智人-13・帝都へ
帝皇への弁明が目的なのだから、大軍を伴って無駄な警戒をされるわけにはいかない。俺は、腹心(安藤愛美)と紫親衛隊20人、そして、帝都の民に俺の権力を見せ付ける為に、美しく着飾らせた菅原涼華&前田愛央&和田和果恵を豪華な馬車に乗せて帝都入りをした。
モーソーワールドに転移をしたばかりの頃、ホーマン公の護衛で来た以来になる。
※紫親衛隊とは、白騎士団の選りすぐりで構成されたチートの直属。つまり、チートのイエスマン。
「さすがに西都市のような俺を称える歓声は無いか」
俺の名は帝都でもそれなりに広まっているだろうが、写真や映像が存在しない世界なので、セイ以外では俺の勇姿を知るものは少ない。
まぁ、いい。近いうちに、帝都の民達も「俺が勇者チート」と知ることになる。
「オマエ等はここで待ってろ」
紫親衛隊達が馬で引いている「大型の台車に乗せられた、布で覆われている大きな箱」は帝皇様に献上をするために連れてきた。
大通りで進行を止め、部下共には“それ”の保護と、待機を命じる。
「愛美、案内してくれ。君達は(涼華&愛央&和果恵)は付いてこい」
帝皇に会うより先に見ておきたい場所があった。愛美を先頭にして、少数精鋭で路地に入る。しばらく進んだ先に、それはあった。
「俺に楯突いたカス共の“夢の跡”・・・か」
焼け落ちた屋敷の跡。尊人や藤原が住んでいた屋敷だ。ここに来た目的は、自分の目で藤原への完全勝利の象徴を確認する為。そして、涼華達に「俺に歯向かう愚かさ」を教えてやる為。
「吉見の所在は不明のまま・・・か」
真田を背負った尊人が灼熱光に飲み込まれて消える光景は、今でも目に焼き付いている。あの日、藤原と近藤と真田と沼田と土方と鷲尾、織田と寺内と蓮田と脇坂と我田、そしてミコ、計12人が脱落した。
それ以外にも、遠藤と加藤、目黒、柳生と武田と芹沢と渡辺と木下と毛利、9人は俺の手で葬った。
ミコからは、力石と今川と毛馬内と鰐淵、柴田と綿本、橋本と二宮、8人の脱落を聞いている。
「29人が脱落をして、残った生存者は22人」
※勇者チートは、尊人と早璃と我田の3人が生還したこと、及び、蘇我&近松&野口&分山&根津の5人が脱落していることを知らない。
「あと2人・・・始末をしておきたい」
多数決によるリアルワールドへの帰還は、まだ有効。12人が「帰還賛成」をすれば、転移をした51人全員が、リアルワールドに強制送還されてしまう。多数決を無効にして、全員の意見一致を必須にする為には、生存者を4割以下にする必要があるのだ。
「俺は『帰還』に賛成をする気は無い。
つまり、あと2人脱落させれば、帰還派は俺を排除しなければならない。
しかし、最強の俺を倒すなど不可能だ」
※菅原涼華&前田愛央&和田和果恵がチートに従順なのは、「逆らえば真っ先に始末される立場」になってしまうことを知っているから。
「早急に『帰還派』が12人も集まるとは思えんが・・・
想定外は潰しておきたい」
俺は優しい。俺を求める女を殺すほど非情ではない。
「可能ならば、反乱分子の吉見陽輔、
それから、武藤睦姫あたりを潰しておきたい」
無能のクセに俺を見下していた連中。スクールカーストのトップ・藤原と、常に連んでいた5人。近藤は藤原と共に滅んだ。遠藤と加藤も俺が誅殺した。愛美は心を入れ替えて、藤原を見限って俺に与した。残ったの“目障り”は武藤だけ。
「もうしばらく、愚物の証を眺めていたいが、帝皇を待たせるわけにはいかんな。
さぁ、いくぞ」
愛美&涼華&愛央&和果恵を伴って、大通りに待機させている部下達のところに戻る。
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さすがは帝城と言うべきか。四方を隔てる堅固な幕壁と城門、その内側(下中庭)の奥にある高い盾壁、豪華絢爛な主館、見上げねば視界に入らない主塔。その雄大さは、西都市では圧倒的な存在感を誇るホーマン邸を遙かに超越しており、羨望してしまう。
「この俺の力を持ってしても、簡単には攻略できんだろうな」
城門手前の木造門は「西の勇者チート」と名乗るだけで簡単に通過できた。だが、城門で黄色い鎧とマントを纏ったトーバス親衛隊に止められてしまう。
「通過をするのは、チート殿と、あと1名に限定していただく」
「はぁ?それじゃ、帝皇様への献上品が運べないだろうが。
オタク等が運んでくれるのか?」
「何を献上なされるおつもりだ?確認させてもらうぞ」
黄親衛隊が「大型の台車に乗せられた、布で覆われている大きな箱」に近付こうとしたので、部下の白騎士に指示をして妨害をする。
「俺を疑っているのか?失礼なヤツだな」
「疑うわけではないが念のために・・・」
「あっそう。だったら、帝皇様に伝えてくれ。
『無能な番兵が信用をしなかったので、俺は引き返した』とな」
「なんだとっ!?」
「俺は帝皇様に呼ばれたから来ただけ。
俺から謁見を望んでるわけじゃないから、通してくれないなら帰って当然だろ。
『門前払いするなら、今後は呼ぶな。呼ばれても応じない』とも伝えてくれ。
そんじゃ、お役目ご苦労様!」
早々に引き返そうとしたら、無能な番兵が慌てて止めた。
「し、しばし待たれよ!
私では判断できないので、上司に掛け合ってくる」
「やれやれ、満足な判断ができないなら、最初からそうしろよな無能めっ!
待ちくたびれる前に帰るから、サッサとしてくれよ!」
数分後、番兵より豪華なマントを纏った黄親衛隊がやってきた。騎士長クラスだろうか?
「お待たせしました。ささっ、お通りください」
「栄光のトーバス親衛隊にバカが混ざっているとは思わなかったな。
部下が無能だと上司は大変ですね」
恥ずかしそうに頭を下げてる無能共を嘲笑いながら、城門を潜る。




