表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/62

33-5・真カミフ様

「どうする?」

「どうしよう?」

「ゴウちゃんさんと由井さん達の話題に割って入れる自信が無いんだけど・・・」


 困惑をしていたら、江戸時代の旅装束(小袖&股引&引廻し合羽を着て、草鞋を履いて、手甲&脚絆&脇差を装備している)・・・てか、江戸時代のヤク○ふうの人が10人くらいお店の中に入ってきて、ゴウちゃんさんを囲んだ。

 任侠集団のリーダー格がゴウちゃんさんの前に進み出る!


「ようやく見付けたよ!」


 ゴウちゃんさんが、殺意満々の目でリーダーを睨み付ける。ゴウちゃんさんて、見た目通りのお尋ね者?今から、江戸時代のヤク○にボコられて簀巻きにされる?


「チィ、なんじゃ!

 せっかく、可憐な友人たちと楽しんどるのに、無粋な奴等じゃのぉ!」

「カミフのオヤジ!

 1人で出歩くなぁ危険じゃと、いつも言いよるじゃないか!」

「その名で呼びんさんな!

 カミフ役にゃあ影武者を立てて、仕事をさせよるじゃろう!」


 ん?数日前に面会したカミフ様は影武者?・・・・・てゆーか・・・


「えぇぇぇっっっっっっっっっっっっっ!!!?」


 僕等は一斉に驚きの声を上げた。ゴウちゃんさんと初めて会った時に、「ゴウちゃんさん=カミフ様」と“あるある”パターンを予想したけど違っていた・・・と思っていたのに、1周廻って、やっぱり「ゴウちゃんさん=カミフ様」だった?なにこの面倒臭い展開?


「パパがカミフ様なの?」

「わしゃ遊び人のゴウちゃんじゃ!」

「パパ、私達を騙すのか!?ホントのことを言ってくれよ!」

「ぬぐぐっっ!」


 ゴウちゃんさんは、ばつが悪そうに黙っていたけど、やがて観念して大きなため息をついた。


「やれやれ、楽しい援交ごっこはもう終わりだな。

 今まで黙ってて悪かった。俺が、真の紙富豪・上府剛太郎かみふ ごうたろうだ」

「マジか?道理で遊び人って言ってるわりに羽振りが良いわけだ。

 でも、パパが紙商人なら納得だな」

「ヒドいよ、パパ。どうして、正体を隠していたの?」

「紙富豪・カミフゴウタロウの名を背負ったままでは、自由に動き回れん。

 自由に動き回れなければ、若い転移者達をサポートしてやることができん。

 俺が財と権力を得た目的は、わけが解らずにこの世界に放り出されて、

 路頭に迷っている転移者達をバックアップしてやる為だからな」


 上府さんの説明が続く。

 彼は、僕達より20年以上も前にこの世界に転移をして、現実世界に帰れなくなった人。最初は目的も無く金儲けをしていた。だが、特に工夫をするわけでもなく、現実世界では当たり前の技術で、知識レベルが低い者達から利益を得ているだけ。まるで「大の大人が小学生から搾取をしている」ように思えて虚しくなった。


「俺は、この世界で得た金と権力を、有意義に使う手段を考えた」


 それが、若い転移者達の支援。


「ユイやムツキ達、俺の手が届く範囲に存在する者達には手を差し伸べた」


 武藤さん達に家と仕事を与えるのは「手を差し伸べる」に該当するだろうけど、由井さんに対しては、勤めていた宿の馴染み客をしていただけ。「手を差し伸べる」は言い過ぎではないのか?


「ユイが転移者と知った時点で、ユイが勤めていた宿は俺が買収した。

 ユイがクビになって路頭に迷わずに済むようにな」


 うわぁ~・・・前言撤回。「手を差し伸べる」の次元を遙かに超越してる。上府さん、由井さんのことが超お気に入りなんだね。道理で宿主さんが由井さんの退職を嫌がったわけだ。由井さんが辞めちゃったら、上府さん的には要らない物件になっちゃうもんね。


「俺の手が届かぬ範囲の者達の為には、

 この世界には存在しないはずの技術を内地に流通させ、

 違和感に気付いて訪ねて来ることを期待した」


 上府さんが、真っ直ぐに僕を見詰める。


「ユイから聞いた。源尊人、オマエが『俺を転移者』と予想した少年だな」


 和紙と藁紙、そして印刷の技術。それらは、中世ヨーロッパと同等の文明の世界では有り得ない技術。僕は、「高額だけど庶民でも本を購入できる」ことから違和感を持ち、「僕達よりも前に転移をした人が技術を広めた」ことに気付いて、紙富豪のカミフ様に辿り着いた。


「雑学好きが、こんなところで役に立つとは思いませんでした」

「俺は、ユイやムツキ達が永住をするつもりでも、生活を保障する。

 だが、可能ならば俺のように『やりがいの無い世界』に取り残されるより、

 『居るべき世界』に戻って欲しかった」


 この世界に残るつもりだった由井さんが「帰りたい派」に変化した。これは、カミフ様にとって興味深い出来事だった。だから、偶然を装って接触をして、代役に面会をする機会を与えた。


「なんであの時にカミフ様ってことを教えてくれなかったの?」

「『カミフがユイ推し』と知ったら、状況に甘えて真剣味が足りんくなるだろう?

 それではオマエ等の真意を試せない」


 同様に、南東村トンナンに転移者がいると知れば「行く」の一択になって試練にならない。「軽い気持ちで食客になりたい」のか、「後ろ盾を得る為に一定のリスクを覚悟している」のか、それを確かめるために、調合師の正体を教えないまま「南都市サウザンに連れてこい」と依頼をした。そして、武藤さん達も「帰りたい派」に巻き込めるかどうかを見守った。


「試されているのは感じていましたけど、そんなに深い考えがあったんですね」

「オマエ等は、俺の期待に見事に応えた」

「でも、武藤さんをこの町に呼んだのは、

 調合の仕事を安定的にしてもらう為なんですよね?」

「そんなもんは、尤もらしい理由でオマエ等を試す為の口実だ。

 ムツキの調合技術は惜しいが、若者達が『戻るべき世界』を望むのなら、

 些細なことと諦められる」

「・・・だったら」

「オマエ等の未来は、こんな『現実逃避の世界』ではなく『現実世界』にある!

 オマエ等は『本来の世界』に戻ることだけを考えろ!

 その為の支援は、俺が引き受ける!」


 上府さんは、いつ訪れるか解らない僕達を待ち、保護下の人達には強制しないけど起ち上がることを期待していた。見た目と喋り方もヤク○だし、現実世界での職業もヤク○だったかもしれないけど、すごく懐の深い人だ。

 僕達は、とても頼りがいのある支援者を獲得した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ