40-2・戴冠式前日
翌日、上杉さん&北条くん&平家さん&我田さんは、司&若林さんを護衛にして一足先に南都市へ。僕は真田さん&長野さん&由井さん&吉見くん&輪島さんと一緒に帝都に向かう。
実際には、宣戦布告要員の僕&真田さん&由井さん、参謀の吉見くんと護衛の長野さん、テーレベール組は最低限の人員が望ましいんだけど、それでは馬に乗れる人が2人で、乗せてもらう人が3人になって、誰かが徒歩移動(逃走時に人力はキツい)になる。そんなわけで、輪島さんにもテーレベール組に加わってもらうことになった。
智人の戴冠式までは、あと3日。朝早く東都市を発ったので中継点の東宿場には昼前に到着した。
「今日中に帝都入りをして二泊して当日を迎えるか、
ここでもう一泊して発つか、どっちがいいかな?」
「帝都に長居はしたくないけど、当日が迫るほど厳重な警備体制が敷かれて、
帝都に入ることすら難しくなるかもしれない。
今日中に行って、住人の中に紛れ込もう」
その日のうちに帝都まで強行する方針に決定した。
道中では、真田さんの提案で、壁門での検問を予想して「受け答え」の予習をする。
「帝都には何をしに来たんですか?」
「観光です」
「ただの観光?明後日が戴冠式と知らなかったんですか?」
「知りませんでした」
「怪しいっ!しょっぴけっ!」
「マジかっ!?・・・戴冠式と知っていました」
「なら観光ってゆーのは嘘なんですね。怪しいっ!ひっとらえろ!」
「まだダメ?・・・なら、観光じゃなくて戴冠式を見に来ました」
「オマエのようなヤツに戴冠式を見る価値は無い!切り捨てろっ!」
「全部ダメじゃん!どーすりゃいいの!?」
怪しくない回答を思考していたら、長野さん(後に吉見くん)が馬を並走させて会話に割り込んで来た。
「馬に相乗りをしている人は奥様ですか?」
「奥さんではありません」
「無礼者!八つ裂きにしろ!」
「えっ?なんで!?」
「源君、模擬検問をするなら、もう少し真面目にやりなよ」
「僕はまじめにやってるつもりなんだけど、全部却下されちゃうんだよ~」
その後も、様々な模擬検問をしたんだけど、町中には簡単に入ることができた。
「警備、ザル?この世界の人、やっぱりバカなのかな?」
「バカなんだね~」
「バカすぎだよね」
真田さんが振り返って首を傾げ、由井さんと長野さんが答える。
「そればかりじゃないだろうね。
チートまで、この世界の住人と同レベルのバカってことはないから」
吉見くんの言う通り。西都市と北都市の婚姻を知っているであろうチートが、警備のザルっぷりを放置しているとは思えない。
「警戒する発想が無いんじゃなくて、沢山の人に晴れ姿を見せたいんだよ」
智人は承認欲求が強い。「来るもの拒まず」で、多くの人を集めていると解釈するべきだろう。
「観衆の中にテロリストや暗殺者がいても、返り討ちにする自信があるんだね」
おそらく、当日の護衛が分厚くてチートに近付けない、そして、警備兵に足止めされている間に、チートの特殊能力で仕留められることを意味している。
「チートは平気で大技を連発して部下ごと葬るからね。
・・・でも」
「んへへっ!」
由井さんと目が合い、由井さんが誇らしげに笑う。僕等には、厳重な警備を完全無視できる特殊能力の持ち主がいるのだ。
都市の中央すぎず、端っこすぎず、繁華街と郊外の中間くらいの宿に泊まる。明後日は、戴冠式の見物客で、この辺の宿もいっぱいになるのだろうか?
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日が変わって、戴冠式までは2日に迫る。パレードの経路は公表されていないけど、軍の上層には伝わっているのだろう。町のあちこちで、紫色の鎧とマントを装備した騎士や、黄親衛隊が動き廻っている。
「紫の人達はアジット親衛隊。チートの直属なんだってさ」
「いつの間に、そんな組織を作ったんだろ?」
つまり、紫親衛隊はチートのパレード経路を知って視察をしている可能性が高いってことだ。
「あ~あ~・・・直属の親衛隊って・・・」
「しかも、既存組織とは違うネーミングでオリジナリティーのつもりかな?」
「何様のつもりなんだろ?だいぶ勘違いモードに入っちゃったね」
真田さんと長野さんと由井さんが、遠目に紫親衛隊を眺めながらチートをディスる。
「『何様』たって、王様だからね。王様なら部下くらい要るでしょ」
ちょっと可哀想なので、チートの立場で少しだけフォローしておくけど、内心では「調子に乗りすぎでしょ、智人」と感じてしまった。
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戴冠式の前日、午前中は町に出て紫親衛隊の動きを観察する。
「だいたい、昨日と同じだね」
「これで、町中の警備場所は絞れそうだ」
午後からは、個室に集まって帝都の地図を開き、吉見くんが中心になって警備位置の確認とパレード経路の推測をする。
「紫色の親衛隊が動き廻っていたのは、帝城に繋がる東西南北の中央街路全てで、
帝城からだいたい半径500mの範囲になる」
「民衆を集めてお披露目するには充分な範囲だね」
「こことここ、こっちのこの位置と、ここ、それから、この場所、こっちもかな」
吉見くんが地図上で順番に数ヶ所を指で示す。僕等は、吉見くんの指を目で追いながら、何の場所か解らなくて首を傾げた。
「高い建物があるのに中央街路から死角になりやすくて、
狙撃手が潜みやすそうな場所だよ。
つまり、警備が厳重になるポイントだね」
「えっ?そんなところまでチェックしてたの?」
「当然でしょ。
要人暗殺のポイントだから、現実世界のSPは絶対に見逃さないよ。
まぁ、この世界の親衛隊が気付いているかどうかは解らないけどさ」
吉見くん、ちょっと怖い。もしかして要人の狙撃を考えたことがあるのだろうか?お願いだから、急に寝返って、僕を狙撃しないでね。そんなことされたら、僕、100%暗殺されてしまうよ。




