37-5・異世界あるある大作戦②
白馬を駆るゴククア公が遺した御子息達(バウラー様とロズ様)と彼等を護衛する黒騎士2分隊。北都市の南門まであと500mくらいのところで、先頭で馬を操っていたブラークさんが、片手を水平に広げて進行を止めた。
「背後から気配を感じる」
黒騎士達が振り返って確認をする。
「何もいません。気のせいなのでは?」
「いや・・・チートが何かを仕掛けている可能性がある。
バウラー様とロズ様は、先に町にお入りください!
2隊は俺に付いてこい!確認に行くぞ!」
ブラークさんが馬を回頭させ、僕等の隠れている茂みに小さく手を振って合図をしてから、黒騎士達を連れて南に向かう。
「このタイミングだ!」
ブラークさんがバウラー様とロズ様を無防備にした!
僕は藁で作った牛頭を被り、真田さんは藁で作った馬の後ろ足を腰に縛り付けて布で顔を隠し、アイコンタクトをしてから雄叫びを上げた!
「もぉ~~~~~っっっっ!!牛人間ですっっ!!!」
「ひひぃ~~~~~んっっ!!馬人間だぞっっ!!!」
シリーガルさんとバクニーさんが雄叫びを聞き、振り返って青ざめる!
「きゃぁぁっっっ!!先程までミコト様とサリ様がいた場所に怪物がっ!!」
「もしや、ミコト様達は怪物に倒されてしまったの!?どなたか助けてっっ!!」
悲鳴を上げて逃げ出すシリーガルさんとバクニーさん!迫真の演技だ!
「演技・・・かな?もしかして、ガチで逃げてる?」
「『ミコト様達は怪物に倒されてしまった』とか言ってたよね?」
バウラー様とロズ様を騙す役のシリーガルさんとバクニーさんが真っ先に騙されてるっぽい。さすがは「この世界の人達」だ。変装するところを、ちゃんと見せておくべきだったかな?
「尊人くん、どうすんの?」
「強行するしかないでしょ!・・・もぉ~~~~~っっっっ!!」
「了解!・・・ひひぃ~~~~~んっっ!!」
真田さんが、藁で作った馬の後ろ足を引き摺りながら姉妹を追う!その後から、僕も走るんだけど、藁で作った牛頭の目の空け方が雑だったので、足元が見えずに転倒する!
起き上がって念の為にブラークさん達の方を見たら、ブラークさんは馬を走らせながら振り返っていて、「クオリティー低っ!」って言いたげな眼で僕達をガン見していた。
「くっ!もう退けない!やるしかないんだっ!!・・・もぉ~~~っっ!!」
何から何までグダグダだ。半ばヤケクソになって、シリーガルさんとバクニーさんを追いかける!
「なにっ!?ケンタウルスとミノタウロスだと!?
何故、外地にしかいないモンスターが、内地にいるんだ!?」
「くっ!美しいお嬢さん達が追われている!助けねばっ!」
勇敢なバウラー様とロズ様が、白馬を僕達の方に向けて、勢い良く走らせる!
「はぁぁ!爆熱ファイヤーッッ!!」
どっちがバウラー様で、どっちがロズ様なのかよく解らないけど、金髪の御子息が馬上から僕目掛けて魔法の火の玉を飛ばした!
「富醒・レンタル!・アジリティ発動!」
瞬発的な動きで火の玉を回避!
「ハァァァッッッ!絶殺ランスアターック!!」
どっちがバウラー様で、どっちがロズ様なのかよく解らないけど、銀髪の御子息が馬上から 真田さんに向かって槍の突きを放つ!
「富醒・ピークエクスペリエンス!!」
真田さんは、銀髪の御子息の攻撃を予測して回避!
「真田さんっ!退却するよ!」
「はいっ!」
視界が狭い牛の頭を被ったままや、馬の後ろ足を引き摺ったままでは、馬を駆る御子息に追い付かれてしまう!僕は被り物を脱ぎ捨て、真田さんは馬の後ろ足を腰に固定していた紐を解いて、身軽になって逃げて茂みの中に飛び込んだ。
「はっはっは!見るがよい!ミノタウロスの首を取ったぞ!」
「兄者よ!俺はケンタウロスの後ろ足を叩き切った!屋敷に持ち帰って飾ろう!」
どっちがバウラー様で、どっちがロズ様なのかよく解らないけど、金髪は藁で作った牛頭を、銀髪は藁で作った馬足を拾って武勇自慢をしている。
「上手くいくかな?」
「シリーガルさんとバクニーちゃんの頑張り次第だね」
僕等の出番は終わり。この先は、姉妹が子息達に上手く接触できるかどうかにかかっている。僕等は茂みに隠れて様子を見守った。
「助けていただいき、ありがとうございます!」
「このお礼は、言葉だけでは語り尽くせません!」
「美しいご婦人達がこんな所でなにをしていたのだ?」
「セイから重要な任務を負って来たのですが、モンスターに襲われてしまって」
「ぬぅぅ?セイだと?・・・君達の名は?」
「シリーガル・ホーマンと申します」
「バクニー・ホーマンです」
シリーガルさんとバクニーさんが、片足を引き、ロングドレスの裾を持って、膝を曲げて、恭しく礼をする。
「な、なんてことだっ!
麗しいご婦人に出会えて心を躍らせたというのに、宿敵の令嬢だったとは!」
「なんたる悲劇!俺の名はバウラー・ゴククア!」
「俺はロズ・ゴククア!我が父は、君達の父君の政敵だったのだ!」
「敵対をしていたのは、あくまでも父達です!
父が亡くなった今、私達には関係ありませんわ!」
「例え宿敵の関係だとしても、私の胸の高鳴りは止められません!」
「おおっ!なんと健気なことを!」
「例え、政敵の御息女だとしても、この様なところに放置はできぬ。
さぁ、我が馬にお乗りください。我らの屋敷に案内しましょう」
御子息達が御息女達を馬に乗せて、北都市に帰っていく。僕と真田さんは、その様子を茂みに隠れたまま見守り続ける。
「シリーガルさんとバクニーさん、熱い演技をしてくれたね」
「演技じゃなくて“素”でしょ。一目惚れしちゃったんじゃない?」
「彼女達って、まだチートに未練があるんだよね?」
「これで未練が無くなったんじゃない?この世界の人って単純でホレっぽいから」
「ミッション成功・・・で良いのかな?」
「解んない。女ったらしにお持ち帰りされちゃっただけかも・・・」
「・・・だよね」
展開が早すぎて「やり切った感」を全く感じられない。
主人公だけが「美女を助けた途端に好かれる」は、願望がキツすぎて好きにはなれない。助けた途端に好いてくれる美女は、他のキャラに助けられれば、そのキャラに目移りする。




