39-2・ブラークさんとの決着
無我夢中だったけど冷静だった。こんな展開、ブラークさんだけじゃなくて、真田さんや上杉さんも想像していなかっただろうな。
「これで僕の勝ち!」
ブラークさんの優しさを利用して隙を突くなんて、二度と通用しないだろう。もう、僕にはこれ以上は戦う手段なんて無い。「戦闘不能にしなきゃ勝ちを認めない」と反論されてしまったら、即座に詰む。
「僕の勝ち・・・です・・・よね?」
どんな反応をされるか、恐る恐る、ブラークさんの顔を見つめる。
「ダメ・・・ですか?」
ブラークさんは、僕を見てしばらくは驚いた表情をしていたけど、やがて、穏やかに微笑んでくれた。
「驚いたな。別人かと思うほどだ」
「・・・ブラークさん」
「無様でもなんでも、オマエの勝ち。
ミコトの強い気持ちが、戦力差を覆した。・・・敗北を認めよう」
「あははっ・・・あ、ありがとうございます」
勝利判定を受けて安心した途端に脱力をして、ブラークさんの横で仰向けになる。しかも、「大それたことをやっちゃった」と自覚して全身が震える。立ち上がったらガクブル状態だろうな。星明かりしか無いから、真田さん達にはバレてないよね?
「もう・・・単独でチートに挑むなんて言わないでくださいね」
全身の震えを誤魔化したくて声を発したんだけど、その声が震えていてメッチャ格好悪い。
「・・・ああ、約束だからな」
「僕に任せてくれますよね?」
「ああ・・・任せよう」
ブラークさんは、僕の隣で仰向けになったまま、要求に応じてくれる。
「ブラークさんにお願いがあります」
「・・・ん?なんだ?」
ホントは、チートに敗北した直後に言いたかったこと。でも当時は、自信が無くて、「対等」じゃなくて「頼りっぱなしになる」と思ったので言えなかった。
「北都市の黒騎士として、僕に力を貸してください」
チートは、この国で一番偉い人になってしまった。単身で彷徨いているチートと接触するなんて不可能。チートと対峙をするためには、周りにいる軍隊が邪魔なのだ。
「やれやれ・・・俺のノスでの仕事は終わったと思っていたのだがな」
「新しいノスは、まだこれからです。
ブラークさんがやることはいっぱい有りますから・・・」
気持ちが落ち着いて震えが納まってきたので、上半身を起こす。
ブラークさんへのお願いは終わったけど、まだ、聞きたいことがある。今の雰囲気なら、正直に答えてくれるかな?質問をした途端に怒り出して「ムカ付いたから今の勝敗は無し!」とか言われたらどうしよう?
「ねぇ、ブラークさん」
それは、初めてブラークさんに会って助けてもらった時から、ずっと違和感を持っていたこと。
「ブラークさんの本当の名前・・・教えてもらっても良いですか?」
「ブラーク・ライサン。オマエには、フルネームを名乗っていなかったか?」
「いえ・・・その名前じゃなくて・・・この世界に来る前の・・・」
最初は、「この世界の騎士は、みんな、ブラークさんと同じくらい強い」と思っていたけど、実際にはブラークさんの強さは突出していた。
「気付いていたのか?」
ブラークさんは、僕や真田さんに・・・いや、転移者に優しい。騎士達は秘境者狩りに躍起なのに、ずっと見逃し続けてくれた。
「・・・はい。なんとなく・・・ですけどね」
ブラークさんが上半身を起こす。
「解った。偽名のままでは、勝者に失礼だな。
楽山来武。この世界で生きるために捨てた俺の本名だ」
多くは語ってもらえなかった。だけど、意に反して戦争に巻き込まれ、多くの仲間を失い、その結果「北の勇者」という不要な称号を得てしまったことを知る。
「今まで黙っていてすまなかった。見損なっただろう?
これではチートと同レベル。できることなら語りたくなかったのだ」
「いえ・・・全然違いますよ」
転がり込んできた凄い力を、自分自身の承認欲求を満足させるために使う人と、自己を律して他人の為に使う人がいる。
「もし僕が、凄い特殊能力を得ていたらどうなっただろう?」
チートみたく居丈高になっていた?「こんなことできる僕って凄いでしょ」と力をひけらかしている姿を想像してしまう。
「尊人くんなら大丈夫でしょ」
真田さんが寄って来た。
「既にそこそこ凄いことやってるのに全然自慢しないってゆーか、
自分で凄さに気付いていないんだもん」
「そこまで鈍感じゃないってば!
気付いてないワケじゃないけど、僕っぽくないってか、なんか恥ずかしくて」
「ほらっ!やっぱり大丈夫じゃん!」
真っ暗だから気付かれないだろうけど、赤面してしまう。
「まぁ、確かに源君っぽくはないよね」
上杉さんが寄って来て、小声で真田さんと話す。
「源君ってこんなに格好良かったっけ?」
「詩ちゃん気付かなかったの?
前から『ただのヘタレじゃない』って言ってんじゃん」
「あの・・・小声で話しているつもりなんだろうけど、
周りが静かなので全部聞こえています」
え~と、「ヘタレじゃない」なら「ヘタレ」を否定していることになるけど、「ただのヘタレじゃない」ってことは、「ヘタレ」は前提になっているのかな?
まぁ・・・否定はできないけどさ。
☆ブラーク・ライサン☆
主人公に超えられる兄貴分がブラークのテーマ。まだ出番はあるけど、ブラークのゴールは尊人に敗北をする今話になる。
序盤では未熟な主人公が成長する姿を描きたい作者的には、師匠越えは経由したいストーリーです。




