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35-4・僕の改善点

 富醒・レンタルで使える特殊能力のバランスが良すぎて弱点になっている。このダメ出しは想定外だった。

 ブラークさんから「戦いの主導権を握って真田さんが戦いやすい状況を作れ」とアドバイスを受けてからは、そのスタンスを心掛けていたつもりだけど、それでは相手から予想されやすいってことだ。なら、どうすれば良い?


「ねぇ、吉見くん。もう少しアドバイスもらえないかな?」


 お姫様抱っこから落とされて地面に寝転がっている吉見くんに手を差し出して立ち上がってもらう。


「仲間に不足してるスキルを補うのが不正解ってことは、

 充実してるスキルに被せるってこと?」


 僕がレンタルする特殊能力は、全て1/3の制限が掛かってしまう。例えば、アーマーファンブルとファイヤーウインドミルを併用しても、長野さんの槍の貫通力と穂先から発する竜巻には敵わない。アジリティの素早さよりも、真田さんの本能的に予測する回避力の方が優れている。ルーラーによる対戦相手への行動制限よりも、楠木くんが地震で発生させる行動制限の方が効果がある。ヒールは発動しっぱなしにしておかないと効果が無いので、他の特殊能力を使えなくなって戦力として役に立てない。

 仲間達では代用が利かないのはリターンだけ。言うまでもなく、戦闘で仲間をサポートすることはできない。


「そうだね。不足を補うスタンスは間違ってはいないよ。

 相手がモンスターや、君の手の内を知らないこの世界の住人なら有効だよ」

「相手が転移者だと、僕は無力ってこと?」

「それは君次第だろうね。

 君に身近なところで例えるなら、黒騎士のブラークさん。

 あの人の戦闘経験からくる臨機応変な対応は、僕の判断力より正確で早い。

 だけど、強いはずのブラークさんが、チートの火力ゴリ押しには勝てなかった。

 そして、チートは君の性格やスタンスを知っている。

 前の戦いで、織田さんを見た途端に君が何もできなくなった。

 アレは、君の性格を見抜いていたチートの駆け引きなんだろうね」

「・・・うん」


 指摘されなくても解っている。あの時の僕は、倒れていく仲間達を狼狽えながら見ているだけだった。同じ戦力外でも、キチンと戦況を分析していた吉見くんの方が役立っている。


「多種の特殊能力をバランス良く持ってるから、仲間の不足部をフォローできる。

 だけど同時に、全ての能力に制限が掛かっているから脆弱。

 君が何を使うかを予測して、抵抗できるようにしておけば、ほぼ無力化できる。

 今の戦いでは、『ルーラー』を想定できたから、足を止められても動揺せずに、

 『次に何をするか』を決めて津田くん達に伝達しておいた。

 『ルーラーを起点にして総攻撃を仕掛けてくるから序盤は防御に専念する』

 『僕が囮になって、君達を楠木くんの射程圏に引っ張り込む』とね」


 やっぱり吉見くんは凄い。まるっきり僕を手玉に取っている。だけど、吉見くんは「ブラークさんの方が凄い」と言って、チートはブラークさんを凌駕した。


「君は多種多様な手札を持っている。

 でも、その長所で、仲間の不足部をサポートするのは基本中の基本なんだよね。

 これからの戦い・・・チートとの決戦で重要になるのは、

 その多種多様な手札で、どうやって相手の裏をかいて隙を突くか」

「・・・うん」

「君が僕等と合流したばかりの頃にさ、

 特殊能力を全く使わない作戦で藤原くんを追い詰めて慢心を砕いたよね。

 あれは驚いたよ。あんな戦い方ができる君を凄いと思った。

 どうやって、あんな突飛な作戦を思い付いたの?」


 あの時は、僕だけが藤原くんから受け入れてもらえず、追放される寸前だった。だから捨て身で挑んだんだけど、なんであんなに必死だったんだろう?


「・・・ああ、そっか。真田さんを取られるのがイヤだったんだっけ」

「真田さん・・・なるほど。

 確かに君は、真田さんを特別視してるね」

「・・・うん。本人には言わないでね」


 吉見くんには、僕が真田さんに特別な感情を持っていることがバレている。


「例えばさ、僕には、『君が真田さんを囮にする』なんて想定をできない。

 君はそれを絶対にしないって思ってる。

 だから、君が真田さんの特殊能力を借りた状態で真田さんを突撃させても、

 丸裸な囮とは思わずピークエクスペリエンスを警戒する。

 そして、真田さんを倒した時点でピークエクスペリエンスへの警戒心を解く。

 その隙を突いて、君がピークエクスペリエンスを発動させて突入すれば、

 僕は想定外過ぎる状況に対応できなくなって、討たれるだろうな。

 『相手の裏をかく』ってのはそういうことだね」


 言葉で説明されれば「なるほど、そんな作戦のある」と思える。だけど、吉見くんが想定をしていない以上に、僕は仲間を・・・特に、真田さんを囮に使う選択肢なんて実行できない。

 

「君がサポートに廻って誰かにチートを討ってもらうなら、君は今のままで良い。

 戦力さえ整えば、チートを討つ作戦は僕が考える。

 でも・・・多分だけど、君の考えは違うよね?」

「・・・うん」


 チートを倒すのは僕の役割だと思っている。誰かに任せれば気が楽だけど、それでは「過去の友達」から目を背けて逃げたような気がする。


「だったら、今以上の覚悟が必要だよ。

 藤原くんが集めた完璧な布陣でも惨敗させられた相手なんだからね」


 いつも穏やかな吉見くんなんだけど、今日はヤケに厳しく感じる。まるで、藤原くんと話をしているみたいだ。


「藤原くんが事後を託したのは君だった。

 レンタルの特殊性を考えれば当然なんだろうけど、僕は悔しかった。

 藤原くんの意思を継いでいるのは、君だけじゃないってことね。

 ・・・それに」


 吉見くんが寂しそうな眼をして空を見上げた。


「目の前で大切に思ってる人を失ったのも君だけじゃない」

「・・・え?」

「我田さんを救ったことに後悔は無い。彼女は、今の藤原組には必要な人。

 ・・・だけど、沼田さんが灼熱光の中で消滅する光景・・・今でも夢に見る。

 夢の中の僕は、沼田さんを助けて、笑顔を向けてもらえるんだ」

「・・・そっか。

 何がなんでも、現実世界で再会をして、生の笑顔を見せてもらわなきゃだね」


 僕より何倍も凄い吉見くんも藻掻いている。少しでも追い付くためには、僕は吉見くんの何倍も藻掻かなきゃならない。


「2人して、なに話してるの?」


 真田さんが寄って来た。


「ん?日本の外交戦略について話してた。

 僕は親米派で、源君は親北派だから、意見が対立しちゃってね」

「えっ?僕、親北なの?」


 吉見くんが咄嗟に誤魔化す。


「なにそれぇ~!よく解んないけど、あたしも混ぜてっ!」


 真田さんが僕の隣に座って笑顔を見せてくれる。

 今まで何度、彼女の笑顔に救われ、彼女の叱責に勇気をもらっただろう?

 藻掻くのは辛いけど、いつも真田さんが和らげて、新しい力をくれる。


・ 


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