、安藤さんは、チート以上に厄介なジョーカー的な存在なのだ。




