39-1・ブラークさんに挑む③
「アジリティ発動!」
ルーラー or アジリティを使えば、ブラークさんには接近できる。だけど、どれを使っても本家には遠く及ばないので、ブラークさんの隙に飛び込む前に防がれてしまう。
「ファイヤーウインドミル発動!」
ブラークさんのマジックソードを発動させないためには、アーマーファンブル or ウインドミルで防御を誘わなければならない。だけど、どれを使っても本家には遠く及ばないので、完全に防がれてしまってダメージを通せない。
「ピークエクスペリエンス発動!」
ブラークさんの剣を回避して懐に飛び込み、魔力電流を込めた剣を振るう!ブラークさんは、素早く剣を手元に戻して受け止めた!
「この程度で、俺を倒せるとでも思っているのか!?」
僕の発した微弱な魔力電流がブラークさんに伝わるよりも先に、ブラークさんが発した強力な魔力電流が剣を伝って僕に流れ込む!
「ぎゃぁぁっっ!」
感電で体が硬直した直後に蹴飛ばされて尻餅を付く。ピークエクスペリエンスは攻守のバランスが良い反面、攻守どちらも脆弱。ブラークさんが蹴りではなく、マジックソードを発動していたら、僕は今のターンで敗北していた。
「・・・戦う手段が無い」
今のターンだけじゃない。ブラークさんの目的は「僕を殺す気」ではなく、「僕を退ける」だから、まだ息をしていられる。
「怪我をする前に退け!」
ブラークさんが帝都の城壁よりも巨大で頑丈に見える。ギブアップをすれば、直ぐに戦いは終わるんだろうな。
「でも・・・勝ってブラークさんを止めたい」
強い気持ちだけでは覆せない。勝ち筋なんて全く見えない。どうする?非力な僕が、手札をどう組み合わせれば、マジックソードを封じて、ブラークさんにダメージを通すことができる?
『富醒は有効な武器になる!だが、所詮は他人に与えられた“棚ぼた”の力だ!
最後の最後で一番アテになるのは、自力で得たオマエの内側に有る力!
オマエを最も裏切らないのはオマエ自身だ!』
不意に、藤原くんから言われたアドバイスが脳裏を過ぎった。当時(第22話)は、人間相手に剣を振るう度胸が無くて、「性根を据えろ」って諫言と共に、今のアドバイスをもらった。
『レンタルで使える特殊能力のバランスが良すぎて逆に読みやすいんだよね。
多種多様な手札で、仲間の不足部をサポートするのは基本中の基本。
これからの戦いで重要になるのは、その多種多様な手札で、
どうやって相手の裏をかいて隙を突くか』
続けて、吉見くんのアドバイスを思い出す。仲間達とチーム分けをした模擬戦(第35話)では、僕の行動を予測されて吉見くんのチームには全敗した。
「どうやって、僕の手札でブラークさんの裏をかくか?」
ブラークさんが僕の手札をどの程度知っているかは不明だけど、ブラークさんみたいな歴戦の雄を相手に「基本中の基本」で攻めても、攻略されるのは当たり前。
ブラークさんのマジックソードが怖くて、マジックソードを封じることばかりを考えていたけど、裏を返せば、ブラークさんは丸々余力を残して戦っていることになる。それでは、ブラークさんの隙なんて見付けられるわけが無い。
「富醒は他人に与えられた“棚ぼた”の力」
ダメージを怖がって特殊能力頼みになっていた。藤原くんとの特訓では、特殊能力を鍛えるのではなく、性根を鍛えられた。
「最後の最後で一番アテになるのは、僕の内側に有る力」
覚悟は決まった。
「富醒・レンタル!」
特殊能力を発動させて、先ずはピークエクスペリエンスを待機状態にして、続けて「この戦いでは使い道が無い」と思っていたヒールを選択する。
「『基本中の基本』は、マジックソードにはチャージが必要って弱点。
でも、それじゃなくて・・・
ちょっとズルいけど、もっと決定的な弱点を突く!」
ピークエクスペリエンスを発動させて突進!全神経をブラークさんの動きに集中させて、ブラークさんが振るう剣の回避に専念する!ブラークさんの剣を弾いて、懐に飛び込み、剣を薙ぐ!ブラークさんはバックステップで距離を開けつつ、剣を盾にして僕の剣を防いだ!
研ぎ澄ませた集中力を「突撃に全振り」しているので、剣に魔力を貯める余裕は無し!ドノーマルの「僕自身の力」は、ブラークさんに全く届かない!
「くっ!ダメかっ!」
「果敢な攻め・・・と言ってやりたいが、ただの猪突猛進!
剣に魔力を貯めることすら怠るとは・・・これが、オマエの限界ってことだ!」
ブラークさんに剣を力一杯弾かれ、体勢を崩して大きく仰け反る!その間に、ブラークさんは上段の霞構えで切っ先を向け、剣に魔力を充填!
僕がマジックソード封じを一切していないのだから、当然の成り行きだろう。
「マジックソード・雷!」
通電から逃げるために握っていた剣を手放す!だが遅かった!剣から空気中に伝わった雷に捕らわれる!
「がはっ!」
感電をして全身が動かないまま弾き飛ばされる!次の瞬間には、地面に倒れて、抵抗できない状態で剣を突き付けられて終わり。朦朧とする意識の中で、そんな光景を想像する。
『この敗北から学び、更に強くなれ』
前回の戦いでブラークさんに敗北する直前にかけられた言葉を思い出す。
「だから、学びました!やっぱり・・・ブラークさんはっ!」
ブラークさんは優しい。僕の命を奪う選択はしない。鎧や盾の無い僕の体をズタズタにするような奥義は使わない。それは解っていた。
「わぁぁっっっ!!・・・ヒール発動!」
マジックソードを喰らう前に、ピークエクスペリエンスを解除して、ヒールを発動しておいた。ブラークさんの隙を突くには、マジックソードを誘発して消耗させて、「僕の敗北」をリセットするしか無い。
「なにっ!?」
体力を回復させ、尻餅を付くと同時に体勢を立て直して地面を蹴り、真っ直ぐにブラークさんに突っ込む!
「ピークエクスペリエンス発動!」
虚を突かれたブラークさんが、慌てて剣を薙ぐ!身を目一杯屈めて、その剣閃の下を潜り抜け、腰帯に挟んでおいた魔石ダガーを抜刀して振るう!ブラークさんはバックステップで回避するけど、僕は大地を蹴って更に踏み込み、伸びきったブラークさんの腕を掴んで力任せに押し倒した!
「わぁぁっっっっ!!」
仰向けに倒れたブラークさんのマウントを取り、ブラークさんの顔面に風穴を空けるほどの勢いで魔石ダガーを振り降ろし、寸前で軌道を変えてブラークさんの頭の真横の地面に突き立てた!




