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智人-12・帝皇の使者

 朝になり、ベッドから上半身を起こす。隣では町娘が髪を乱したまま、俯せになって寝ている。

 優等生の菅原涼華、洒落っ気のある前田愛央、学年上位の美女(織田櫻花ほどではない)の和田和果恵、3人とも俺の女になった。保護してやった直後は反発をしていたが、今では俺を受け入れて従順だ。

 だが、物足りない。俺に見初められて歓喜をする町娘の方が、まだマシだ。

 俺を見下していた安藤愛美を支配した時の優越感、織田櫻花を手に入れた時の背徳と隣り合わせの高揚感、菅原達3人からは、その愉悦を感じられない。


「登り詰めてしまった俺を昂ぶらせてくれる刺激は無いってことか?」


 ホーマン公の仇討ちを経て、西都市セイの権力と軍隊は完全に掌握した。抵抗勢力の北都市ノスには、軍事侵攻をして俺の偉大さを見せ付けてやった。その後、北勇者ブラークを返り討ちにしたのが決定打になり、歯向かう牙を失ったようだ。南都市サウザンの軍と、東都市アーズマ軍は、片手間で壊滅させた。

 転移者の中で最も目障りだった藤原は排除した。


「もう、俺に怖いものは何も無い。

 『天才』ってのはツマラナイものなんだな」


 唯一救ってやりたかった尊人ミコは、真田程度の女に籠絡され、藤原如き無能に与して、俺に反発するという愚かな行動に出て脱落した。


「あの時から俺は、孤独になってしまったのかもな」


 勇者とは誰からも理解をしてもらえない存在なのかもしれない。虚しさはある。だが俺は「課せられた運命を背負う」と決めたのだから後悔は無い。親友の死は、俺が高みに立つための試練なのだろう。


「あの世で見てろよ、ミコ。俺は登り詰めてやるからな」


 扉が外側からノックされる。


「どうした?」

「帝都から使者が来ていますがどうしますか?」

「やれやれ、これで5度目か」


 北都市ノス侵攻から凱旋した直後に1回目、ノスのゴククア公が暗殺された数日後に2回目、赤騎士団と青騎士団を襲撃したあとに3回目、帝都の藤原邸が焼失したあとに4回目、そして今日で5回目。

 用件は聞かなくても解っている。帝都テーレベールのアング帝皇ていのうからの出頭要請だ。無能な帝皇は、俺への驚異を感じ、「ノス侵攻」「赤騎士と青騎士襲撃」「帝都での焼き討ち」、それらの目的を聞きたいのだろうな。


「面倒臭いが、一度くらいは低脳のバカ面を拝顔してやるべきかな。

 解った。面会してやるから、準備ができるまでもう少し待つように伝えてくれ」


 以前ならば、面会者は広間に通して待たせたのだが、今の俺はホーマン邸から出て宿屋で暮らしている。だから、この部屋に呼んで面会をしなければならない。



 菅原達を連れ帰った翌日、未亡人となったホーマン夫人・ボウインさんから、「娘婿となってホーマン家に入ってほしい」と言われた。


「すまないな、夫人。

 俺は、田舎の領主で終わる器ではない」


 無能ならば、お山の大将も悪くは無い。しかし、俺はモーソーワールドの歴史に名を刻む選ばれし者。時代は俺が羽ばたくことを望んでいる。目の上のたんこぶだったホーマン公の喪失は「虎を野に放つ」を意味しているのだ。


「我が家を栄えさせる気が無いのなら出て行ってください」


 驚くべき言葉だ。勘違いも甚だしい。モーソーワールドの住人は些か思慮が足りないとは思っていたが、ここまで愚かとは思わなかった。


「俺がいるから、ホーマン家は西の頂点を維持できているのだぞ。

 俺を定着させる為に、ホーマン公はシリーガルとバクニーを俺に宛がった。

 決して、所帯を持つ為ではない」


 たった1人の女に束縛されるなど冗談ではない。俺は小さく纏まるつもりは無い。


「今までは堪えていましたが、公爵家のプライドがあります!

 寝室に呼ばれない娘達が、どれほど寂しい思いをしているのかご存じですか!?

 我が娘達を蔑ろにして、外の娘ばかりを連れ込む行為には我慢がなりません!

 娘を伴侶に選んでくださらないのなら、退去してください!」

「俺が滞在してやってる恩を仇で返すとは・・・。

 俺が背を向ければ、何の後ろ盾も無いこの家は、瞬く間に没落する。

 その覚悟があるんだな」

「由緒あるホーマン家は、それほど簡単には倒れません」


 俺は最強だ。既に西都市セイ軍は俺が掌握している。セイの民は、ホーマン家より、勇者たる俺に心酔して支持している。もはや、ホーマン屋敷に留まってやる理由は無い。


「あっそう、なら勝手にしてくれ」 


 どいつもこいつも、何故、俺の優しさを理解できない?増長するアホウには付き合ってられない。

 ホーマン家を見限った俺は、その日のうちに、愛美や菅原達を連れて屋敷を出た。シリーガルとバクニーは泣いていたが、知ったことではない。


「恨むなら、俺ではなく、愚かな母親を恨め」


 西都市セイで最も格式の高い宿に滞在することにした。安藤達には専用の個室を宛がい、俺は一番豪華な部屋を借りた。夜は、安藤達のうちの1人、もしくは、町で見初めた娘を部屋に招き入れる。

 セイの中枢を掌握した俺ならば、宿代くらいはどうとでも捻出できるが、オーナーは「俺からは金は取れない」「むしろ、滞在してもらえるのが誇り」「俺が泊まっているという宣伝効果で充分に稼げる」と言ったので、その言葉に甘えることにした。



「おい、客人が来る。

 俺の余韻に溺れていたいのだろうが、シャキッとしていてくれ」


 “色”は権力者の象徴だから隠すつもりは無い。だが、乱れたベッドで裸同然の女を寝かせたままの部屋に、使者を招くわけにはいくまい。

 町娘を起こし、身支度をして、乱れた形跡を整えてから使者を呼ぶ。


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