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35-3・打倒吉見くん

「意地でも吉見くんに勝つ!」


 僕&真田さん&長野さんと、吉見くん&ツカさん&楠木くんの組合せになった。対戦相手には攻撃できる人が楠木くんしかいない。普通ならば「僕達をどうやって楠木くんの射程圏に入れるか?」と「自分達はどうやって同士討ちの外側に出るか?」を考えるだろう。


「だけど、吉見くんは、誰でも思い付く作戦なんて発案しない」


 何度も「誰でも思い付く作戦」の裏をかかれて、気付かないうちに吉見くんのペースに嵌まって敗北した。


「速攻で決めるからね!」


 要は、吉見くんが細々と采配をする前に、さっさと排除すべし。

 吉見くん達が分散をしなければ、同士討ちを発生させてしまうので楠木くんはアースクエイクを発動できない。最初に僕が突っ込んで、ルーラーで3人の足を止め、真田さんと長野さんで吉見くんを倒す。僕等は3人とも飛び道具があり、僕と真田さんは相手を翻弄できて、僕と長野さんは接近戦ができる。残った津田くんと楠木くんは強敵だけど、彼等に対して天敵属性の攻撃が可能なのだ。

 つまり、吉見くんを倒した時点で、僕等の勝ちが決まる。


「行くよっ!わぁぁっっっ!!」


 吉見くん達が構えた直後に突進!


「富醒・レンタル!ルーラー発動!!動くなっ!!」


 3人を射程圏に入れてルーラー発動!藤原くんが発揮するほどの強制力はないけど、1~2秒くらい動きを止めるのは可能だ!


「真田さんっ!長野さんっ!」

「了解!・・・富醒発動・トルネードスピア!」


 予定通り、長野さんが吉見くんに槍の歩先を向けて、竜巻を飛ばした!


「富醒発動・ディフェンダー!」


 ツカさんが遠隔操作した小型シールド3枚で竜巻を防ぐ!だけど、戦闘力ゼロの吉見くんが守られることを、僕は予想していた!


「富醒発動・ピークエクスペリエンス!」

「富醒・レンタル!アーマーファンブル発動!!」


 真田さんと僕が、同時に吉見くんに突っ込む!ツカさんが、全5枚の小型シールドをのうちの1枚を自分の前に残して、残り4枚で吉見くんを守る!真田さんは3枚の小型シールドを潜り抜けられずに足を止められ、僕が振るった剣は小型シールドで防がれてしまう!

 

「はぁぁっっ!!」


 4枚の小型シールドが僕と真田さんに応戦してる間に長野さんが踏み込み、穂先を吉見くんに向けて竜巻を放つ!


「くっ!」


 吉見くんが弾き飛ばされて尻餅を付く!これで、相手チームの司令塔が脱落!未だ、ツカさんが楠木くんの近くにいるため、楠木くんはアースクエイクを発動できない!あとは、楠木くんの射程圏から逃げて、飛び道具による攻撃に専念すれば勝てる!


「真田さん!長野さん!直ぐに散開してっ!!」


 僕等が楠木くんから距離を開けようとしたその時!


「富醒発動・アースクエイクスタンプ!」

「えっ!?」 「うそっ!」 「マジでっ!?」


 味方のツカさんが射程圏にいるのに、楠木くんは特殊能力を発動!地面が揺れ、僕&真田さん&長野さんと、同士討ちを喰らったツカさんが一斉に転倒する!

 これで、4人がまとめて脱落。楠木くんだけが残り、僕等のチームは敗北をした。


「良い作戦だったけど、一歩及ばず・・・だね」


 吉見くんが笑顔で起ち上がって、僕に手を差し出す。その表情からは「真っ先に脱落をした悔しさ」は微塵も感じられない。


「もしかして・・・吉見くんの作戦通り?」

「うん、そんな感じ。

 模擬戦じゃなくてリアルな戦闘なら、こんな無茶な作戦は立てないけどね」


 吉見くん自身が囮となって誘い込み、ツカさんを動かさないことで楠木くんのアースクエイクは発動しないとミスリードして、僕等を仲間諸共に倒す作戦。見事にハマってしまった。


「吉見くん、最強すぎるでしょ」


 吉見くんの手を掴んで、引っ張られながら立ち上がる。


「手の内を明かすとさ、源君のレンタルで使えるの特殊能力バランスが良すぎて、

 逆に読みやすいんだよね」

「ど~ゆ~こと?」


 バランスが良いのに弱点になっている?意味が解らない。


「トドメのアーマーファンブル、牽制のウインドミル、攪乱のアジリティ、

 相手の行動制限をするルーラー、回復のヒール、逃走のリターン、

 戦闘に必要な能力が、ほぼ全て揃っているよね」

「うん・・・それがダメなの?」

「バランスが良すぎるから、仲間に不足してるスキルを埋めるのを前提にして、

 工夫をする必要な無くなっちゃってる。

 その所為で、基本的な作戦ばかりになって、攻略しやすいんだよね。

 しかも、特殊能力の全てに制限がかかって、『器用貧乏』ってヒント付き」


 今の模擬戦では、真田さんが魔法による牽制と、先読みをした動きで攪乱をできる。長野さんは、竜巻による牽制と接近戦でのフィニッシャーをできる。だから僕は、サポートスキルのルーラーを発動させた。


「僕は源君がルーラーを使うって予想してたよ。

 僕の特殊能力は敵味方のデータが詳細なほど、

 勝つ可能性が高い戦略ストラテジーを導き出せる。

 僕が予想した通りの選択をした時点で、君の勝ち筋は無かったってことね」

「なら、どうすれば良かったんだろう?

 みんなで楠木くんの射程圏外から飛び道具で攻撃するって案もあったんだけど、

 そっちの方が勝てたかな?」

「いや、そのパターンも予想してたよ。

 距離を空けられると、僕等が攻撃する手段は無いからね。

 だから、もし君達が遠距離攻撃に専念した場合は・・・」 


 吉見くんが楠木くんとツカさんに視線を向けて合図を送る。


「フォーメーション・パーフェクト!・・・やるよ」

「おうっ」×2


 指示を受けた楠木くんがしゃがんで、ツカさんが楠木くんの首に跨がる。ツカさんを肩車した状態で楠木くんが立ち上がり、吉見くんをお姫様抱っこした。

 ツカさんが小型シールド5枚を周りに展開して、楠木くんが四股を踏む。地面が揺れるんだけど、吉見くんとツカさんは楠木くんの上にいるので、揺れの干渉を受けない。


「源君と長野さんの飛び道具は接近戦ほど怖くない。

 真田さんの魔法は厄介だけど、連射ができないし、数発撃てばガス欠になる。

 このフォーメーションなら完璧に防御できるし、

 接近してアースクエイクを発動しても、僕と津田君はダメージを受けない」

「・・・な、なるほどね」 


 フォーメーション・パーフェクト恐るべし。ただし、メッチャ格好悪い。男子3人が戯れているようにしか見えないフォーメーションだ。


「なんだ、オマエ等?男3人で密着して何やってんだ?気持ちわりーな」


 お屋敷の中にいた武藤さんが窓から顔を出してダメ出しをする。途端に、楠木くんが、抱っこしてる吉見くんを手放して、肩車中のツカさんを振り落とし、武藤さんに向かって照れ笑いをしながら軽く手を振った。


「あ・・・フォーメーション・パーフェクトが瞬殺された」


 完璧と思えた陣形だけど、武藤さんには敵わないらしい。




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