36-1・懐かしい西都市
真田さん&僕、長野さん&吉見くん、輪島さん&由井さん、我田さん、楠木くん、司、総勢9人で6頭の馬を駆って南西村に入る。
輪島さんと我田さんの特殊能力のおかげで、龍造寺先生にアッサリと合流できた。先生は、秘境狩りから逃れ、現実世界に戻ることを諦めて、ミナーシャでひっそりと縫製の仕事をしていたけど、僕等の説得に応じて合流を受け入れてくれる。
「みんな頑張っていたのね。嬉しいわ」
龍造寺梨華。理科の先生。二十代前半。若くて可愛らしいので生徒からの人気はあるが、ちょっと舐められている。
3日後には、仕立てられた複数の衣類が馬車でサウザンに運ばれるので、龍造寺先生は相乗りをすることになった。僕等は、今更、先生に頼らなければ何もできないほど弱くはない。
「私は南都市の武藤さんのところに行って、皆が戻るのを待つわ。
みんな、無理をしないでね」
輪島さんに余力のコンパスを使ってもらったら、和田さんの位置は北東、若林さんの位置は真北を示した。
「和田さんは帝都、若林さんは北西村で間違いないね」
その日はミナーシャの宿で一泊をして、僕等は先生と分かれて西都市へと向かう。
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西都市が見えてきた。あの町を発ったのは、もう30日以上も前になる。今にして思えば、セイで智人の庇護を受けて生活をしていた頃が一番平穏だった。でも、全ての行動をチートに指図されてるみたいで窮屈だった。多分、今の方が充実をしている。
「尊人くん、何考えてる?」
僕の緊張が前で馬を操っていた真田さん(相乗り)に伝わったのかな?干渉に浸っていたら声を掛けられる。
「シリーガルさんとバクニーさん、どうしてるかなって思ってね」
僕等がセイに住んでいた頃は、2人ともチートにベッタリで、見ている僕達が胸焼けをする(もしくは、コイツ等、Hしか興味無ーのかって思う)くらいだった。だけど、ホワイさんは「お嬢様達は蔑ろにされている」と言っていた。
「チートと一緒に帝都にいるのかな?
それとも、セイのホーマン屋敷に残っているのかな?」
「お屋敷に残っていたら、久しぶりに会いたいね」
長野さんが馬を寄せてきて、歩調を合わせて並走する。
「早璃の魔法の先生だっけ?」
「教えてもらったけど、教え方がすっごい下手だから、先生ではないかな。
尊人くんの方が上手に教えてくれて、あたしの先生は尊人くんだよ」
「へぇ~・・・源の教え方が上手なの?早璃の物覚えが早いの?どっち?」
「真田さんの物覚えが早いんだよ。
・・・コツを教えて直ぐに真田さんに追い抜かれちゃったからね」
真田さんの過剰評価が恥ずかしくなって照れ隠しで誤魔化す。
「結局、魔法を使えてるのって、源君と真田さんだけだもんね。大したもんだよ」
長野さんと馬の相乗りをしている吉見くんも褒めてくれる。
「真田さんは魔法を飛ばせるけど、僕は密着して伝達させるだけ。
『使える』とは言えないよ」
真田さんは間違いなく魔法の才能有り。火の玉を飛ばす魔法は以前から使えるし、南都市では上府さんから魔法の本を借りて、雷を飛ばす魔法と相手を凍らせる魔法も覚えた。このままこの世界で生きていけば、相応の魔法使いになれそうだ。・・・まぁ、この世界で生きていくつもりは無いだろうけど。
「ホーマン姉妹ってどんな人なの?」
チートとは決裂したけど、僕と真田さんは、ホーマン姉妹には悪い印象を持っていない。その空気を察した長野さんと吉見くんが、話を広げてくる。
「すっごい良い人だよ。
真田さんの銀の胸当て、超高価なのにシリーガルさんはくれたんだよ」
「へぇ~、いいなぁ~」 「すごいじゃん」
「おっぱいマウント取ってくるから、凪ちゃんも気を付けた方が良いよ」
「おっぱい?」 「なにそれ?」
「バクニーちゃんなんて、いつも、襟が大っきく開いている服着てて、
わざと胸を見せているような感じ」
「急に話変わった?」 「なんで胸の話?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
しくじった。銀の胸当ての話題は禁句だった。真田さんはバクニーさんの人間性は好いているけど、バクニーさんの胸には悪い印象を持っていたっぽい。
真田さんがちょっと不機嫌になったので、長野さんと吉見くんが首を傾げながら僕に説明を求める。
「まぁ、ちょっと色々あって・・・」
真田さんが装備している銀の胸当てって、メッチャ高性能で、魔法を使う真田さんには無くてはならない鎧なんだけど、元を辿ればホーマン姉妹が「胸が大きくて装備できないから要らない」「真田さんなら丁度良い」と言って真田さんにくれたのだ。
「尊人くんも、バクニーちゃんの男に媚びた格好はありえないと思うよね?」
「まぁ・・・え~~~と・・・・うん・・・まぁ・・・」
ごめん、嘘を付いています。「バクニーちゃんの男に媚びた格好」は男子的には嬉しいです。目の前で屈まれると、ちょっと目のやり場に困るけどね。
やや余談になるけど、長野さんのサイズなら、バクニーさんはともかく、シリーガルさんに「おっぱいマウント」とやらを取られることは無いだろう。
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