智人-16・武皇戴冠まで
帝皇アングを降伏させた日から15日後に、俺が戴冠をすることが決まる。今すぐにでも武皇に戴冠をしたいのだが、物事には準備というものがある。既にトップに手が届いているのだから、モーソーワールドの理を無視して押し進めるつもりはない。
「尤も・・・何もせず、漠然と待つほど無能ではない」
俺がこの国を牛耳れば、「傀儡政権」など有り得ない。全ての方針を俺が決める。
帝皇が低能すぎたために、下らない政権争いが発生した。有能な武皇が即位をすれば。公爵同士の政権争いなど無くなる。
『集え、諸公の騎士達よ!皆が俺に仕える時代が来た!』
その力を示す手段として、東西南北の都市に檄文を送った。公爵達が権力を奪い合う時代は終わり、武皇たる俺が一手に権力を掌握する。
「どの程度の兵が『公爵に尽くしても未来は無い』と理解して集まるかな?」
無論、俺を認めない者など相手にする価値は無い。そのスタンスは、下らないリアルワールドにいた頃から変わっていない。
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5日後、西都市軍5000(パルー騎士500騎含む)、東都市4000(サファイ騎士400騎含む)、南都市軍4000(ルービイ騎士400騎含む)、そして北都市軍2500(オブシディア騎士200騎含む)、それぞれの主を見限って俺の元に参じた。
「オブシディア騎士には俺を恨む者が多いのだから、
初動数が少ないのは仕方が無いだろうな」
それでも、2500も集まったのだから上出来だ。やがては全てを飲み込むつもりなので、特に問題は無い。俺は「俺を認める者」を大事にしてやる。先んじた者ほど、「先見の明がある」と判断して俺から認められやすいだろう。
やや不満なのはパルー騎士だ。俺の偉大さを知っているのだから、もっと集まっても良いはず。忠義の象徴は不在なのだから、もっと俺を頼っても良いはず。
「ホーマン夫人が愚かなのだろうな」
俺はホーマン家を見限った。シリーガルとバクニーすら来ないのは、それが影響しているのだろう。
「まぁ、俺を認めない者に情など無いが」
恋人など、いくらでも帝都で調達できる。安藤愛美、菅原涼華、前田愛央、和田和果穂は、俺が呼べば拒否をしない。来る気の無いシリーガルとバクニーなど不要。応じなかったホーマン家が落ちぶれていく未来が想像できる。
「帝都軍と合わせて約85500の兵が俺の指図で動く」
有能な金色の勇士は、紫親衛隊に組み込んだ。ゴールドは、この世界のトップたる「俺だけの色」とする。
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戴冠式にはまだ数日あるが、俺の定位置は謁見の間の玉座になっていた。引退を決めた帝皇を政務で煩わせるわけにはいくまい。事実上のトップは俺なのだから、当然の座だ。
「既にもぬけの殻で、足跡を辿れませんでした」
紫親衛隊のパプールから報告を受ける。
「そうか。仕方あるまい。引き続き情報収集をしてくれ」
北西村に秘境者の若林若葉がいると聞いて、パプールを派遣したのだが、行方知れずとなっていたらしい。それだけではない。北宿場に上杉詩がいると聞いて、数日前に親衛隊のムラサを向かわせたのだが、今回と同様に行方知れずだった。
「揃って行方知れずか」
モンスターか野党に命を奪われたなら良いのだが、些か気になる。
「誰かが秘境者達を集めている?・・・まさかな」
情報網は張り巡らせているのだが、「秘境者が徒党を組んでいる」という噂は聞かない。帝都にいる俺達5人以外に、まだ17人程度の秘境者が生存をしているはずだが、なかなか接触ができない。相応に慎重で警戒心が強いから、今まで生き残ったのだろう。つまり「簡単には見付けられない」と考えるべきだ。
「輪島を得られなかったのは痛恨のミスだったな」
東都市軍と南都市軍の争いに介入して、生かす価値の無い秘境者達を抹殺した後、涼華と愛央と和果穂を獲得した。青騎士の中に輪島もいたらしいが気付かなかった。俺の興味を刺激する女ではないので、逃したことなどどうでも良いと思っていた。
「輪島の富醒・コンパスがあれば、残存の秘境者狩りは楽だっただろうに」
涼華(菅原)の富醒はプレジデント。全秘境者の富醒を把握することができる。その能力で、輪島の富醒を知った。
「最優先で所在を掴みたいのは、吉見、武藤、輪島だな」
俺に楯突いて逃亡をした吉見、リアルワールドでイキっていた武藤、この2人は抹殺対象だ。
「多数決によるリアルワールド帰還を阻止するため、もう少し人数を減らしたい」
涼華と愛央と和果穂の命を奪えば手っ取り早いのだが、俺を頼る者を鞭で打とうとは思わない。
「やれやれ・・・俺もまだまだ甘ちゃんだな」
和果穂(和田)の富醒はコピー。彼女のテリトリーにいる秘境者の富醒ならば、敵味方問わずに、どれか一つを完コピできる(一度解除をすれば、別の富醒をコピーできる)。
つまり、敵の攻撃系富醒だけでなく、愛美の特殊能力封印を2人で同時に使用することが可能。
「5~6人の秘境者が俺に仕掛けてきても、全て無力化できるってことだ。
これは、大きな切り札になる」
涼華の富醒があれば、俺に挑もうとする秘境者の富醒を予め知れるので、初見殺しを防げる。知って対応策を準備できる。愛美と和果穂と涼華、3人の富醒は、武皇たる俺の補佐に相応しい。
「さて、町娘も良いのだが、今日はリアルを楽しむとするか」
愛央(前田)の富醒は使い物にならないが、代わりに愛央は最も俺に従順だ。
「おい、愛央に『今宵の湯女をしろ』と伝えておけ」
俺の気分を害すれば、彼女達は俺の側近という立場を失う。彼女達には「俺に抱かれる」よりも重要な任務など無い。
プレジデント
使用者:菅原涼華
同期の秘境者の富醒を、現時点の熟練度込みで全て把握することができる。
コピー
使用者:和田和果穂
干渉範囲内のいる秘境者の富醒なら、敵味方問わずに、どれか一つを完コピできる(一度解除をすれば、別の富醒をコピーできる)。コピー元の許可は不要で、効果に制限はかからない。
尊人の特殊能力と類似しているが全然違う。尊人の場合は、幾つもストックできる代わりに、効果に制限がかかる。貸す人の許可が無いと使えず、且つ、貸した人は特殊能力を使えない。和田の場合は、1回の発動で1つしかコピーできないが、許可は不要で、効果に制限はかからない。使い勝手は和田の特殊能力が上で、戦略性は尊人の特種能力が上。ちなみに、チートの特殊能力は特別すぎるので、和田が熟練度を上げてもコピー不可能。




