36-3・ホーマン姉妹との再会
総勢9人、朝一でホーマン邸に向かう。正門の前では、ホワイさんが待っていた。
「智人と敵対してる僕等が、こんな所に来ちゃって大丈夫なんですか?」
「安心しろ。ホーマン夫人には、話を通してある。
・・・いや、『ホーマン夫人が君等への接触を望んでいる』と言うべきかな」
「ボウインさんが?」
「チート様の台頭を不満に思っているのは、俺や君等だけではないってことだ」
チートの拠点が、チートから離反している?ちょっと信じられない。
「チート様は、もうホーマン邸には住んでいない。
ホーマン夫人と仲違いをして追い出されたのだ。
尤も、プライドが高いチート様は『自分が見限った』と言っているがな」
「なんか、いかにもチートらしい言い分ですね」
広い庭を通過して屋敷の前に到着。執事さんの案内で広間に通されると、ホーマン夫人のボウインさんが待っていた。
「お久しぶりです、ボウインさん」
「お元気そうね、ミコト様、サリ様。
先日のチート様との戦いから生還したことは、ホワイ騎士長から聞いているわ」
ボウインさんが執事を手招きして、「娘達を呼んでこい」と指示をしたあと、着席を進めてくれた。大きいテーブル席なので、9人全員が余裕を持って座れる。
僕は、「以前なら隣に智人が座っていたんだっけ?」と思い出に浸りながら、以前にお世話になった時と同じ場所に座った。
「シリーガルさん達、僕等がチートと敵対してるのに会ってくれるんですか?」
「我が娘達は、もう、チート様とは関係ありません。
きっと、ミコト様達との再会を喜びますよ」
しばらくの後、扉が開いてシリーガルさんとバクニーさんが顔を出したので、真田さんと一緒に立ち上がって挨拶をする。
「シリーガルさんとバクニーさん、お久し・・・・」
「ひぃぃぃぃっっっっ!!!ミコト様とサリ様の幽霊っっ!!」
「ぎゃぁぁぁっっっっ!!!アナタ達は死んだはずっ!!」
「・・・・・・・・・・ん?」
シリーガルさん&バクニーさんが僕等の顔を見た途端に卒倒した。
「・・・もしかして、僕等が生きていることを知らなかったんですか?」
ボウインさんとホワイさんは「ヤベ」って顔をしている。
「も・・・申し訳ありません。娘達には伝え忘れていました」
「夫人が伝えると思っていたので、特に説明していない」
「ああ・・・・そうですか」
だいぶ重要なことだと思うんだけど、説明してなかったんだ?こんな有様で、大丈夫なのか?それとも、僕等が生きていたことって、この人達には「どうでもいいこと」くらいの扱いなのかな?ちょっと不安になってきた。
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数分後、意識を取り戻したシリーガルさん&バクニーさんが着席して、ようやく本題が始まる。
「驚かないで聞いてくれ。
信頼できる情報筋から掴んだのだが、帝皇様が退位をして、
チート様が帝皇になることが決まった。
今は真王と名乗っており、戴冠後は武皇を名乗るらしい」
先ずはホワイさんが「スゲー情報だろ」的な顔をして口火を切る。
「驚きません。昨日、酒場で聞きました」
「町中で噂になってますよね」
信頼できる情報筋さんが、あちこちで言いふらしているのだろうか?情報はもっと大事に扱おうよ。
「えぇぇっ!?チート様が!!?」
「なんと大それたことをっ!!」
シリーガルさん&バクニーさんだけは初耳だったらしくて驚いている。真っ先に報せなきゃだろうに、伝えてなかったんだ?
「・・・・・・・・・・・・で?」
「以上だ」
一泊して、数十分かけてホーマン邸まで来て、十数分待機をして、打合せは30秒で終わりらしい。
「『チートが武皇になる』に対する西都市の方針は?」
「・・・方針?」
「従うとか・・・反発するとか・・・」
「ど、どちらかといえば反対だが・・・」
「曖昧すぎませんか?」
ホワイさんを追及したら、困惑した表情でボウインさんに視線を向けて指示を仰いだ。
「おいおい」
そんなんで大丈夫か騎士長さん。こんな有様だから、転移して50~60日くらいしか経過していないチートに良いように牛耳られちゃうんだよ。
「方針などありません。自然の流れに身を委ねていれば良いことがある。
・・・それが私達の崇拝するゴツゴー主義の教えです」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」×たくさん
もう少し“ちゃんと”してほしい。呑気な僕でも「これはダメだ」と思ってしまう。
「・・・あの、ちょっといいですか?」
話が序盤で頓挫してしまったので、以前から「こうなれば良いのに」と思っていた僕の提案をしてみることにした。
「北都市と仲直りできませんか?」
「なに?ホーマン公はノスに暗殺されたんだぞ!
今更、手を携えることなどできるわけが無い!」
ホワイさんが反発をする。まぁ、当然だろうな。
「でも、西都市は報復や、ゴククア公を暗殺しましたよね?
それでお相子ってことには・・・」
「源君、それは渦中に居ないから言える理想論だよ。
でも、僕は賛成だ。僕も同じことを考えていたからね」
吉見くんがダメ出しをしつつ賛成をしてくれる。
「要は、セイとノスはお互いに面子を潰し合って、関係修復が困難な状況だけど、
それをチャラにできるほどのメリットを提案できるかどうかってこと」
今の西都市は、北都市だけでなく、南都市とも絶縁状態となっており、物資の移送は全てが帝都経由で、輸入品は品薄&割高になっている。東都市とも敵対状態だ。
北、南、東の3都市が「西憎し」で手を組んだらどうなる?そうなる前に、セイが動かなければならない。それには、現状の元凶となった「セイとノスの対立」を取り除くのが手っ取り早いのだ。
「感情的な『ノスが許せない』を捨てて、曖昧な『お相子』ではなく、
セイの未来のためには、勇気ある一歩を踏み出すべきってことです」
相変わらず、吉見くんの提案は理に適っていて解りやすい。
「どういうことだ?なんでノスとの敵対関係を止めると、セイは得をするんだ?」
「ノスから何かをもらえるのですか?」
理に適っていて解りやすいのに、ホワイさん達には理解してもらえなかった。そう言えば、この世界ってちょっと知能が低い人が多いんだっけ?
「え~~~~と・・・ノスと仲良くできれば良いことがありますし、
孤立したままでは、戦争とか物資不足でセイの民がいっぱい死んじゃいます」
仕方が無いので、僕が超解りやすく噛み砕いて教えてあげる。
「チート様が武皇に戴冠すれば、解消されるのでは?」
「ホワイさん達って、チートを応援してるんでしたっけ?」
「いいや!もはやチート様には付いて行けん!」
「見限ってるのに頼るんですか?」
「・・・ぬぅぅっ、確かにっ!」
ホワイさんが動揺しながらボウインさんに視線を向け、ボウインさんは感歎の表情をしている。
こんな簡単なこと、指摘をされる前に気付いて欲しい。




