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33-2・調合の革命児

 武藤さんの前にあるテーブルには、縦横1mで深さ5㎝くらいの容器があり、その中には様々な薬草が並べられている。


「よし!始めるぞ!

 富醒・シンセシス発動!!」 


 叫んだあと、手に持っていたコップに入った透明の液体を一口含んで、しばらく口の中に留めた後、容器の中に吹きかけた。それを数回ほど口返して、容器の中の薬草を一様に湿らせる。


「シンセシス?合成ってこと?」


 口に含んだ透明の液体は日本酒的な物らしい。米を栽培している南地方では、日本酒的な飲み物も生産しているのだ。


「よし、こんなもんだな!」


 武藤さんは、容器の中の湿った薬草のうち、同じ種類を左手で5枚ほど取って右手に乗せた。


「その薬草って?」

「知ってるのか?」


 薬草集めの依頼を手際良くクリアするために、薬草のことは本でシッカリと学んだ。武藤さんが手にしているのは滋養強壮の薬草だ。

 武藤さんが小さなコップを左手で持って右手の下に待機させ、右手に持った薬草を握る。


「むぅぅぅぅっっ!」


 武藤さんが気合いを発したら右手が鈍く輝き、握っている手の隙間から黄色い滴が落ちてコップの中に溜まった。30ミリリットルくらいはあるだろうか?


「よし、これで薬の効果が数倍に跳ね上がったはずだ。源、飲め!」

「・・・へ?」

「薬草の効果を知ってるなら、体調の変化が薬草の影響かどうか解るだろ?」

「うん・・・まぁ・・・多分」

「全部飲んだら大変なことになるらしいから、1/5くらいな」


 さっき、武藤さんが吐き出した液体だよね?握った手から垂れた液体だよね?それを飲めと?


「・・・の、飲まなきゃダメなの?」

「飲まなきゃ私の特殊能力の効果が解んねーだろ!

 それに、飲んだ方が効くのが早いんだ!」

「・・・・・・・・・・・・・・・」


 ものすごく飲みたくない。


「あ、あたしが飲むよ!

 尊人くんと武藤むとちゃんが間接キスになっちゃうじゃん!」

「よく解んねーけど、この薬草を合成した薬は、

 体力の無い男や貧弱な男が飲むと効果があるらしい。

 幼女が飲んでも意味が無ーってことだ」

「幼女じゃねーし!」


 真田さんが助け船を出してくれたけど、即座に却下されてしまった。・・・てゆーか、吐いた物を飲むなんて、間接キスですら無い。こ~ゆ~のは罰ゲームという。


武藤むとちゃんが吐き出した液体じゃなくて、

 普通に液体漬けにした薬草でも良いんじゃないの?」

「いちいち口に入れて吹き出すなんて面倒臭すぎるからな、

 ただの酒漬けにしたり、長野に吐き出させたり、色々試してみた」

「凪ちゃんにもやらせたの?」

「だけど、私が吹きかけたヤツ以外は効果が無かった。

 『吹きかける』から『握る』までを含めて、私の特殊能力らしい。

 解ったらサッサと飲め」

「いや・・・全然わかんない」


 解ったのは、オッサンが口に入れて吹き出した液体よりはマシってことくらいかな?この薬を欲している人達は、製造行程を知っているのだろうか?言うまでもなく知らないだろうな。でも、もし仮に知れ渡ったとしても、一定の客層(若い女の子が好きなオッサン)には需要がある?むしろ今の取引価格よりも高騰する?


「なにボケッとしてんだよ!?」


 色々と余計なことを考えていたのが見透かされたらしく、武藤さんの声で我に返る。


「今後は仲間としてやってくんだろ?

 だったら、今のうちに私の特殊能力を把握しておけよな。

 多分、色んな場面で役に立つぞ」

「・・・うん」


 仲間の能力把握なら、僕よりも、作戦参謀の吉見くんの方が相応しい。助け船を求める気持ちで吉見くんを見たら、「僕は飲まない」と言いたげにして目を逸らした。


「僕が飲まなければ場が納まらない?」

「納まんねー」


 仕方が無いので、唇を湿らせる程度に飲んで、唾で胃の中に流し込む。


「・・・・・・・・効いてる実感が無いんだけど、飲む量が少なすぎた?」

「魔法の薬じゃねーんだから、数秒で効果が発揮されることは無いだろ。

 明日の朝までには効果が出ると思うから、レポートよろしくな」

「・・・うん」


 もう深夜だ。皆で武藤さんの家に泊まるわけにはいかないし、宿は確保してあるし、楠木くんの帰宅を待たずに南都市サウザンに行くわけにはいかない。

 その日は解散となり、長野さんが「早璃とは積もる話があるから残れ」と言って真田さんだけを残し、僕と吉見くんは宿に戻る。


「源君の、武藤さんへの説得・・・ちょっと感動しちゃった」


 帰り道で、吉見くんが褒めてくれた。


「僕の恥を説明しただけ。感動するような話じゃないよ」

「僕は、自分の失敗は隠して理論武装しちゃうクセがあるからさ・・・」

「吉見くんみたく理詰めで説得する方が凄いじゃん」

「でも、心を閉ざした人に対しては、理詰めよりも情・・・

 源君は、武藤さんの心を掴んだ。

 僕の理論武装じゃ、きっと武藤さんは動かせなかった。

 そう感じたから、僕が口を挟んでも邪魔にしかならないって思えて、

 君の言葉を聞いてることしかできなかったんだよ」


 褒められるのは恥ずかしいというか、警戒心が先立ってしまって苦手なんだけど、吉見くんから評価されるのは嬉しい。


 部屋は僕と吉見くんの2人部屋を1つと、真田さん用の部屋を1つ確保してある。だけど、真田さんは武藤さんの家に泊まった。さすがに、この時間帯にキャンセルはできないので、吉見くんは予定の部屋、僕は真田さんが泊まる予定だった部屋、別々の部屋でノンビリと休むことにした。



「う~~~~~~~~~~~~~」


 真田さんが泊まる予定の部屋だから、いつも以上に真田さんを意識してしまうのだろうか?それとも、ちょっと舐めた程度なのに薬が効いてる?

 大声で叫びながら町中を走り回りたい気分だ。30ミリリットル全てを飲んでいたら、どうなっていたのだろうか?


「僕はバカなのかな?それとも、犯罪者予備軍?」


 真田さんの装備品が置いてある。眺めていると、銀の胸当てを撫で回したい衝動に駆られてしまう。荷袋の中に入っているであろう着替えを物色したい欲求に負けそうになる。

 だけど、罪悪感で真田さんの顔を見られなくなりそうなので「そんなことをしてはならない」と堪える。


「明日、武藤さんに『薬の効果』をどう説明しよう?」


 嘘は付きたくないけど、ありのままを報告するのは恥ずかしい。

 男子として大事な部分に血流が廻りっぱなしで、どうすれば良いのか解らない。


シンセシス(ムッキー汁)

使用者:武藤睦姫

 手の平で握れる物を合成~進化させる。合成~進化した物は握り拳から液体となって抽出される。飲み薬、または、塗り薬として使用する。必要な成分だけが抽出されているので効果は高く、市場価格は高額。合成行程の最初に術者がアルコールを口に含んで該当の薬草に拭きかけるため、全ての合成薬が術者の唾液入り。

 

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