39-4・懐かしの北東村
北東村に到着した。
約60日前、この世界のことが何も解らない状況で辿り着き、仲間達と合流をして生活をして、なんとなくこの世界のことを把握して、真田さんと2人で旅立った場所。ペイイスは、僕と真田さんにとって「始まりの村」になる。
「変わってないね」
「そりゃそうだよ」
「・・・でも」
「・・・うん」
ちょっぴり感傷に浸ってしまう。町並みは何も変わっていないんだけど、僕等の立場が激変をしている所為か、妙に懐かしく感じる。
「もう、へっきー(平家さん)達と合流してるかな?」
北東村には、司&我田さん&輪島さん&若林さんが4日前に入っている。
「きっと、一緒だよ」
ツカさん達には、直ぐに合流できるように「僕達がお世話になった宿」に泊まるようにお願いしてある。
「お~!来たな!」
「遅いよぉ!」
「あと1日待って来なかったら、先に帰ろうかと思ってたんだぞ」
みんな、せっかち過ぎる。たった4日間で西都市と北都市の同盟の叩き台を作ったんだから、もう少し褒めてほしいな。まぁ、実質的には2日間で成立して、ブラークさんとの戦いで1日、爆睡で1日を経過させちゃったんだけどね。
「久しぶりだね!」
「元気そうだね」
北条くんと平家さんは3日前に接触して、一緒に行動をする決断をしてくれたらしい。
「えぇっ!?一緒に住んでたの?」
「共同生活してた方が便利だったから・・・」
「今は俺等と合流してリハビリ中だけどな、
発見した時なんて、お互いに『この世には君しかいない』って感じだったぞ」
「ずっと一緒にいたなら、チューとかチュー以上とか進展しちゃった?」
「ほぼ転移直後から一緒にいるのに、進展ゼロの早璃ちゃんがそれ聞くの?」
平家碧流。出席番号29番。勉強の成績は中の下くらい。話したことが無いのでよく解らないけど、陽キャタイプ。
北条保清。出席番号30番。勉強の成績は中の上くらい。司と仲良し。メガネをかけて理屈っぽくて吉見くんとキャラが被るけど、頭脳は吉見くんが上で、運動神経と陽キャラ度は北条くんが上。
「2人はどんな特殊能力を使えるの?」
「私の富醒はウォーターっていうんだよ」
「水で攻撃するとか?」
「水と一体化をする能力」
「武器や服は一体化できないけどね」
何故か、北条くんが補足を入れる。裸になって水と一体化をするってこと?ちょっと見てみたい。・・・てか、何で北条くんが知ってんの?見たの?
「僕の富醒はアトミックボム。
目に見える範囲なら、どこでも好きな場所に爆発を発生させられるらしい」
「・・・『らしい』?そんなに凄い能力なのに使ったこと無いの?」
「一度使っちゃうと、半径100キロ以内、
100年間は草木一本生えない死の大地と化してしまい、
その後20年間は死の雨が降り続けるらしいからね。
恐ろしくて使えないんだ」
「へ・・・へぇ~・・・・・す、すごいね」
チートの特殊能力より破壊力がありそうだけど、チートに使ったら、僕等どころか、この世界まで消滅してしまうってことね。北条くんが「とりあえず使ってみよう」的なことをしない常識人で良かった。
「オープン!」
目の前に「16」という数字が表示される。これが、この世界に生存している同期生のうち、僕が接触をした人数。まだ接触をできていないのは、智人のところにいる菅原さん&前田さん&和田さんの3人になった。
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明日の朝には、東都市に発つ。北東村では少しゆっくりしたかったけど、そんな悠長な状況ではない。
夕食後、宿の外に出て木の柵に腰を降ろし、見慣れた町並みを眺める。
『一つだけ約束しろ。
オマエは大切な友達だ。
行った先で結果がどうなったとしても、必ず帰ってこい』
旅立つ前日に、柴田くんから言われた言葉を思い出す。
「約束通り帰ってきたよ」
帰ってきたのに柴田くんがいない。あの時は、そんな状況を一欠片も想像していなかった。仲間だと思っていた人の裏切りで柴田くんと綿本さんが脱落して、この世界の過酷さが身に染みた。安藤さんが、その出来事に絶望して、強者におもねて身の安全を確保したこと、批難はできない。僕だって同じ状況に陥っていたら、「今の僕」にはなれなかったはずだ。
「な~に、たそがれてんの?」
真田さんが寄って来て、僕の隣に座る。僕は木の柵に腰を降ろしても地面に足が付くんだけど、背が低い真田さんは足をブラブラとさせる。
「村の近くにある大木のことを懐かしんでいたの」
「大木?」
「うん、真田さんが降ってきた大木」
僕と真田さんの、この世界での初接触。大木の枝から飛び降りた真田さんを受け止めようとして、顔面にニードロップを喰らった時のこと。
「うわっ!それ言うっ!?」
真田さん、ぷく~っと膨れっ面になるんだけど笑ってくれてる。
「ごめんごめん、嘘です。
柴田くん達のこと思い出して、ちょっとたそがれてました」
「・・・だよね。絶対にそうなんだろうな~って思った」
「あの頃は、まさか僕達が、この世界の転換期に立ち会うなんて、
想像してなかったよね」
「うん、とにかく、このワケの解んない世界で生きるのに精一杯だったね。
あっ!・・・必死なのは今も変わらないかな」
このままこの世界にいれば、真田さんと仲良しのままでいられるのかな?時々、そんなことを考えてしまう。でもダメ。それは無し。本来の世界に帰りたい。
「ねぇ、真田さん」
今の藤原組のリーダーは真田さん。南都市で“下がり藤”の旗を掲げた時から疑問・・・というか、興味を感じていたことがある。
「皆の意見を『現実に帰る』でまとめたリーダーは願いを叶えられるけど、
その時が来たら、真田さんはどんなお願いをするの?」
「・・・ん?」
真田さんは「コイツ何言ってんの?」みたいな顔をして首を傾げる。
「ifの話をしても意味無いんだろうけどさ、ちょっと興味があって」
「いやいや、『イフ』とかなんとかじゃなくて、なんであたしの願い?
絶対、あたしじゃないでしょ」
あれ?真田さんがリーダーに就任してなかったっけ?表向きのリーダーを引き受けてくれた武藤さんに権限があるのかな?
「でもまぁ、しいて言うなら、あたしの願いは『皆との日常を取り戻す』かな。
もう一個の願いは、そこそこ叶ってるし」
「叶ってるの?なんだろう?『魔法を使う』とか・・・かな?」
「ブー!ハズレ!・・・わかんない?」
真田さんが、柵の上で腰を動かして距離を詰め、微笑を浮かべて僕を見つめる。ヤバい、メッチャ可愛い。「もしかしたら?」と希望的観測はあるんだけど、「大ハズレ」だったら凄まじい赤恥をかくというか、明日から真田さんの顔を見られなくなりそうって言うか、希望的観測が「大当たり」だったとしても、どう接したら良いのか解らなくなって真田さんの顔を見られなくなりそう。・・・それに
「ねぇ、真田さん。後の気配、気付いてる?
さっきから、すっごい視線を感じるんだけどさ」
「・・・ん?」
一緒に振り返る。宿の窓にへばり付くようにして、司&我田さん&輪島さん&若林さん&北条くん&平家さんがこっちを凝視していた。
「げっ!」
「もしかして、気付いてなかったかな?」
見られてるのは感じていたけど、まさか、全員とは思わなかった。これは「大当たり」と「大ハズレ」のどっちに転んでも、みんなから茶化されそうだ。
ちょっとだけ良い雰囲気になってたけど、あっという間にシラケムードになり、真田さんの「叶ってる願い」の話題は終了をする。
危うく「現実世界に戻ったら櫻花ちゃんを支える」って大義が吹っ飛ぶところでした。
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ウォーター
使用者:平家碧流
水と一体化して水を操る。服は水化をしないので、全裸にならなければならない。
アトミックボム
使用者:北条保清
目に見える範囲なら、どこでも好きな場所に爆発を発生させられる。半径100キロ以内、100年間は草木一本生えない死の大地と化してしまい、その後20年間は死の雨が降り続ける。危険すぎて使い道が無い。




