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35-1・新生藤原組の進路

 真田さんがリーダーに就任した同日、僕は北条くんの位置確認をする。


「北北東。北東村ペイイス東宿場ミドオリエンだね」

「・・・あれ?平家さんと同じ方向?」

「もしかして一緒にいる?」

「かもしんないね」


 翌日、輪島さんが龍造寺先生の位置確認をしたら、コンパスは西北西を示した。


南西村ミナーシャだね」


 これで、生存しているけど所在不明の転移者達の位置確認が一通り終わった。あとは、「各町をどう経由して、効率的に仲間を集めていくか?」になる。10人一塊で動くのは目立ちすぎるから、グループ分けで分担するべきかな?でも、捜索には輪島さんと我田さんがいた方が良いから、やっぱり10人一塊が良い?


「輪島さん、念のためにチートの位置を確認してもらえる?」


 吉見くんが回数制限の余力で、更に位置確認を依頼する。今はまだチートとの遭遇を避けるべき。チートの所在を確認しておくのは重要だ。


「あれ?北にいる?」


 チートは西都市セイにいて、コンパスは北西を示すばかりと思っていた。これで「直線的に北上をするのは危険」ってことが解った。


「チートと一緒にいるはずの仲間達の位置も確認できるよね?」


 チートと一緒にいるのは、協力者の安藤さんと、「保護」と言う建前で捕らわれた菅原さん&前田さん&和田さん。


「和田さんならコンパスで記憶してるから、回数制限に関係無く確認できるし、

 生徒会長の菅原さんならイメージできるよ。

 どっちを確認すれば良い?」

「2人ともお願い。それから、源君は前田さんの位置確認をしてみて。

 意味の無い位置確認になるかもしれないけどさ、

 誰か1人でも西都市セイに残っているなら奪取したいんだ」

「なるほど、理に適ってる」


 位置確認の結果、残念ながら3人とも「北」と示された。


「ごめん、特殊能力コンパスの無駄遣いをさせちゃったね」


 吉見くんが謝罪をする。だけど僕は、今の確認が無駄とは思っていない。むしろ、今の確認で、考える余地が出てきたと感じている。


「3人とも一緒ってことは、素早さを要する少数精鋭の移動じゃなくて、

 それなりに大規模な移動ってことだよね?

 どこで何をするつもりだろう?」

「もう一度、北都市ノスに侵攻?」


 チートはノス軍を正面から破り、南都市サウザン軍と東都市アーズマ軍を奇襲で沈黙させ、内地では無双状態になっている。今更、ノスを攻撃する意味が有るとは思えない。


「まさか、詩ちゃんを捕まえる為に?」


 チートは、ノスに侵攻して櫻花おーちゃん達を捕獲した。菅原さんや和田さんも、同じような条件で捕獲された。だから、「同様の行動をしている」「上杉さんが危ない」と考えて真田さんが不安になるのは理解できる。


「大丈夫。上杉さんを信じよう」


 櫻花おーちゃんはオブシディア騎士団に所属して有名になっていたからチートの耳にも入った。ルービイ騎士団に所属をしていた菅原さん達や、サファイ騎士団に所属していた和田さんも、多分同じように有名になってしまった。

 だけど、上杉さんは息を潜めている。僕等は真北の都市には全部行っているのに、上杉さんの噂を全く聞かなかったのが、その証拠だろう。


「それが、おーちゃんと上杉さんの決定的な違いだね」

「そっか・・・そうだよね。

 詩ちゃんなら、もしチートが近くに来ても、上手く隠れてくれるよね」


 チートがおーちゃんを捕らえたのは、袂を別った僕への当てつけ。



 まだ智人チートと友達だった頃。


 僕と智人トモは、一緒にオンラインのアクションゲームをしている。

 トモロー(智人が操作するキャラ)は、ザコモンスターの群れを見ると、飛び込んでいって片っ端から切り捨てる。モンスターが逃げても、追っ掛けて殺害する。


「うわっ!皆殺し?大量殺人?可哀想じゃない?」

「モンスターなんだから『殺人』は違うぞ。それに『皆殺し』じゃなくて無双な」


 画面に映るその光景は、武器を持った高校生が小学生の群れを蹂躙しているように思えてしまう。弱い者いじめみたいで、僕には「無双」はできそうにない。


「おい、尊人ミコ、なにやってんだ?」


 ゲンジロー(僕が操作するキャラ)が、モンスターの落としたアイテム(トモロ-が獲得を放棄)を回収する。トモローが虐殺したモンスターのアイテムを拾っているんだから、「トモの弱い者いじめ」を批難できないんだろうな。


「ザコのドロップアイテムなんてゲットする価値無いぞ」

「でも、売れば少しくらいはお金になるでしょ」

「ミコ、セコいな~」


 皮肉られるけど、トモは良いヤツなので、僕がアイテムを拾ってる間は先に行かずに待っていてくれる。



 臆病で念入りなのは僕の領分で、チートは僕のそう言うスタンスを苦笑いしてた。チートはそう言うヤツ。

 つまり、上杉さんには申し訳ないけど、天狗になっているチートの眼中に、上杉さんは入っていない。上杉さんがチートの前に現れない限りは、被害に合うことはないだろう。この予想を真田さんに説明する気は無いけどね。


「チートが遠征する目的はなんだろう?」


 弱い者いじめをしてイキるのが目的なら、北都市への再遠征はありえる。だけど、ショボいドロップアイテムを拾う時間を惜しむチートが、今更、時間を掛けて無意味な遠征をするとは思えない。


「北都市じゃないなら帝都遠征?・・・まさかね」


 吉見くんが物騒なことを言う。この世界の王様を追い落として、自分が取って変わる。無双状態のチートなら、ありえない話では無い。でも、そこまで大それたことをするだろうか?

 現実世界の情報化に慣れすぎてしまったため、数十㎞先の情報すら把握できない現状をとても不便に感じてしまう。


「考えたところで答えは出ねーし、

 仮にチートが帝都遠征をしてたとしても私達には関係無いだろ」

「うん、そうだね。僕等にできることをやろう」


 武藤さんが、不確定な不安要素を切って捨てたので、同意をする。こういう時、キッパリと割り切った判断ができる武藤さんみたいなタイプがいてくれると心強い。


「チートが真北にいるなら、僕等は北への直進を避けて動くわけだよね?」


 北西と北東にいる仲間と合流するためには、大回りで西都市セイ東都市アーズマのどちらかを経由することになる。だけど、可能ならばチートの勢力圏セイは通りたくない。つまり、よほどの理由が無い限り、僕等の選択肢はアーズマ経由の一択になるのだ。


「ねぇ、吉見くん。

 進路を決める前に確認しておきたいことがもう一つあるんだけど・・・

 白騎士のホワイさん、今はどこにいるんだろう?」


 ホワイさんとは、チートの副官みたいな立場の人。だけど、彼の忠誠はチートでは無くホーマン家に有り、チートの増長を嫌って、「チートを追い落とすためなら協力する」と言っていた。


「なるほどね。

 もし彼が西都市に残っていたら、進路を西経由にして、接触をする価値はある。

 仲間集めは急ぎたいけど、情報は必要だね」


 今日中に旅支度を調えて、明日、僕がホワイさんの位置確認をしてから進路を決めて出発をする。新生藤原組の方針が決まった。



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