37-2・ブラークさんに会いに行く
新たな仲間の若林さんを加え、僕達は北都市に向かう。若林さんが「巨大な私に乗れば1時間くらいで到着できる」と言ってくれたんだけど、目立ちすぎるし、ノスの人達から「巨人が襲撃してきた」と怖がられたら困るので、却下をして馬での移動を選び、若林さんには我田さんの駆る馬の後ろに乗ってもらった。
クラスメイト(真田さんの友達)の上杉さんとの合流、シリーガルさんとバクニーさんを使者に立てた同盟の成立、ノスでやるべきことは多い。
「ねぇねぇ、尊人くん」
馬を操っている真田さん(僕は相乗り)から問われる。
「ノスの一番偉い人って、どこにいるんだろうね?
領主さん、死んじゃったんだよね?」
今は誰が中核になってノスの政務をしているんだろう?僕等は、それすら知らない。つまり、どこに行けば同盟の決定権を持つ人に会えるのか解らない。
「先ずはブラークさんに会いに行こうかな」
言ってはみたものの、僕は大恩あるブラークさんに歯向かっている(惨敗したけど)ので、ちょっと会いにくい。困った時ばっかり都合良く頼る調子の良いヤツにはなりたくない。
「尊人くん、今、迷ってるでしょ?」
「・・・ん?どうして解ったの?」
「あたしのお尻に接触してる尊人くんの足がキュッってなって緊張が伝わったよ。
尊人くんって、悩むと、いつも全身が緊張するよね?」
「えっ!?」
悩んだのがバレたことより、悩むたびに内腿で真田さんのお尻に触れていたことに驚いてしまい、慌てて距離を開け・・・
「うわぁっ!」
体勢を崩して馬から落ちてしまった。真田さんが呆れ顔で手綱を引いて馬を止める。
「何やってんの?」
「・・・ごめん」
「ブラークさんに会いにくい?」
「うん・・・なんで解った?」
「尊人くんが悩むの、櫻花かチートかブラークさんばっかりじゃん」
「悩みの種は3種類だけ?僕、そんなに単純じゃないよぉ~」
真田さんのことでも、そこそこ高い頻度で悩んでいます。
「ブラークさん、『気にするな』って言ってくれたんでしょ?」
「・・・うん」
「なら、もう少し、図々しくしなよ」
真田さんが手を差し出してくれたので、引っ張ってもらいながら馬(真田さんの後)に乗る。
「まぁ、気を使いすぎるのが尊人くんらしいってゆーか、
図太くなったら尊人くんじゃなくなっちゃうんだろうけどさ」
仰る通りです。でも、もう少し図太くなりたい。
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北都市の西の城壁は崩れたまま。焼かれた西の住宅区は瓦礫撤去が進んでいるものの、建て直している家は1つも無い。30日くらい前の出来事なんだから、復興の兆しが見えないのは当然だろうな。
「おいたわしや」
「これをチート様と白騎士が・・・」
ホーマン姉妹が西都市による軍事侵攻の傷跡を見るのは初めて。撤去作業をしている人達が手を休めて、この場に相応しくないお嬢様達を眺める。その中には子供達もいる。
バクニーさんが「しっかりと見たいから馬車を止めてほしい」と言うが、それはできない。家を失ったノスの民にとって、現時点でのセイの御令嬢なんて憎しみの対象なのだ。
「あの人達を気の毒に思うなら、その場しのぎの優しさより、
同盟締結をして、セイから復興の支援を送るべきですよ」
ホーマン姉妹には偽名を使ってもらって、それなりに格式のある宿を確保。司&我田さん&輪島さん&若林さんにはホーマン姉妹の護衛に残ってもらい、僕と真田さんは、町の中央から東側に少し外れたところにあるブラークさんの家に向かう。
「ブラークさ~ん!いますかぁ~~?」
玄関戸を叩いてブラークさんを呼ぶ。騎士様の仕事って定時はあるのかな?留守だったら、家の前で待つべきだろうか?疑問に感じながら反応を待ったら、内側から「は~い」と女の人の声がした。
「えっ?ブラークさんって結婚してる?」
僕のブラークさんへのイメージは「規律正しくて孤高」と「生活感が無い」なので、配偶者とラブラブな生活をしてる想像ができない。
それに、前に来た時は奥さんなんていなかった。
「彼女と同棲してる?」
「それとも、町娘を連れ込んだ?」
ブラークさんが女の子にだらしないとは思えないけど、僕のブラークさんへのイメージは「格好良いからモテそう」だ。ブラークさんが町娘をナンパして、家に連れ込んでいたらイヤだな~~。今まで作り上げたイメージが、音を立てて崩壊しそうだ。
「ブラークさんは、まだ帰宅をしていませんが、ご用件があれば承り・・・」
玄関戸が開いて女の人が顔を出した。
「なにぃぃっっっっっっっっ!!!」
「うわぁぁっっっっっっっっ!!!うたちゃんっっ!!!?」
「えぇぇっっっっっっっっっ!!!さりちゃんっっ!!!?」
軽くパニックになる。ブラークさんが連れ込んでた女の人、クラスメイトの上杉さんだった。輪島さんと我田さんの特殊能力を使わずに合流できちゃったよ。これってアレか?
異世界あるある⑩もしくは創作物全般あるある(再確認)
美少女キャラは優遇され、作中で明確な設定が無いまま「露骨なキャラ補正」という神スキルを発動させる。「何故、そんなに優遇されるのか?」の理由は、「作者が贔屓しているから」としか説明できない。
「え~~~!?早璃ちゃん、やっぱり源君と一緒だったんだね?」
「まぁ・・・そうだけど」
「え~~~~!?いつから!?」
「もう50日以上経つと思う」
「え~~~~~!?そんなに長く!?
50日以上前ってことは、転移した直後くらいからずっと一緒ってこと!?」
「まぁ・・・そんな感じ」
「どんな経緯で一緒に?」
「ちょっと色々あって・・・」
「進展は?」
「無い!」
「なんで!?」
「ちょっと色々あって・・・」
「色々あったのに何にも無いの?」
「うん・・・まぁ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・って、今は、あたしのことはどうでも良いのっ!
なんで、詩ちゃんがブラークさんの家にいるの!?
ナンパされて連れ込まれたの!?」
真田さんが質問攻めをブチ切って、質問返しをする。「なんで上杉さんがブラークさんの家にいるのか?」は僕も知りたい。クラスメイトと付き合ってるなら驚くし、ナンパして連れ込んだならちょっと軽蔑しそう。
「ん?ミコトとサリか?久しぶりだな。
俺に何か用か?」
背後から声がする。良いのか悪いのか微妙なタイミングで、渦中のご本人様の登場だ。
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