39-5・東都市
朝一番でペイイスを発って、遭遇したモンスターを蹴散らし(巨大若林さんが踏み潰し)、夕方には東都市に到着した。
「僕等が転移者ってことはバレないように気を付けようね」
アーズマは、最も秘境者狩りが盛んな都市。青騎士団には痛い思いをさせられている。今ならば返り討ちにできるだろうけど、可能なら騒ぎを起こしたくない。
「ヤバっ!」
建物の後や中に隠れていた青騎士達が集まってきて、対応する余裕が無いまま囲まれてしまった。
「なんで?正体バレてる?」
正面を塞いでいた青騎士達が左右に避けて、馬に2人乗りして、鉄仮面で顔を隠した隊長格っぽい青騎士が近付いてきた。
「・・・ん?」
更に、騎馬の後から、鉄仮面で顔を隠した8人の青騎士が駆けてきて、隊長格の騎馬の周りに並ぶ。華奢な体格からして、馬に2人乗りをしてるうちの手綱を引いている青騎士は女性、8人の青騎士も女性かな?
「あのさ・・・」
8人のうちの1人は、「小学生が大人の鎧を着てるのか?」ってくらい体格に合っていない。
「悪趣味な冗談はやめてよね、吉見くん」
2人乗りの後ろに乗ってる青騎士に向かって話し掛ける。
「あれぇ?解っちゃった?」
「手綱を引いてて、一番様になってるのは長野さんかな?」
騎士団なら馬なんて大量に配備されてるだろうから、馬が足りなくて2人乗りをしてるなんてありえない。それに、騎士のくせに馬に乗れないってこともありえない。
「もうちょっと驚いてくれてもいいのにっ!」
「そっちのチビッコ青騎士は由井さんでしょ?」
「んぇぇぇっっ!?もしかしてアタシのこと愛してるから解っちゃった!?」
馬を駆ってる青騎士、後ろに乗ってる青騎士、チビッコの青騎士が鉄仮面を脱ぐ。予想した通り、長野さん、吉見くん、由井さんだった。
こうなると、「残りの7人が何者なのか?」にも興味が湧いてくる。
「ミコト様っ!おひさしゅうございます!」
鉄仮面を脱いだ青騎士は、見たことのある女性だった。西宿場の令嬢・アンさんかな?
残り6人の青騎士、嫌な予感がしてきた。
「・・・げっ!」
その他6人の青騎士も一斉に鉄仮面を脱ぐ。全員が見たことのある女性。ミドオチスの7令嬢だ。ただし、いつもはドレスの色で自己主張をしている量産型なので、全員が青い鎧を着ていると誰が誰だか解らない。
「お会いしとうございました!」
「私達、ミコト様のお役に立てましたわ!」
「褒めてくださいませ!」
「ええいっ!モブの分際で尊人くんに寄るなっ!」
いつも通り7令嬢が馴れ馴れしく群がってきたけど、いつも通り7令嬢を大っ嫌いな真田さんが追い払う。
「なんで、西宿場の皆さんが東都市に?」
馬から降りて寄ってきた吉見くんが、質問に答える。
「話せば長くなるんだけどね・・・」
「西都市で僕等と分かれて、東都市に向かう道中の西宿場周辺で、
モンスターに襲われていた7令嬢に遭遇して助けたら懐かれた・・・とか?」
「正解。さすがは源君、離れていても恋人達の行動をを熟知しているんだね」
「恋人じゃねーし!」
何故か、僕より先に真田さんが否定をする。
「それで、『尊人くんの“おつかい”でアーズマに向かってる』って説明したら、
『ミコト様のお手伝いがしたい』って言って付いてきてくれてね」
指名手配をされている吉見くんにとって、チートがいる帝都の通過は難関だった。だけど、「東観光に行く令嬢集団の従者」という変装をできたおかげで怪しまれずに通過できた。
東都市到着後は、7令嬢のおかげで、領主のノーキン・クレジー公爵と直ぐに面会できて、その後の晩餐会で、7令嬢の接待でクレジー公とか青騎士団の偉い人を大いに喜ばせる。
「申し訳ありません、ミコト様。クレジー公に見初められてしまいました」
「私は騎士団長に『妻に』と所望されました」
「ミコト様への愛を胸に秘め、私はアーズマに残ります」
「ミコト様のことは一生忘れません」
昨日の晩に至るまで、4日連続で晩餐会が開かれ、7令嬢の接待(お持ち帰り込み)でクレジー公とか青騎士団の偉い人が骨抜きにされ、チート討伐の決起を承諾してくれて今に至る。
「バカ7令嬢でも役に立つことがあったんだ?」
「アンさん達に感謝しなきゃだね。
・・・てか、吉見くん、7令嬢を連れてきた以外に何にもしてないじゃん」
「うん・・・勇んでアーズマに来たのに、全く活躍しないうちに話が纏まった。
源君の恋人達に大変な役を押し付けちゃってゴメンね」
「尊人くんの恋人じゃねーし、本人達は喜んでるんだろうから、
気にしなくて良いんじゃね?」
凄まじい御都合主義が発動して、東都市が味方になった。ただし、僕は吉見くんのせいで7令嬢からフラれたっぽい。まぁ、あんまり悔しくはないけど。




