表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/12

28-3・4日ぶりの帝都

 日が暮れる前に帝都テーレベールに到着した。商人さんの厚意に甘えて、馬車で病院まで送ってもらう。


「おう、ドクター!

 大切な客人だ。良い薬を提供してやってくれ」

「しゃーねーな。

 代わりに、南に行くことがあったら、運賃無しで良い薬を仕入れてくれよ」

「おう、任せとけ」


 商人さん一家の掛かり付け医らしい。


「色々とありがとうございました」

「こちらこそ、助かったよ。また何かあったら声を掛けてくれ」


 商人さんを見送り、我田さんを連れて診察室へ。医者が我田さんを診察ベッドに座らせて「矢傷を見せて」と言ったので、真田さんが手伝って我田さんの上着を・・・と思ったら、真田さんに睨み付けられた。振り返った我田さんは、まるで「汚物」でも見るような目をしている。 


「尊人くんのヘンタイっ!

 我田さん、脱ぐんだけどさ。いつまで、ここにいる気?」


 スッカリ忘れてたけど、我田さんの矢傷は肩にある。つまり、今から上着を脱ぐわけだ。下着を着けているのかどうか、この時代に女性の用下着ががあるのかどうかすら解らないけど、どう解釈しても「見て良い」ことにはならない。

 言うまでも無く、吉見くん共々、診察室から追い出されました。


「なんで僕だけ怒られた?」


 立ち会っちゃ拙かったのは納得できる。だけど、なんで吉見くんも同罪なのに、吉見くんは怒られないんだろうか?吉見くんは頭脳明晰でイケてる組だから見てもOKってこと?なんか納得できない。


「鼻の下を伸ばして下心丸出しって感じだったんじゃない?」

「そんな顔してなかったと思う。

 ・・・てか、指摘されるまで、我田さんが脱ぐことに気付かなかったんだけど」


 診察は30分くらいで終わった。治療費について、医者からは「奴(商人さん)に請求するから要らない」って言われたけど、変な借りは作りたくないし、ちょっと高かったけど払えない金額ではないので、ちゃんと支払っておく。


「なんかね、その辺で採取できる薬草の湿布とは違うんだってさ」

「どう違うの?金額的には普通の薬草の3倍くらい高いけど・・・」

「治癒力が普通の薬草の10倍くらい凄いみたい。

 南都市サウザン産のお薬なんだってさ」

「サウザンの周辺で凄い薬草が採取できるってこと?

 それとも、外地の薬草なのかな?」

「お医者さんは合成薬って言ってたよ。

 普通は、葉っぱのまま患部に貼るか、煎じて飲むか、炙って吸うんだけど、

 主要成分だけを液体化して抽出してあるから、効果てきめんなんだってさ」

「へぇ~そうなんだ?

 ・・・てか、聞き逃しそうになったけど、

 薬は薬でも『炙って吸う』は種類的にちょっと違う気がする」


 この世界に「合成薬」の技術なんてあったんだ?少し興味深い。だけど「この世界の文明がどう発展しているのか?」は、今はどうでも良い。


「さて・・・お屋敷に戻ろうか」

「・・・うん」


 帰りたくない。真田さんと吉見くんは何も言わないけど、表情が引き攣っている。多分、僕と同じ気持ちだろう。だけど、他に行く場所なんて無いし、住む家があるのに宿に泊まるわけにはいかない。


「帰っても食材無いし・・・ご飯屋さんでなんか食べてから帰ろっか?」

「・・・うん」

「そうしよう」


 それがその場しのぎってのは皆が解っている。だけど、直ぐにお屋敷に足を向けられず、外食で気持ちを落ち着けることにした。



 藤原屋敷は出発した日のままだった。4日間しか空けていないんだから当然だろう。お屋敷の前には、引く馬を失った二輪車(戦車)がポツンと残されている。

 大広間の椅子は、いくつかはちゃんとテーブルに納まっているけど、いくつかは雑に引っ張り出されたまま。椅子を出しっ放しにする人に対して、いつも、真田さんや土方さんが「ちゃんとテーブルに戻せ」と言っていた。

 4人いて、小部屋は4つある家なんだけど、誰も「一部屋ずつ使おう」とは言わない。真田さんは我田さんを連れて自分が寝泊まりしていた部屋へ、僕と吉見くんは今まで通りの相部屋に入って4日前に使っていたベッドに腰を降ろす。


「この部屋・・・こんなに広かったっけ?」


 4日前までは、この部屋の住人はもう1人いた。僕が藤原組に参加して、この部屋が3人部屋になった時、吉見くんと鷲尾くんは「この部屋に3人はキツい」と言った。確かに、鷲尾くんを含めた3人の相部屋は、とても狭く感じた。


「凄く広く感じるね」


 僕等の部屋と真田さん達の部屋は、どちらも3人の相部屋だった。真田さんが「ふーみんとこーちゃんだけ1人部屋でズルい」と抗議したけど、藤原くんは「俺等は特別」と取り合わなかった。

 3人の相部屋は窮屈なので、寝る寸前までは、誰かが大広間にいて、いつも話し声が聞こえた。


「・・・静かだね」


 遅くまで誰かが大広間で騒いでると、必ず1人部屋の藤原くんが顔を出して「うるせーぞ」「早く寝ろ」と怒鳴りつけた。怒鳴られる頻度が高かったのは、真田さんと土方さんと鷲尾くん。たま~に僕が怒られることもあった。

 今は、まだ遅い時間じゃないし、怒鳴られたわけでもないのに、とても静かだ。


「いつも、どんな話をして騒いでたっけ?」


 僕は皆と輪になって騒ぐのが苦手なので、真田さんに引っ張り出された時以外は、相部屋に隠って静かにしていることが多かった。


「近藤くんの作ったご飯が不味かったとか、道具屋のオッサンがキモかったとか、

 そんなどうでも良い話ばっかりだったような気がする」


 藤原くん&近藤くん&土方さん&鷲尾くんが東に遠征をしていて、この家には僕と真田さんと吉見くんと沼田さんしかいなかった日が2日間ほどあった。その時は「快適」「羽を伸ばせる」と感じた。あの時と同じ4人なのに、今は「快適」と感じない。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ