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37-4・異世界あるある大作戦

 翌日の昼過ぎ、僕と真田さんは、シリーガルさん&バクニーさんと共に、北都市ノスの東門付近の茂みに隠れていた。


「尊人くん、ホントに、こんな突拍子も無い作戦を実行するの?」

「うん。強行する。

 手っ取り早くノスの中枢に滑り込むには、少しくらいの無茶はしなきゃね」

「シリーガルさんとバクニーちゃんは、ホントにこれで良いの?」

「はい、生涯でチート様以上に愛せる殿方には出会えないのでしょうけど・・・

 我が西都市セイのために、心を殺して全うします」

「それが、ホーマンの息女を背負った私達の使命なのですからね」


 シリーガルさんとバクニーさんは、今でもチートを好いている。でも、その私情を捨てて、西都市セイ北都市ノスの同盟を成功させるために、身を粉にする悲壮の決意をしてくれたのだ。


「シリーガルさんとバクニーさん、御協力、感謝します」

「まぁ・・・チートが『生涯の殿方』レベルとは思えないけどね」


 僕等は茂みに身を隠したまま「その時」を待つ。



 昨日の夜、ブラークさんに同盟の提案をした。最初は驚嘆してたけど「シリーガルさんとバクニーさんが既に来ている」と知って、「直ぐに面会させてほしい」と言ってくれた。


北都市ノスだけの戦力ではチートを討てん。

 士気が落ちた北と東だけでは、チートに対抗できない。

 だが、チートの足元が崩れれば、気運は高まる。

 この機会を逃がすわけにはいかない」


 西都市セイの本気度を理解したブラークさんは、「北都市ノス公の双子の子息・バウラー様とロズ様に直談判をするべき」と判断する。

 ただし、ご子息達はまだ若く、ゴククア公がが亡くなった今、ノスの実質的な采配は大臣が振るっている。正攻法で面会を求めても、許可が降りるまでに時間がかかるか、セイを恨む者に握り潰されてしまう。


「明日、バウラー様とロズ様を連れて狩りに出る。

 その帰りに、お二人を無防備にするから、接触をしてくれ」


 ブラークさんがチャンスを作ってくれる。真っ先にブラークさんに相談したのは正解だった。


「ミコト・・・良い話を持ってきてくれたな。

 何もできずに泣いていただけのオマエが、これほど化けるとは思わなかったぞ」

「えへへっ!尊人くん、いっぱい頑張ってるからね!」


 ブラークさんの僕への褒め言葉に対して、何故か真田さんが嬉しそうに応じる。でも違うよ、真田さん。僕だけじゃなくて、みんなが頑張ってる。僕は、みんなの頑張りや、藤原くんや柴田くん達の無念を無駄にしたくなくて、どうにかして繋いでるだけだよ。


 日が沈み始めた頃、黒い鎧と黒マントの2分隊が馬を操って、南の森から北都市ノスに向けて駆けてきた。彼等の中央に、美しい白馬に乗り、特別あつらえの鎧を付けた若者(とは言っても僕等より歳上)が2人。


「あの2人がバウラー様とロズ様だね。

 金髪と銀髪、どっちがどっちだっけ?真田さん、解る?」

「髪の色が違うだけの量産型モブなんだから、どっちがどっちでも良いでしょ」

「将来は公爵になる人達なのにモブ扱い?」

「モブの見比べなんてどうでも良いから、さっさと準備しようよ」

「・・・うん」


 シリーガルさんとバクニーさんに「僕等が大声を上げたら御子息の方向に逃げてね」と作戦の最終確認をしてから、事前に藁で作っておいた牛の頭と馬の後ろ足を茂みから引っ張り出す。


「真田さん、どっちにする?」

「被り物は臭そうだから、馬の後ろ足をもらっても良い?」

「なら僕が牛の頭ね」

「でも、ホントにこんな作戦で上手くいくのかな?」


 モンスターに変装した僕と真田さんがシリーガルさんとバクニーさんを襲うフリをする。シリーガルさんとバクニーさんは逃げる演技をして、バウラー様とロズ様に助けを求める。バウラー様とロズ様がモンスターに変装した僕と真田さんを追い払う。

 助けてもらったシリーガルさんとバクニーさんが、バウラー様とロズ様に一目惚れする演技をする。このシチュエーションなら、バウラー様とロズ様はシリーガルさんとバクニーさんを受け入れるはずだ。

 名付けて「異世界あるあるを演出してシリーガルさん&バクニーさんとバウラー様&ロズ様に仲良くなってもらおう!」作戦だ。


「多分、大丈夫。この世界の人は単純だからさ」

「リアルで不良に絡まれた美少女を助けたいけど、

 そんな場面には遭遇しないし、遭遇しても対応する度胸も無いから、

 都合の良い妄想世界で都合の良い反則能力を得て、

 都合の良い妄想の出会いを創造するってパターンでしょ?」

「まぁ・・・うん・・・」

「女に免疫が無い人が『自分から行動する』という最低限のリスクすら放棄して、

 『出会いなんて望んでないのに向こうから来ましたよ~』的な他力本願で

 女の子と出会って、しかも人としても魅力は表現せずに好きになってもらって

 『ちょっと面倒臭いけど優しい俺はあしらうことができません』ってスタンスで

 女の子に絡まれるパターンでしょ?

 そーゆーのって、女の子の人格を考えていないというか、

 女の子を自分に都合の良い人形扱いしてるよね?

 女の子に信頼されたことの無い典型みたいな人が考えそうな作戦じゃん。

 それに、こんな露骨なハニートラップみたいな出会いでその気になる男なんて

 ちょっと甘い声をかけられただけで勘違いするバカしかいないというか、

 騙されてることも知らずに女の子に投資するアホというか、

 現実世界にいたら絶対にモテない男だよ」

「あ・・・あのさ、真田さん。

 遠回し・・・というか、ほぼ直球で、『僕が気持ち悪いバカ』って言ってる?

 ・・・まぁ、女の子と話すと緊張しちゃうし、モテないのは事実だけどさ。

 そこまで具体的に言われると、さすがにショック・・・かな」


 シリーガルさんとバクニーさんを正当な使者として立てるのではなく、魅力で搦め手から北都市ノスの中枢に飛び込んでもらう。シリーガルさんとバクニーさんの能力ではなく、性別を武器にした作戦。ましてや、姉妹はまだチートに未練を残している。ジェンダーレスが口癖の真田さんからすれば、不満で当然だろうな。だけど、説明下手なシリーガルさんとバクニーさんが口頭で信頼を得るより、魅力で信頼を得た方が確実に早い。


「もし吉見くんがこの場にいたら・・・きっと同じ作戦を立てるよね?」


 吉見くんが覚悟を決めて甘さを捨てたように、僕も心を鬼にする覚悟を決める。

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