40-1・ヘイト獲得の提案
「4日後にチートが帝都で戴冠式をするらしい。
僕等の決起も急いだ方が良いね」
「・・・4日後?」
明日~明後日の2日間をかけて南都市に戻って仲間を集結させるつもりだったけど、吉見くんが得た情報を聞いて予定を変える。
「見に行こうよ」
「真面目に言ってんの?」
僕の提案に仲間達が驚き、真田さんが真っ先に反対をする。
「もちろん真面目だよ」
「チートだけじゃなくて、チートに従う軍隊もいるんだよ」
「どれくらいの兵や騎士がチートの支配下にいるのか、
帝都でどれくらいの支持を集めてるのか、知っておく必要があるよね」
「それはそうだけど、わざわざ危険地帯に行かなくても・・・」
吉見くんだけはウンウンと頷いて聞いてくれる。
「どうせ行くなら、宣戦布告をして来ちゃおうよ」
「え゛っ!?」
吉見くんの提案に度肝を抜かれた。遠くからコッソリと見るくらいのつもりだったのに、存在を晒して敵意の意思表示をしろと?
「そんなことしたら、真っ先に僕等が攻撃対象に・・・」
「標的にされるのが目的だからね」
西都市と北都市の同盟(婚姻)の情報は、もう帝都に届いているだろう。チートがその状況をいつまでも放置するわけがない。
「明確な敵対勢力のノスと、自分の地盤だと思っていたセイ。
源君なら、どちらを先に潰すと思う?」
「まだチート人気が根強いセイだろうね」
西都市で反チートを掲げているのは政権と軍部だけ。チートがセイへの軍事侵攻をしたら、チートを崇拝する民がチートに靡いて、セイは混乱に陥る。
反チートの起点となるセイが潰されたら、東西南北4都市は総決起をする前に瓦解をしてしまうだろう。
「そうなる前に・・・チート自らがセイ攻略の陣頭に立つ前に・・・
チートが間違いなく帝都にいるうちに・・・
チートの敵意を西都市から逸らさなければならない。
誰が最適任か、源君なら解るよね?」
ここが正念場。既に覚悟を決めている鬼副長の冷静で大胆で、最短距離の提案。
「・・・う、うん。わかる」
チートの大事と小事を混同させられる駒。司や我田さんでは、チートは眼中に入れない。指名手配中の吉見くんでも、チートに最優先扱いはされないだろうな。凄まじい重圧がかかってきた。
「・・・僕だよね?」
「死んだと思っていた源君が生きていて、堂々と宣戦布告をする。
僕には、これ以上に、チートの神経を逆撫でする手段なんて思い付かない」
「ちょっと待ってよ!そんなの危険すぎるっ!
あたし達をここまで纏めてくれた尊人くんを、
真っ先に脱落させるつもりなの?」
真田さんは反対をして庇ってくれる。だけど、真田さんの意見を聞いて、僕の動揺は収まった。
仲間達と各都市をここまで纏めたのは僕ではない。真田さん、吉見くん、武藤さん、シリーガルさんとバクニーさん、ブラークさん、皆がいたから。
仲間集めの看板(表向きのリーダー)は武藤さんが背負っている。軍事決起の象徴はシリーガルさんとバクニーさん。実質的な指揮はブラークさんやホワイさんが執るのだろう。仲間達を集めたのは、チートに対抗するため。そして、真田さんは転移者の真のリーダーであり「僕をそそのかした張本人」として、チートから目の敵にされている。
僕の発案で皆を危険に晒している。僕だけが安全地帯で高みの見物をする気なんてない。
「真田さん、ありがとう」
「・・・へ?」
いつも真田さんが、ヘタレな僕の背中を押して、勇気をくれる。僕が「僕らしさ」を残したまま、少し背伸びをしてやらなければならない方向を教えてくれる。
「やるよ」
「ちょっと待ってよ!本気で言ってるの!?」
「もちろん本気。
自分で言うのは生意気な感じがするけど、僕ならチートのペースを乱せる」
認めたくないけど、多分、智人は僕を格下扱いしている。チートは、小バカにされたり面子が潰されることを凄く嫌う。死んだはずの僕が目の前に現れて面子を潰したら、確実にチートの神経を逆撫でできる。
「だったら、あたしも帝都に行く!」
「なんで真田さんが?」
「尊人くんと一緒に、チートへの宣戦布告するために決まってるでしょ!
あたしまで登場したら、逆撫で効果倍増だよね!」
真田さんも死んだと思われてる。真田さんはチートから嫌われている。未だに僕と真田さんが一緒にいて、しかも宣戦布告なんてしたら、チートは「また僕がそそのかされた」と大激怒しそう。間違いなく「逆撫で効果倍増」だろうな。
「止めても聞かないよね?」
「当たり前でしょ!尊人くんが宣戦布告しないってなら、あたしもやめるけど」
「危険だよ」
「ジェンダーレス!『女子だから危険なところはダメ』とか言わないでよね!」
「この件は『男女差別』とはチョット違う気がするんだけど・・・」
いつもそうだ。真田さんは、僕1人を危険地帯には行かせない。いつも一緒にいてくれる。僕の性格的に、単独行動なら「もうダメ」「諦めよう」だっただろうに、真田さんを犠牲にしたくないから「死ねない」「一緒に生還しなきゃ」って思って行動をする。真田さんがいることで、僕の死亡フラグは折られているんだ。
「真田さん、ホントにいつもありがとう」
真田さんと合流して60日以上が経過をして、僕にとっての真田さんは「一番大切な人」になっている。
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