38-4・ブラークさんに挑む①
「止めるために来たんです」
馬から下りて、ブラークさんに駆け寄る。
「北都市と西都市がこれからって時に、なんで出奔を?」
「俺が忠誠を捧げたゴヨク・ゴククア様はもういないからな」
「だけど、まだご子息が!」
「それは、他の騎士達が務めれば良い。ノスで俺がやるべきことは終わった」
「だったら、なんで今までノスに!?それなのに、なんで突然に出奔を!?」
「ノスに残った理由は、再生の足掛かりを模索するため。
そして、ウタを保護し、オマエ等に会わせるため。
これで、罪が消えるとは思っていないが、
オマエ等を騙して利用したこと、水に流して欲しい」
ブラークさんは、西都市領主の暗殺の準備に僕と真田さんを利用したことに罪悪感を持ち続けていた。僕達のことを気にかけてくれるのは嬉しい。でも、「罪が消えるとは思っていない」「水に流して欲しい」って言葉がすごく耳障りに感じる。
「真相を知った時はショックでしたけど・・・
今でも納得できてませんけど・・・だからって!」
「俺は、敗戦とゴククア公の死で暗く沈んでいた北都市を復興したかった。
それが、亡きゴククア公に捧げられる最後の仕事だと思っていた。
だが、俺にはできず、その光をもたらしてくれたのはオマエだった」
確かにキッカケは僕等がシリーガルさんとバクニーさんをノスに連れて来たことなんだろうけど、まだ始まったばかりで、なにも進んでいない。
「ウタはオマエ等と合流し、北都市には明るい兆しが見え始めた。
その光を俺が曇らせるわけにはいかない。
西都市のホーマン公暗殺を手引きした俺は、
ノスとセイの繋がりを濁らせる障害になってしまうからな」
ブラークさんが言ってること、理解できる。
スケールは大幅に小っちゃいけど、僕だって、「僕は邪魔かな?」と感じた経験はある。クラスのグループ活動で、皆が盛り上がってるのに僕だけ話題に付いていけなくて孤立を感じたこと、何度もある。この世界に来て、北東村で柴田くん達と合流した時、帝都で藤原くん達と合流した時、「僕の場所は無いのかな?」と感じた。
でも、いつも、誰かが手招きをして「居場所はあるよ」と助けてくれる。
「まだ、北都市にはブラークさんの力が必要なはずです!」
「それは、オマエが決めることではない!」
今の僕の言葉は建前。言葉が軽すぎたらしく、アッサリとブラークさんに反論されてしまった。本音でぶつからなければ、この人には見透かされてしまう。
「チートと戦うつもりですよね?」
ブラークさんが言った、「罪が消えるとは思っていない」の先にあるのは、僕達への罪悪感と、西都市の令嬢達への罪悪感を消す為に、「チートを倒す」だ。
「それを止めるために来たんです」
「止める?何のために?」
否定をしてくれない。やはり、チートを討つつもりだ。
「まさか、未だに『友達を失いたくない』などと
甘えたことをいうつもりではあるまいな?」
「はい、失いたくありません」
「愚かな。戦士としての心構えができたと思っていたが、気のせいだったか?」
「違いますよ。僕が失いたくないのはブラークさんです」
「俺を?」
「ブラークさん・・・もう、帰ってこない覚悟をしてますよね?」
チートは強い。以前、ブラークさんは、チートに全くダメージを与えられずに敗北をしている。
「相打ち覚悟ですか?」
だから「出奔する」と置き手紙をした?
「また負けるかもしれないって思っているんですか?」
だから、北都市に責任が及ばないように、騎士の鎧を脱いだ?
「そこまで見透かしていたか。ミナモト・ミコト・・・妙な男だな。」
なんにも妙なところはありません。考え方が似ているから解るんです。
現実世界にいる時は気付かなかったけど、この世界の極限状態の中で気付かされたこと。僕自身が変なところで自己犠牲を発揮して自己完結させようとするところがあって、その癖を真田さんに何度も怒られた。泣かれちゃったこともある。
「敗北前提で挑むほど愚かではない。だが、無事で済むとも思っていない」
「『破滅』を前提にしている人に、チートの討伐は任せられません!」
「ならば問おう。連隊に圧勝をするチートを、オマエは放置する気か?
生まれ変わったノスの障害となるチートを、不要となった俺が排除する。
これ以上の適材適所はあるまい」
「いいえ・・・ブラークさんの適所はそこじゃありません!
チートの討伐は、僕の適所です!」
「・・・オマエの?愚かなっ!
先日の戦いでチートに肉薄をしたオマエの仲間達が言うなら、まだ話は解る。
あの時、オマエは何をした!?ただの戦力外だったオマエに何ができる!?
オマエは、チートに敗れた俺にすら惨敗したのだぞ!
オマエの成長は認める!この世界に残れば、名を上げる可能性は秘めている!
だが、それは今ではない!今のオマエは『無力よりはできる』程度だ!」
僕よりもブラークさんの方が、チートを倒せる可能性は高い。ブラークさんが言ってるのが正しすぎて、僕の理屈じゃ説得できない。でも、チートの件で他人の力は借りたくない。
「だったら、僕がブラークさんに勝てば、チート討伐は任せてくれますか?」
言葉じゃ勝てないから暴力で従わせるなんてバカ丸出し。野蛮で大っ嫌いな手段だ。「僕が暴力を使わなきゃならないのはオマエの所為」みたいな言葉も責任逃れみたいで嫌い。
「でも、現実世界に戻ったら、そ~ゆ~のはしないようにするからっ!」
今はスタンスを曲げてもブラークさんを止めたい。




