35-2・ストラテジー
真田さんがリーダーに就任した同日と翌日、輪島さんと僕の位置確認を使用限界まで発動させたあとは、「次の日のコンパス待ち」になる為、南都市に滞在をする。朝一でコンパスを発動するので、そのあとの丸一日が余るのだ。もう生活費の心配は無用なので、面倒なバイトなどせずにノンビリと・・・
「そんなわけないでしょっ!」
「・・・だよね」
真田さんの提案で模擬戦をすることになった。戦闘系の特殊能力を持っているのは、僕と真田さん、長野さん、楠木くん、そして司。5人が、カミフ屋敷前の広い庭に集まる。
「ツカさんの特殊能力、超便利だね!」
「だろっ!この能力のおかげで今まで生き残れたんだ」
ツカさんの富醒(特殊能力)は、ディフェンダー。発動すると遠隔操作タイプの直径20㎝くらいの丸盾が5つ出現して、敵の攻撃を防御してくれる。シールドから発せられる魔力で魔法も防御できる優れ物だ。
最初の半日くらいは入れ替わりで個人戦を繰り返す。
楠木くんがアースクエイクスタンプを発動すると、ツカさんがいくら防御しても凌げない。長野さんのトルネードスピアはミドルレンジ~ショートレンジの攻撃ができるので、楠木くんが技を発動する前に攻撃を当てられる。真田さんがピースエクスペリエンスを発動すると、長野さんの攻撃は読まれる。ツカさんがディフェンダーを展開すると、パワー不足の真田さんでは防御を抜けない。そんなパワーバランスになっていた。
ちなみに僕は、多種の特殊能力を使えるけど、全てが中途半端なので、上手くハマれば誰にでも勝てるけど、選択する特殊能力をミスると誰が相手でも惨敗する。
・・・ごめん、ちょっと都合良く言っちゃった。たま~に上手くハマって勝つけど、メンバー中で一番負けていた。
「源君、手を抜きすぎ!それじゃ訓練にならないよ」
見学していた吉見くんにダメ出しをされてしまう。
「えっ!?怠けてるつもりは無いんだけど・・・」
「対戦相手が仲間だから、多分、無意識に力をセーブしてる。
特に、女の子と戦う時は露骨すぎ。
いつもの悪いクセが出ちゃってるから黒星だらけなんだよ」
「それ、あたしも思ってた!『やる気無いの?』って次元だよ!」
真田さんからも便乗ダメ出しをされてしまう。
確かに、真田さんや長野さんと模擬戦をする時は、「鞘入りの剣でも殴っちゃダメだろ」と思いながら戦っているので反論できない。
「源君の場合は、藤原君から『負けたらクビ』って追い詰められて、
慌てて本気になってたくらいの超スロースターターだからね。
『自分が負ければ終わる』模擬戦では、闘争心に着火しないんだろう」
さすがは、旧藤原組時代から一緒にいた吉見くん。よく存じてらっしゃる。
「個々の能力を磨くのも良いけどさ、今後に備えて集団戦もやってみよう。
『自分だけじゃなくて仲間も負ける』の方が、源君が真剣になるだろうし」
吉見くんの提案でチーム戦をしてみることにした。
「僕も参加させてよ」
「吉見くん、戦闘系の特殊能力じゃないけど大丈夫なの?」
「特殊能力がどのくらい通用するか試してみたいんだ。
どのみち3人と2人の模擬戦になるんだから、
2人のチームに戦闘力ゼロの僕が加わるって考えれば、特に問題は無いよね」
チーム分けは「色々なパターンを試したい」って理由で、戦力の偏りに関係無く、一戦ごとにクジ引きで決める。
「先ずは、僕と楠木くんと長野さん」
「あたしと津田くんと吉見くんのチームだね」
ルールは、武器(鞘入り)を体のどこかに当てられたら死亡扱い。楠木くんが発動するアースクエイク(威力調整)で転倒したら死亡扱い。僕の火の玉、真田さんの魔法、長野さんの竜巻などの飛び道具(威力調整)が体に当たったら死亡扱い。対戦相手だけでなく、同士討ちも有効。つまり、楠木くんのアースクエイクで仲間が転んだら死亡扱い。
「僕が津田くんを抑えるから、長野さんは真田さんを牽制して。
楠木くんは、隙を見てアースクエイクをお願いね」
こちらには、ミドルレンジ~ショートレンジに対応できる長野さんと、全体攻撃ができる楠木くんがいて、戦闘能力ゼロの吉見くんは相手チーム。僕がルーラーで津田くん達の動きを止めて、入れ替わりで楠木くんが飛び込んでアースクエイクを発動させれば、まとめて倒せる。僕は楽勝できると思っていた。
「マジで?」
「・・・嘘でしょ?」
僕達は見事に惨敗した。ツカさんが離れた場所から操るシールドに翻弄され、対戦相手が射程圏に寄って来ないので僕はルーラーを使えず、僕が楠木くんの近くから満足に動けないのでアースクエイクは発動できず、集中力が途切れたところで真田さんに飛び込まれて先ずは僕が死亡(扱い)して、次に長野さんが倒され、最後に楠木くんが離れた場所から真田さんの魔法攻撃を喰らってトドメを刺された。
「次っ!チーム分けっ!!」
僕と真田さんと吉見くんが同じチームになった時は、僕がアジリティとファイヤーウインドミルで対戦相手を徹底的に翻弄して、焦れた楠木くんが僕諸共に味方の長野さんとツカさんをアースクエイクで葬った。その後も、組合せを変えて模擬戦を続ける。
「あれ・・・もしかして吉見くん、全勝してる?」
「うん」
吉見くんが加わるチームは戦力が少ない。だから、吉見くんがいないチームの方が有利だと思っていたのに、吉見くんの作戦に翻弄されまくっている。




