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34-3・コンパス

 今後の方針を決めるためにも、先ずは現状を知っておかなければならない。


「誰が生き残ってるか、確かめよう」


 富醒・レンタルでリターンを発動して、2mくらいの光の穴を出現させる。


「リーダーをしてもらう武藤さんには、一緒に来て見てほしい。

 あとは誰が来る?」


 全員が現実世界を見たいだろうけど、まとめて招待をすることはできない。且つ、現実世界の経由は時間が消耗しすぎてしまうので、順番に全員を連れて行くのも避けたい。


「僕が行かせてもらって良いかな?参謀役として見ておきたい」


 チームの軍師を自覚する吉見くんが立候補をする。入口の広さ的には、確実に通過できるのは3人。


「前に見てるけど、あたしも行って良い?」


 真田さんが手を上げた。


「ダメじゃないけど・・・」


 4人だと密着をしなければ通過できない。男子同士で密着するなら気にならないけど、男女で密着はちょっと恥ずかしい。


「あたし、小っこいから大丈夫!」


 真田さんが僕の腕にギュッと密着をしてきた。全体的には鍛えられていて贅肉の少ない真田さんなんだけど、腕には「ああ、女の子なんだな」って感触がシッカリと伝わる。白い光に照らされているんだけど、多分、僕の顔は真っ赤だ。


「なら私はローティーンに」

「僕は源君に」


 武藤さんが真田さんに、吉見くんが僕にくっついて、現実世界への入口を通過できそうな一塊が完成。歩調を合わせて「いっせーのー」で飛び込んだ。



 4人で手分けをして、状況確認をして、異世界に帰還する。僕等的には10分くらいなんだけど、異世界では10時間近くが経過して夕暮れになっていた。早速、居残り組に招集をかける。


「武藤さん達のVIPルームに集合ね!」

「はぁ?オマエ等が私の部屋に入るなんて100年早い!」

「えっ!?上府さんが、打合せ室を兼ねた部屋として貸してくれたはず・・・」

「打合せなんてどの部屋でも良いだろ。尊人達の部屋に集合な」

「狭いよ」

「宴会をするわけじゃねーんだから、狭くて構わん」


 6畳の畳部屋。9人が集まるには狭すぎるんだけど、リーダーの独断で集合場所が決まった。

 布団3つを壁際に積んだ特等席に由井さんが座り、残り8人が空いてるスペースに腰を降ろす。


「イカクセーぞ!オマエ等、部屋ん中で何やってんだ?」

「なんにもしてないよっ!」

「3人部屋でそれは無いっ!」

「尊人くん、イカなんて食べたの?」

「中坊にゃ解んねーだろうけど、そーゆー意味じゃねーんだよ!」


 武藤さんが卑猥なネタを投下。真田さんには「イカ臭い」の意味が伝わらなかったらしいので「まだスレていない」とチョット安心をする。・・・てゆーか、もの凄く狭い。


「残っているのは、チートと安藤さん、菅原さん、前田さん、和田さん、

 それから、津田くん、北条くん、上杉さん、平家さん、若林さん、龍造寺先生、

 僕等9人を含めて、全部で20人しかいない」


 菅原さん達は、チートに捕らえられたから、今も一緒にいるのだろう。早急に所在地を把握して合流したいのは、津田くん、北条くん、上杉さん、平家さん、若林さん、龍造寺先生の6人ってことになる。


「輪島さん、確認できる?」

「うん、やってみる」


 輪島さんの特殊能力・コンパスは、イメージした人のいる方向を教えてくれる。


「若林さん」


 輪島さんの目の前に出現した矢印が、北北西を向いた。


「方角的には、北西村ウェスホク西宿場ミドオチスのどっちかだね」


 この世界には、僕等が把握できていない村落が幾つもあるらしいけど、転移してから何十日も経過している現状で、生活が不便すぎる小さな集落に住んでいるとは思えない。ウェスホクとミドオチスのどちらかにいると考えて間違いないだろう。


「ミドオチスだったらイヤだなぁ~。また7令嬢に絡まれるじゃん」


 真田さんの不満には同意する。僕も7令嬢にはあまり会いたくない(二重人格?ってくらい真田さんが不機嫌になるからね)。


「次、うたちゃんを調べてもらって良い?」


 真田さんが、上杉さんの位置確認を依頼する。仲の良い友達の所在を優先的に知りたいのは当然だよね。


「うたちゃん?」

「上杉詩ちゃん。音楽部の子」

「髪が短くて温和しい子だっけ?」

「髪は短いけど温和しくはない・・・かな。

 輪島さんがイメージしてる『温和しい子』は、多分、沼田縫愛だね」


 なんだろう?ちょっと雲行きが怪しくなってきたような気がするので、確認をしてみる。


「平家さんは解る?」

「うん、結構目立つ子だから解るよ」

「津田くんは?」

「バスケ部でしょ。解るよ」


 僕もバスケ部なんだけど、輪島さんは把握しているのかな?聞いてみたいけど「津田君がバスケ部なのは知ってるけど、源君は知らなかった」と言われそうなので聞けない。


「北条くんは?」

「どんな人だっけ?」

「もしかして、顔と名前が一致しないと探せない?」

「・・・うん。ちゃんとイメージできないと探せないね」

「ダメ元でイメージして一致すれば、位置確認は可能なの?」

「可能だと思うけど、今の私じゃ位置確認は1日に3回が限界だから、

 その場しのぎみたいな位置確認ばっかりしてたら、

 全然ヒットしないまま使用制限に達しちゃうかもしれないよ」

「・・・・・・ん?」


 以前、由井さんと和田さんと渡辺くんとチートの位置確認をして見せてくれなかったっけ?


「特殊能力を発動させた状態で会話をすると、コンパスが記憶してくれて、

 使用制限に関係無く探せるようになるの。

 あの時は、由井さんと和田さんと渡辺くんは、何度でも位置確認できる状態で、

 徳川くんだけに使用制限3回のうちの1回分を使ったの」

「・・・なるほど」


 沼田さんの特殊能力ヒールに使用制限があったのと同じ。便利すぎて「仲間探しは楽勝」と思っていたけど、それほど甘くはなかったらしい。


「1日3回かぁ。計画的に位置確認をしなきゃだね」


 しばらく黙って会話を聞いていた吉見くんが口を挟んできた。


「若林さんを確認したら北北西を示したけどさ、

 別の町じゃなくて、この町の北北西に住んでる可能性もあるんじゃない?」

「ああ・・・そっか。そうだね」


 吉見くんの言う通り。僕等がいる南都市サウザンに隠れ住んでるのに、何十キロも離れている別の村に探しに行ったらただのマヌケだね。


「輪島さんが明確に位置確認できるのは、

 若林さんと津田君と平家さんと龍造寺先生ってことで良いかな?」

「うん、その4人なら間違いなく探せるよ」

「位置確認をするのは明日の朝からにしよう」

「えっ?今日はしないの?あと2回は発動できるよ」

「ここで位置確認しても特殊能力の無駄遣いになる。

 今日はもう遅い時間だからシッカリ休んで、

 明日の朝、この町の一番北に行って確認をしてもらいたい」


 なるほど、この場で位置確認をして矢印の向く方向が南側以外なら、捜索対象が南都市サウザンにいるのか、別の町にいるのか判断できない。でも、町の端で確認をした場合、捜索対象が別の町にいるのか、サウザンに住んでいるのかがハッキリと解る。


「それにチートがずっと西都市セイにいるとは限らないんだから、

 チートの位置も常に把握をしておくべきだよ。

 僕等の行動は、チートと対峙をする前に残り全員を集めるのが前提だからね。

 無警戒に動いて、行った先でチートに遭遇したら話にならない」

「さすがは吉見くん。理に適ってる」


 提案が無ければ、回数制限のある特殊能力を無駄使いしてただろうし、チートの位置確認なんて考えなかった。「急がば回れ」で慎重、且つ、確実に物事を前に進める吉見くんらしい思考だ。


「でもさ・・・輪島さんじゃ探せない上杉さんと北条くんはどうすんの?

 全員集めなきゃならないんだから、無視はできないよね?」


 質問をしたら、吉見くんは人差し指を立てて「ちっちっちっ」としてから、その指を僕に向けた。


「おぉぉぉっっっっっ!!!それだっ!!尊人くんがいるじゃん!」


 途端に真田さんが大声を上げる。


「源君。君は自分を過小評価しすぎ。

 君の特殊能力の凄さを理解していないのかな?」

「あっ!そっかっ!」


 僕の場合は、効果に1/3の制限がかかるので、位置確認できるのは1日に1回くらいだろうか?かなり不便だけど、僕が輪島さんのコンパスをレンタルすれば、真田さんの友達を探すことができるじゃん。


・ 

 

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