39-3・寝る子は育つ?
夜が明ける前に北都市に戻ったため、「出奔」は誰にも気付かれること無く、ブラークさんは「今まで通り」に戻れた。いや、同盟の仲介者として、今まで以上に重用されるんだろうな。
「う~~~~~~~~~~~~~ん」
まぁ・・・それはそれとして、泥のように眠って、起きたら夕方だった。
「せっかくシリーガルさんとバクニーちゃんが会いに来てくれたのに、
尊人くん、いくら起こしても起きないんだもん」
「・・・マジかぁ~~~?」
ノス公の御子息達が「義母様に婚礼のご挨拶に行きたい」と言い出して、今朝のうちにシリーガルさん&バクニーさんと一緒に西都市に旅立ってしまった。
「2人ともキラキラしてて、すごく幸せそうだったよ」
牛のマスクを被って追い回したのが、シリーガルさん&バクニーさんとの最後の絡みになってしまうのだろうか?さすがに、この展開はちょっと寂しい。
「今日は北西村に泊まって、
明日の夕方に西都市入りかな?」
シリーガルさん&バクニーさんがセイに戻った時点で、同盟が成立に向けて本格的に動き出す。・・・はずなんだけど、ちゃんと話を進められる人がいるんだろうか?ちょっと不安。まぁ「同盟を組むのは良いこと」と言ってあるから大丈夫かな?
「現時点で、この婚姻がチートの耳に入っているかは解らないけど、
西都市で広まれば、確実に伝わるだろうね」
足元(西都市)が崩れた。しかも敵勢力(北都市)が絡んでいる。この事実を知れば、チートはどちらかの都市に派兵をするだろう。潰すのはどちらでも構わない。
「潰すなら、西都市の方が簡単かな?」
北都市にはブラークさんがいる。真王になったチートでも、簡単には制圧できない。一方、西都市の中枢はチートを見限ったけど、市民の間ではチート人気は根強い。侵略をすれば、セイは混乱に陥り、チートに味方をする者も出てくるだろう。
「セイが制圧されれば、今の祝賀ムードは瞬く間に白けてしまう。」
つまり、同盟締結とチート討伐軍挙兵の前に、計画が瓦解してしまう。
「そうなる前に、東都市と南都市も動かさなきゃ」
サウザンは、武藤さんと楠木くんが、紙富豪の上府さんと一緒に、領主の説得に動いているはず。
「一番不安なのはアーズマだね。説得の叩き台がゼロからのスタートだからね」
東都市には、吉見くんと長野さんと由井さんが一足早く入っている。
「今度こそ、ここでやるべきことは終わったはず。
明日の朝、北都市を発とう」
ノスとアーズマの中継点になる北東村には、北条くんと平家さんがいる。先に行った司&我田さん&輪島さん&若林さんとは、もう合流をしているだろう。
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翌日、真田さんと上杉さんが馬を駆り、僕はいつも通りに真田さんの後ろに乗せてもらい、上杉さんからは「え?こいつ馬に乗れないの?」的な冷ややかな眼で見られ、北東村に向かう。その道中でゴブリンの群れと遭遇した。
「上杉さんは下がってて!」
馬を上杉さんに預け、数歩前に出て構える。
「富醒・ピースエクスペリエンス!!」
僕が手札を選択する間に、真田さんがモンスターに突進する。真田さんが先陣を切って出鼻を挫き、次に僕が突っ込んでダメージを与え、2人でトドメを刺す。これは、ザコ敵と戦う場合の、僕と真田さんの間での暗黙の了解だ。
「富醒・レンタル!!」
いつも通りに、目の前に浮かんだカード化された特殊能力の中から、機動力系のアジリティを待機状態にして、ウインドミルとアーマーファンブルを見比べる。牽制を兼ねた遠距離攻撃仕様と、問答無用で叩き切る接近戦仕様のどちらにするか。敵はホブゴブリン&ゴブリンなんだから、接近戦仕様で充分だろう。
「・・・あれ?」
アーマーファンブルを選んだところで異変に気付いた。いつもなら、2つの特殊能力を選んだ時点で選択肢(残りのカード化された特殊能力)は消えるのに、今日はまだ表示されている。
「まだ一個しか選んでなかったっけ?」
確認をしたら、残っているのはリターンとルーラーとウインドミルとヒールで、アジリティとアーマーファンブルは選択状態になっている。
「あれれ?誤作動??」
「尊人くん、なにやってるの?」
僕の困惑を察した真田さんが寄ってくる。
「なんか、僕の特殊能力がおかしいんだけど・・・」
顔を上げて真田さんを見たら、その遥か後方ではホブゴブリン&ゴブリンの群れが全滅をしていた。
「尊人くんがマゴマゴしているうちに、全部やっつけちゃったよ」
「・・・ありゃ」
「私には威勢良く『下がってて』って言いながら、
自分はボケッと突っ立ってるってどーゆーこと?」
昨日「格好良い」と評価してくれた上杉さんからは赤点を付けられる。
「・・・・・・・・・・・」
恐る恐る、適当な特殊能力に触れて選択をしたら、未選択の特殊能力が消えて、選択した3つが待機状態のまま残った。
「えっ?すごいっ!3つ選べるようになった!僕の能力値が上がったってこと?」
「凄いんだろうけど、その変化に困惑してフリーズしてたってことなの?
そんな理由で、早璃ちゃん1人を戦わせるのは可哀想でしょ」
本来なら「パワーアップした!」「僕スゲー!」なシーンなんだろうけど、上杉さんに怒られてしまったせいで・・・というか、僕自身のせいで、有難味の無いシーンになってしまった。
「・・・ごめんなさい」
上杉さんは、武藤さんみたいな毒舌や、土方さんや長野さんみたくズケズケと言うタイプじゃない代わりに、そこそこの頻度で「なにコイツ」みたいな目で睨んできます。
「なんで、今?
普通、こ~ゆ~のって、大ピンチの時に覚醒して逆転するのがお約束だよね?」
「今じゃなくて、一昨日のブラークさんとの戦闘中に発揮されてほしかった」
「2つ選べるようになったのは、トロールに殴られて気絶したあとだったよね?
瀕死から復活すると能力値が上がる・・・とか?」
「僕、超有名な某漫画の実は宇宙人だった主人公みたいな生態じゃないってば」
「なら、寝る子は育つってこと?トロールの時や昨日、すっごい寝てたもんね」
このストーリーって『異世界で寝たらレベルMAXになったのでボチボチ無双します』とか『寝るだけでレベルが上がる特殊スキルを得たので今から寝ます』みたいなタイトルだったけ?
「それは怠け者の妄想でしょ」
特殊能力がランクアップしたのは嬉しいんだけど、タイミングが微妙だったという結論に達する。
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