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34-2・真田さんと長野さんの模擬戦

 朝早くから、庭で威勢の良い声が聞こえる。真田さんの声だ。確認をしなくても解る。同室の吉見くんも目を覚ましベッドから起き上がった。


「朝から元気だなぁ」

「朝練は、真田さんのルーティンだからね」


 真田さんは、余裕がある時は、毎朝、ジョギングで体を起こし、その後、朝食までは魔法や特殊能力の精度を上げる鍛錬をしている。

 窓を開けて庭を眺めたら、真田さんと長野さんが模擬戦をやっていた。


「真田さんが僕以外と模擬戦やるの初めてかも」


 真田さんにとっての長野さんは、「遠慮無く練習試合を申し込める友人」なのだろう。まぁ、僕の場合は「遠慮無く練習試合を申し込める友人」ではない藤原くんや近藤くんから散々特訓に引っ張り出されたけど。


「富醒発動・ピークエクスペリエンス!」


 真田さんは鞘に入ったナイフを握りしめて突進!長野さんは長い棒を両手で持って、10mほど離れた位置で突きを放つ!


「富醒発動・トルネードスピア!」


 長野さんが棒の先端を向けると同時に、真田さんはその法線上から回避!真田さんが回避した直後の地面で草が弾け飛び、激しい土埃が上がる!

 長野さんが空中に向けて突きを放つたびに、真田さんは法線上から回避して、地面には砂埃が上がる!

 真田さんが地面を蹴った程度で、地面が弾けたりはしない。つまり、長野さんの放った見えない攻撃が地面に着弾してるってことだ。


「トルネード・・・棒の先から竜巻が発生してるってことかな?」


 弾け飛んだ草や土埃は渦を巻くように動いている。ブラークさんの「マジックソード・旋」と同系統の攻撃。土方さんが「腕を回す」という行程で火の玉を発生させたように、長野さんは「突く」の行程で風を発生させると考えて間違いないだろう。


「ミドルレンジから接近戦までが射程圏の長野さんに対して、

 長野さんの懐に入らなきゃ攻撃できない真田さん。

 こりゃ、長野さんの勝ちで決まりだね」


 吉見くんは「長野さんが有利」を予想している。


「そんなこと無いよ。真田さんが手を抜かなければね」


 突きで発生させる竜巻を回避され続けた長野さんが、均衡を崩す為に連続付きを放った!


「わっ!わっ!」


 今までは無駄な動きをせずに紙一重へで回避していた真田さんが、大きく左右に動き回って逃げる!直後に、あちこちの地面に次々と土埃が上がる!

 ブラークさんの「マジックソード・旋」は連続発動か可能なのだろうか?一撃入魂のように思える。長野さんのトルネードスピアの方が風系の攻撃に関しては優れているかも。


「やぁっっ!」


 棒の先端で突きを連射する長野さんに対して、真田さんは掌で発生させた火の玉を飛ばした!


「くっ!魔法っ!?」


 飛び道具を予想せず、突きに専念をしていた長野さんは回避ができない!慌てて棒を手元に戻して、両手でチアリーダーのバトンのように回して(槍シールド)、火の玉を防御した!

 長野さんが攻撃から防御に切り替えた瞬間に、真田さんは長野さんに突進をしている!


「早璃っ!」


 長野さんは慌てて槍を横に振るって牽制をするが、動きを先読みしていた真田さんは身を低くして回避して、長野さんの懐に飛び込んだ!


「凪ちゃん、死亡っ!」

「くっ!」


 真田さんが鞘入りのナイフの先を長野さんのお腹にツンと当てて模擬戦終了。2人は「ふぅ」と一息ついて武器を下ろす。


「凄いじゃん、早璃っ!魔法使えんの?」

「えへへっ!凄いでしょ!

 尊人くんと2人で特訓してるからねっ!」


 真田さんが振り返って手を振ってくれたので、こちらからも手を振り返す。僕等が見学していたことに気付いていたんだね。

 ちなみに僕は、真田さんみたく「魔法を飛ばす」ではなく、未だに「剣や素手で接触中に魔力電流や魔力熱を直接流し込む」しかできない。


「源君、真田さんが魔法で牽制すんの予想してたの?」

「うん、なんとなく・・・だけどね」


 彼女の特殊能力は、「相手の動きを先読みする」だけの能力ではない。そして僕は「真田さんは負けん気が強い」と「真田さんが誰よりも努力家」を知っている。


「前々から思ってたんだけど、源君てさ・・・真田さんのこと好き?」

「・・・へ?」

「噂で『源君→織田さん』ってのは聞いたことあるんだけど、

 帝都で合流してからの君達を見てると『源君→真田さん』って思えちゃってね。

 僕の勘違いだったらごめんね」


 多分「吉見くんの勘違い」ではない。だいぶ前から、僕は真田さんを好いている。だけどそれが、「本心で真田さんに恋をしている」のか、「櫻花おーちゃんが近くにいないから真田さんに目移りした」のか、それどころか「おーちゃんを失ったから真田さんでいいや」なのか、よく解らない。「おーちゃんの代わりに真田さん」なんて真田さんに失礼すぎる。


「ちゃんと答えられなくてごめん・・・僕にもよく解らない」


 この世界に来てから真田さんと接する機会が多いため、「もしかしたら真田さんは僕のことを?」と妄想したことが何度かある。だけど、真田さんは誰とでも仲良くできる子。何の取り柄も無い僕なんかを好きなわけがない。

 それに僕は、現実世界に戻ることができたら、「心に傷を負ってしまったおーちゃんを支える」「僕がおーちゃんを守る」と決めている。真田さんと一緒にいるのは凄く楽しいし、たくさんの勇気をもらえるけど、「本心で真田さんに恋をしている」としても気持ちを伝えるつもりはない。


トルネードスピア

使用者:長野凪

 槍の刺突を放った際に、穂先から竜巻を飛ばす。シュートレンジ~ミドルレンジでの発動が可能。術者自身の槍術込みで、接近戦では最強クラス。


~~~~~


 現時点の尊人は、早璃への恋を自覚しているけど、櫻花への罪悪感が先立っているので気持ちを伝える気は無い。

 作者的には、尊人のこのスタンスは好きでは無い。自分に自信を付けて、「初恋の櫻花を振り向かせたい」なら同調できるけど、尊人の考え方は違う。厳しい言い方をするなら、「高嶺から落ちた櫻花なら手に入れられる」と勝手に考えているようなもの。櫻花が心に傷を負ったかどうかは、櫻花自身が決めることであり、尊人が勝手に決めつけることではない。だけど、浅ましい考え方ではなく、「恋愛1年生なので優しさや純愛を解っていない」と感じながら描いている。

 ここは、最終回までには、尊人なりにもう少しマシな答えを出せる・・・予定。

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