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33-1・武藤さんが見たもの

 武藤さんから家に入る許可をもらい、どうにか落ち着いて会話をできるようになった。


「私が最初に見た犠牲者は奏太(加藤)だった」

「加藤くんは秘境者狩りで?」

「いや、チートに倒された」


 武藤さんがこの世界に来たのは、僕よりもだいぶ前(1週間以上前)。多分、藤原くんや安藤さんと同時期。内地の南西に転移して、南西村ミナーシャに辿り着き、数日後には楠木くんと合流して共同生活をスタートさせたらしい。


「楠木が戦闘系の特殊能力を持っていたからさ、

 最初は『私達は最強』みたいな気分になって、

 『秘境狩りなんて怖くねー』『高く買ってくれたら与してやる』なんて考えて、

 かなりイキっていた。」


 南西村ミナーシャの北にある森に住む盗賊の中に、奇っ怪な鉄の騎馬を操る者がいる。


「妙な噂を聞いてな、

 村の奴は『鉄のモンスターなんて聞いたことが無い』と言った。

 だからピンと来た。『鉄の騎馬』は秘境者の産物かもしれないってな」


 見当違いかもしれないけど、確認をする価値は有る。ただの盗賊で絡まれたとしても、楠木くんの特殊能力があれば楽勝できる。そんな気楽な気持ちで、武藤さんと楠木くんは様子を見に行った。


「加藤くんに会えたの?」

「会えなかった。

 正確に言えば、私達が現地に辿り着いた直後に、奏太はチートに焼き殺された」


 武藤さんと楠木くんは、チート達と盗賊の戦いを眺めていた。バイクで歯向かおうとした加藤くんに対して、チートは大きな火の玉を落とした。加藤くんは、武藤さん達の見ている前で消滅をする。


「チートの奴・・・仲間を殺しといて、笑ってやがった」


 驚いた。僕は、チートが仲間を手に掛けたのは目黒くんが最初で、僕を助けるために仕方無く倒したと思っていた。


「チートのことは、イヤな奴とは思ってたけどさ・・・

 あんなに残酷な奴とは思ってなかった」


 武藤さん達は、「チートに見付かったらヤバい」と逃げ帰った。楠木くんの特殊能力ではチートと勝負にならない。自分達は「この世界の強者」ではなく「狩られる側」と思い知った。南西村ミナーシャでは力を顕示していたために、チートに所在がバレることを恐れて直ぐに宿を引き払い、南都市サウザンに移住した。


「だけど、サウザンでは赤騎士が闊歩している。

 いつ、秘境狩りを喰らうか解らない。だから、この村まで逃げた」


 サウザン~南東村トンナンの道中で、長野さんと合流をする。当時の長野さんは、まだ転移をした直後だったので、武藤さん達は「長野はどの色にも染まっていない(どの騎士団にも所属していない)」と判断して、仲間に引き込んだ。 



「まぁ、そんわけで、ほぼ初っ端で加藤がチートに惨殺される場面に遭遇して、

 寄って来るクラスメイトは誰も信じらんなくなったんだ」


 僕等を見た途端に激怒した理由が腑に落ちた。


「だけどさ、私よりもキツい経験をしてきたヘタレとガキが前向きなのを見て、

 なんか恥ずかしくなっちゃったよ」

「まだちゃんと前向きになれたわけじゃないけどさ。

 大切な仲間達を失って、落ち込んで終わりじゃ悔しいからね。

 『僕等にできることをやらなきゃ』って思ってる」

「ヘタレとガキに負けた気がした」

武藤むとちゃん!あたし、ガキじゃないよ!同い年っ!」


 真田さんは、近藤くんを除く藤原グループの全員から、「中坊」や「ローティーン」や「チビ」や「ガキ」と呼ばれている。


「おい、長野!オマエ、こうなることを予想して、コイツ等を連れてきたのか?」


 武藤さんの話が一段落したところで、長野さんに確認をする。


「うん、まぁね。まさか、源が泣き落としで説得するとは思ってなかったけど」

「僕、泣いてないよ」

「カミフさんの指示で来たって言うしさ、

 早璃達の苦労話聞いて、信用できるって思ったからね。

 これって、カミフさんが早璃達を信用したってことだよね?」


 なんで、ここでカミフ様の話題になる?


「えっ?オマエ等、カミフさんに言われてここに来たのか?」

「・・・うん」

「だったら、最初からそう言えよ!」


 そう言われましても、武藤さん達とカミフ様に面識があるとは思いませんでした。


「長野っ!なんで先に言わなかった!?」

「言おうとしたのに追い出された」

「追い出した後でも言えるだろうに!」

「言おうとしたんだけど、急に、源が泣き語りを始めたから言いにくくなって」

「僕、泣いてないってば」


 わけが解らなくなってきたので、脳内を整理する。

 僕達は、カミフ様の信頼を得るために、この村に住む調合師を迎えに来た。夕食のために入ったご飯やさんで、長野さんと再会をして「調合師は気難しい」と言われる。長野さんから調合師の家を案内してもらう予定だったのに、何故か、長野さん達が住む家に来て、「気難しい武藤さん」に追い出された。この時点で、優先事項が「仲間集め」に切り替わり、カミフ様と調合師のことは完璧に忘れていた。それなのに、急にカミフ様の話題になった。


「えっ!?」


 もう一回、脳内を整理する。カミフ様の指示で調合師に会いに来て、長野さんから「気難しい調合師」の家に案内してもらって、「気難しい武藤さん」がいた。


「えぇぇぇっっっ~~~~~~!!

 もしかして、調合師って武藤さんっっ!?」

「はぁ!?」×4


 真田さん、吉見くん、武藤さん、長野さんが、一斉に呆れた表情で僕をガン見する。あれ?予想外れた?僕、見当違いのこと言っちゃった?


「尊人くん・・・今頃それ言う?」

「源君、もしかして、気付いてなかったの?」

「オマエ・・・大丈夫か?どんだけ鈍感なんだよ?」

「そんな有様だから、50日間も早璃と一緒にいるのに何も起こらないんだよ!」


 真田さん、吉見くん、武藤さんから、キツいダメ出しを喰らう。長野さんからのダメ出しは、ちょっと意味が解らない。 


「え~~~~と・・・真田さんと吉見くんはいつから気付いてたの?」

「全員(読者含む)が、武藤むとちゃんと会った瞬間に気付いたと思うよ」

「・・・マジで?ミッションクリア、早すぎね?」

「説得をした張本人がそれ言うの?」 


 カミフ様からの依頼は「トンナンに住む調合師をサウザンに連れ帰る」こと。「依頼を成功させれば、掛かった経費は全部支払う」「何日費やしても良い」と言われている。しかし、到着初日に「武藤さんを仲間に引き込んでトンナンから起つ」を成功させてしまった。



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