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28-5・僕のスピード

 真田さん、号泣を終えてグスグスしていたと思ったら、僕の肩に凭れ掛かる重みが少し増した。


「・・・真田さん?」


 泣き止んだけど寝てる。腕枕の暖かみや重みとは、こんな感じなんだろうか?


「・・・どうしよう?」


 起こすのは違う気がするけど、このままってのもキツい。困惑したまま15分くらいが経過。


「おいっ」


 扉が開いて我田さんが顔を出す。


「あれ?我田さん、寝たんじゃなかったの?」

「あんだけ大泣きしてりゃ起きるだろ」

「真田さん寝ちゃった」

「寝かしておいてやれ」

「・・・このまま?」


 続けて、別の扉が開いて、掛け布団を持った吉見くんが顔を出す。


「元気に見えたけど、だいぶ無理をしてたんだね」


 吉見くんが僕と真田さんに布団を掛けてくれる。


「吉見くん、眠かったんじゃなかったっけ?泣き声で起きちゃった?」

「まだ眠くないよ。空気を読んで真田さんに気を使ったつもり」

「・・・空気を読む?気を使う?」


 2人は「真田さんが自然に起きるまでは、そのままを維持しろ」と命令をして各寝室に引っ込んだ。


 ・・・で、この体勢のまま朝になった。 こんな時、アニメやドラマだと、お互いに凭れ掛かりながら寝るのかな?でも僕にはそんな器用なスキルは無いので、緊張しっぱなしのまま、一睡もしていない。


「尊人くん・・・ずっと一緒にいてくれたの?」


 真田さんが目を覚ました。


「うん・・・まぁ・・・」

「優しいね。ありがとう」


 いえいえ、「優しい」からではなく、吉見くんと我田さんに命令されたからです。真田さんを放置して自室に戻って寝たら、藤原くんと沼田さんが枕元に立ちそうだし。


「なんか、ごめんね。泣いちゃって恥ずい」

「気にしなくて良いよ」


 泣いたり、負けたり、ヘタレて背中を押されたり・・・僕は昨日の真田さんの5倍くらい「恥ずい」を披露しています。


「おはよう」 「おす」


 タイミングを見計らったかのように、各部屋から吉見くんと我田さんが出てきた。なんとな~く寄り添ったままになっていたけど、慌てて距離を空ける。まぁ、2人には昨日の状況を見られてるから「今更」なんだけどさ。


「とりあえず、南宿場にいる由井さんに会いに行こうと思うんだけどどう?」


 皆が集まったので、早速提案をする。

 一睡もしないまま色々考えた。やらなきゃならないことは沢山あるけど、欲張って背伸びしても机上の空論ばかりで何もできない。だから、確実にできることからする。


由井ゆいゆいって南宿場ミドメリデの宿屋に勤めてるんだっけ?」

「由井さんって『この世界に残りたい派』なんだろ?」

「うん、そうなんだけど、だからって無視はできないよね。

 由井さんなら仲間の情報を持っているだろうし」


 以前、由井さんに会った時に「菅原さんと前田さんは南都市サウザンルービイ騎士団に所属をしている」「隣のクラスの和田さんは東都市アーズマサファイ騎士団に所属している」「隣のクラスの渡辺くんはアーズマに行った」と聞いた。それらの情報の再確認をしたいし、新しい情報を得ているかもしれない。


「少しずつで良いから、僕等にできることをしようよ」


 真田さんが頷いて、吉見くんと我田さんは、少し驚いた顔をして僕を見詰める。


「源君、少し逞しくなった?」

「ヘタレのくせに前向きだな」

「ヘタレなのは認めるけど、ずっとネガティブしてるわけじゃないよ」

藤原ふーみんみたく根拠の無いポジティブキャラになったら嫌いになっちゃうからね!」


 早速、真田さんに釘を刺されてしまった。


「・・・き、気を付けます」


 まぁ、藤原くんみたく、強気に物事を進められれば格好良いんだけど、どう背伸びをしても、僕は藤原くんにはなれない。僕は、真田さんにお尻を叩かれたり、仲間達に煽られながら、僕のスピードで物事を進めていくしかないんだ。


「そうと決まれば、行動は早い方が良い。早速、僕と源君で発とう」

「はぁ?なんで、尊人くんと吉見だけ?あたしは?」

「我田さんがまだ無理をできないから、真田さんは我田さんの看病に・・・」

「だったら、あたしと尊人くんで行くから、吉見が残ってよ」

「女の子に無理はさせたくないんだけど・・・」

「吉見、考え古っ!戦前生まれ!?時代はジェンダーレス!」


 吉見くんが困り顔で僕を見て「説得しろ」と目で訴えたので、首を横に振って「無理」と回答する。皆が少なからず無理をして元気に振る舞っているのは解る。だけど、真田さんが「らしさ」を取り戻してくれて嬉しい。


「何十㎞も歩かされるのはキツいけど、看病されるほど重傷じゃねーよ。

 オマエ等3人で行ってこい」


 我田さんが提案してくれる。確かにそれが一番良いんだけど、「我田さんに看病を付ける」ってのは「見張り役」の意味もあって、僕等はまだ、我田さんを完全に信用しているわけではない。


「安心しろ。昨日の大泣きを聞いて裏切れるほどクズじゃねーよ」


 僕等の目を見て察した我田さんが否定をしてくれる。


「それにさ・・・私は、この町では、一応は指名手配犯だろうから、

 気楽に動き廻ることなんてできねー」

「どゆこと?喫煙とかキョーカツとか、何か悪いことしたの?」

「その罪じゃ指名手配はされないでしょ」

北都市ノスの公爵の暗殺・・・あれは、私と脇坂の仕事だ」

「えぇぇぇぇぇっっっっっっっっっっっっっ!!!?」×3


 とんでもない爆弾発言が飛び出した。


「な、なるほど・・・そりゃ確かに指名手配されるね」


 昨日の帝都入り~病院は馬車の中にいたから良いとしても、その後の夕食~屋敷帰宅までの間に見付からなかっただけでも奇跡に近いかも。


「その時間帯は暗かったからどうにかなった」


 そんなヤバい状況で帝都に来ていたんだ?裏を返せば、それくらい「チートのところには戻りたくない」ってことになる。


「富醒発動!テレパス!」


 途端に、我田さんが喋っていないのに、我田さんの声が聞こえるようになった。


〈これが私の特殊能力だ。

 これで脇坂や安藤と連絡を取り合って暗殺のタイミングを謀った〉


 チートに内通するつもりなら、手の内をバラすのはデメリットしか無い。


〈手を貸してやったのに、その場しのぎで私と脇坂を見捨てたアイツを許せねー。

 それでも信用できねーってなら、私はオマエ等の元から去る〉


 仲間に紛れた状態か夜じゃなければ、町中を歩くことすらできない。傷が回復していないので遠くには行けない。屋敷の場所は既に安藤さんにバレているので、我田さんが手引きをする意味は無い。

 今、この場において、我田さんが一番立場が弱い。プライドの高そうな我田さんが、そこまでして信用を求めている。


「なら、お屋敷の留守番は我田さんに任せよっか」

「うん。出歩かなくて済むように、2~3日ぶんの食料を調達してね」


 我田さんと行動を共にしてから3日が経つ。僕は、藤原組(仮)に新しい仲間が加わってくれたように思えた。


テレパス

使用者:我田我歌

 脳内でイメージした人と会話をできる。有効範囲は「意思の疎通ができる人」で半径1.5㎞、一方的に発信して声を届ける場合は半径1㎞。一方的な発信なら干渉範囲の全員に声を届けることも可能。熟練度が上がれば干渉範囲が広がる。


~~~~~~~


 尊人は第27話ラストの号泣で、ある程度気持ちの整理ができた。だけど早璃は、寂しい感情を爆発させるシーンを描けていない。どのタイミングでそのシーンを描くかな~と考えた時に、当たり前の生活をしていた場所で、いることが当たり前だった人がいないのが最も喪失感が湧くかな?と考えて、早璃の号泣シーンは屋敷に戻った直後にした。


 ちなみに、尊人に寄り添ってもらって号泣をした早璃は、少しばかり気持ちが盛り上がって、遠回しなんだけど告白同然のことを言っている。だけど、遠回しすぎて尊人は気付いていない。

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