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36-2・チートの噂

 日が暮れる前には、西都市セイ入りをした。西の英雄チートと対立している僕等は「この都市ではお尋ね者扱い?」と少し心配をしたけど、誰も僕等を気にしていない。


「写真や映像が無い世界で良かったね」

「そもそも、あたしと尊人くんと我田さんって、死亡扱いになってるんだっけ?」

「指名手配されてるとしても、吉見くんだけかな?」

「僕は、離れて戦いを見ていただけだから、

 僕の顔を覚えた人なんて、多分いないよ」


 早速、輪島さんの特殊能力をレンタルした僕がホワイさんの方向を確認。輪島さんがチートと安藤さんの位置確認をして東方向(帝都側)にいることを確かめてから、我田さんがテレパスでアンテナを張りっぱなしにして、ホワイさんに呼び掛けながら探す。


「おっ!引っ掛かってきたぞ。

 『事態が急転した。明日の朝、ホーマン邸で会おう。

  どうしても話しておかなければならないことがある』だってさ」

「明日かぁ~」


 可能ならば、必要な情報交換だけをして、早々に次の町に行って仲間集めに専念したかった。


「馴染みのある僕と真田さんと、参謀の吉見くんで接触することにして、

 他の皆には明日の朝一で北西村ウェスホクに向かってもらおっか?」

「いや、皆で聞こう」


 気を焦らせて吉見くんに方針を発議したんだけど、アッサリと却下されてしまう。


「シッカリと皆で聞いて、そのあと話し合って意思疎通をしておきたい」

「ちょっと大袈裟じゃない?」

「チートが帝都にいる理由とか、他の都市を敵に廻してしまったセイの立場とか、

 それなりに重要な情報が聞けるかもしれない。

 その為に、ホワイ君は時間にゆとりのある明日を指定したんじゃないかな?」

「そっか・・・なるほどね」


 吉見くんの意見を採用して、宿を確保して早々に夕食を取り、その日はノンビリと過ごすことにした。・・・が、僕等は衝撃的な噂を聞く。


「帝皇が退位して、我らがチート様が新たなる帝皇になるらしい」


 食堂(酒場)では突拍子の無い話題が飛び交っていた。あちこちのテーブルで「我らがチート様」を称える声が聞こえて、見知らぬオニイサンが僕等にまで「チート様に乾杯」を求めてくる。


「チートが帝皇ってどういうこと?」

「デマって思いたいけど・・・」

「これだけ騒ぎになってると、いい加減な情報とも思えないよね」 

 

 僕等が「西都市セイに来たばかりの冒険者」と知ると、他のオネエサンやオジサンまで寄って来て「我がセイが誇るチート様」を自慢する。おかげで、落ち着いて食べてられない。


「ホワイさんが提供するつもりの情報ってこれかな?」

「多分、そうだね」


 一番重要な情報を、ホワイさんに会う前に知ってしまったような気がする。明日、ホワイさんに会う必要が無くなったんじゃね?


「その、チートって人はどんな人なんですか?」


 念のために、チートがセイの民からはどう見えているのかを確認する。


「チート様はとてつもなく強い。

 北と南と東の騎士団がチート様に敗北したらしい」

「強さ以外に凄いところは?」

「向かうところ敵無しだ。北の勇者に圧勝したらしい」


 ブラークさんに勝ったことも広まっている。


「それって『強い』を言い換えただけですよね?もっと他の凄いところは?」

「常勝無敗だ。旧友が反旗を翻したので、心を鬼にして成敗したらしい」

「旧友が反旗・・・ですか」

「チート様に散々世話になったのに、

 悪女にそそのかされて恩を仇で返したらしいぜ。

 ヒドいヤツだよな。そう思わねえか、兄ちゃん?」

「まぁ・・・そう・・・なんですかね?」

「平和を守る為に私情を捨てるなんて、俺にはできねえよ。

 さすがは、勇者チート様だ」


 僕のことかな?悪女は真田さん?苦笑いで返すことしかできない。

 まぁ、チートや西都市セイ側の視点で見れば、間違ってはいないんだろうな。でも、ちょっと気にくわない。あの戦いで、チートは部下の白騎士達をカス呼ばわりして、消耗品として扱っていた。それなのに、生き残った白騎士が、チートを英雄や勇者として宣伝するだろうか?チート本人が武勇伝を自慢して廻っているようにしか思えない。



「あ~・・・もう、超ムカ付くっ!」


 宿までの帰路で、真田さんはずっと文句を言っていた。


「あのオッサン(酒場で話しかけた人)に怒っても意味無いんだけど、

 超ぶん殴ってやりたかった!」

「悪女扱いは酷いよね?」

「あたしが怒ってるのはそこじゃないっ!

 どっちが『恩を仇で返してる』っての!」

「・・・ん?」


 たくさん世話になったのに、喧嘩別れをして、その後成り行きとは言え、対立したのは事実。櫻花おーちゃんの一件が引き金になって、憎んでいるのも事実。チート側の視点で見れば「僕が恩知らず」で間違いないのに、なんでそこに怒ってる?真田さんって、一方的な物の見方しかできないタイプじゃないよね?


「なんで尊人くんは怒ってないの?」

「真田さんを悪女扱いしてんだからムカ付いてるよ」

「そこじゃないってばっ!

 チートってさぁ、尊人くんがいなかったら、学校でとっくに孤立してたのにさ!

 超お人好しな尊人くんのおかげで、ギリ孤立しないで済んでたのにさ!

 全然、尊人くんのことありがたく思ってないじゃん!

 なんか、悲劇のヒーロー気取っちゃってるみたいだけどさ、

 尊人くんに『恩を仇で返してる』のって、アイツじゃん!」

「・・・・・・・・・ん?」


 真田さんの言ってることが、ちょっと解らない。


「あのさ、友達ゼロなのは僕の方だよ。

 智人トモ・・・チートが仲良くしてくれたおかげで・・・」

「尊人くんさぁ・・・

 そんなんだから、藤原ふーみんから『自己評価が低い』って言われんだよ!

 尊人くんの場合は、『孤立してる』って勝手に思ってるのは尊人くんだけ。

 人見知りすぎて、輪に入るのに時間がかかっちゃてるだけ。

 尊人くんを評価してる人・・・結構いるよ」

「例えば、早璃とか・・・ね」


 黙って聞いていた長野さんが、急に口を挟んできた。


「まぁ・・・否定はしないよ」


 即座に真田さんから「私が評価してるわけ無いじゃん」と否定されるかと思ったけど、真田さんは肯定をしてくれた。


「・・・あ、ありがと」


 基本的に褒められるのは苦手だけど、特定の相手から褒めてもらえるのは嬉しい。この世界に転移して以降、真田さんから一定の評価をされて頼ってもらっている自覚はある。


「真田さんの意見に賛成。

 源君って、いつもチートと一緒にいて僕等には見向きもしないし、

 僕等が話しかけても素っ気ないけどさ、僕や俊一(柴田)は結構評価してるよ」


 基本的に褒められるのは苦手なので恥ずかしくなってきた。でも、この世界に転移して以降、吉見くんや柴田くん、藤原くんや近藤くんからちゃんと相手にされているのは自覚している。


「ま・・・まぁ、いいじゃん!この話は止めようっ!」

「そーゆーふうに、話をぶち切って素っ気なくコミュ障ぶるところだよ」

「学校にいる時に比べたら、だいぶマシに成ってるんだろうけどさ」


 この話題は恥ずかしいので打ち切ろうとしたら、即座に吉見くん&真田さんからダメ出しをされてしまった。


「・・・ご、ごめん」


 まさか、今更、学校生活のダメ出しをされるとは思ってなかった。

 皆が僕を相手にしていないのではなくて、僕が皆を相手にしていなかった?現実世界に戻ったら、もう少し視野を広げる努力をしなきゃ・・・かな?



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